自転車に乗る時、ヘルメットをかぶらない理由です。自転車に乗車中のヘルメット着用が義務付けられている国や地域もありますが、特に規制のない国や地域では、かぶらない人がたくさんいます。おそらく、ほとんどの人はヘルメットによる、万一の時に頭部が保護されるメリットは理解しているはずです。
にもかかわらず、かぶらない理由はさまざまでしょう。オートバイなどと違って、スピードが速くないので、それほど必要ないと思っている、法律で義務付けられていないから必要ない、多くの人がかぶっていない、今までも着用していないが問題なかった、という人も多いに違いありません。
イザという時に安心なのはわかっているけれど、面倒くさい、髪型が崩れる、カッコ悪い、似合わない、重くて首が疲れる、服装と合わない、蒸れて暑い、降りた後に持ち歩くのにかさばる、自転車オタクに見える、商品のデザインが悪い、好みにあわない、いろいろあるでしょう。
着用するかどうかは本人の自由ですが、ヘルメットを敬遠する気持ちは、わからないではありません。このブログでも取り上げてきましたが、最近は、従来型と違ったオシャレなヘルメットを作るメーカーも出てきました。この、“
Park & Diamond”のヘルメットも、そんな新製品の一つです。
ご覧の通り、まったく従来のヘルメットらしくありません。見た目は野球帽のようです。これをかぶって自転車に乗っていても、ヘルメットをかぶっているように見えません。ふだんから、野球帽型のキャップをかぶっている人もいますし、これならかぶってもいいという人は多いかも知れません。
これまでにもカジュアルなキャップ型のヘルメットはありましたが、こちらは、なんと言っても薄さが違います。アゴひもが無ければ、普通のキャップに見えるほどの薄さです。これほど薄いと、逆にヘルメットとしての性能は大丈夫なのだろうかと心配になります。
実は、新たに開発された新素材で出来ており、なんと従来の一般的なヘルメットに比べて3倍も弾性エネルギーを吸収し、衝撃を分散するため頭部に力が伝わりにくいのだと言います。実験の画像を見ても、従来のものより弾まずに、落下の衝撃を吸収していることがわかります。
従来のものより大幅に薄いのに、より保護性能に優れているとは驚きます。当然ながらヘルメットとして、アメリカやカナダ、EUの安全認証基準をクリアしています。本体はポリカーボネート系の素材で、EVAフォームクッション、衝撃吸収複合層など、特許出願中の技術を用いて製造されます。
重さも8オンス、わずか227グラムほどしかありません。設計・開発は、Zak Koster さんという人で、元スペースX社のエンジニアです。スペースX社とは、テスラのイーロンマスク氏がCEOを勤める、話題の宇宙ベンチャーです。その前は、アメリカ航空宇宙局、NASAで研究チームを率いていたと言います。
さらに、このヘルメット、折りたたむことが出来ます。折りたためば、ドリンクボトルほどの専用の円筒形のケースにおさまってしまいます。もちろん、バッグなどにしまうにも、かさばらずに便利でしょう。さらに、外側のファブリックは簡単に交換可能で、汚れたら洗濯することも出来ます。
従来型のヘルメットのような通気口はありませんが、ファブリックと中の素材にも細かい穴があいていて、通気性もよくなっています。今のところ、色はブラウンに加え、黒とネイビーブルー、グレーの3色が追加される予定です。サイズは子供用(5歳以上)と、大人用には3サイズがあります。
なるほど、このヘルメットならば、数あるヘルメットをかぶらない理由のいくつかは解決するでしょう。スタイリッシュですし、まさしく野球帽をかぶるくらいの気軽さで、ヘルメットが着用出来ます。見た目的にも野球帽で、普段着でも違和感はありません。キックボードやスケボーなどでも使えそうです。
現在は、
クラウドファンディングサイトで、製品を販売する形で資金調達を実施中です。5万ドルの目標に対して、すでに48万ドル以上の申し込みがあるほどの人気となっています。価格は159ドルですが、サイトを通して買うと、早期割引きで79ドルからとなっています。出荷は2019年2〜3月の予定です。
ちなみに、Jordan Klein さん、David Hall さん、Keith Cutler さんが創業したベンチャー、Park & Diamond 社ですが、この社名には言われがあります。実は、David Hall さんの妹が、自転車での通学中に、クルマによるひき逃げ事故に遭ってしまったのです。
彼女は事故の後、4か月もの間、昏睡状態だったそうです。捕まった犯人が刑務所で過ごした期間よりも長かったことになります。Hall さんは、妹の事故に直面し、アメリカでの自転車の死亡事故の74%が頭部外傷によるもので、そのうち97%はヘルメットを着用していなかったという事実を知ります。
さらに、自転車の事故で外傷性脳傷害に苦しんでいる人が、8万5千人もいることも知ります。この事故がきっかけとなり、3年間の開発を経て、このヘルメットが生まれたのです。一人でも多くの人にヘルメットをかぶってもらうことで、事故による死者や後遺症に苦しむ人を減らしたいと考えています。
とてもありがたいことに、Hall さんの妹さんは、その後完全に回復しました。この妹さんが事故に遭った場所が、アメリカ・バージニア州のブラックスバーグという街の、Park and Diamond streets の交差点だったのです。この場所から会社の名前が付けられました。
今まで、多くヘルメットのメーカーは、昔ながらの形のヘルメットを販売してきました。着用すれば効果を発揮するのは間違いありませんが、多くの人がさまざまな理由でヘルメットを敬遠しています。せっかくの機能も着用してもらわないことには意味がありません。結果として、事故死や後遺障害の多くを防げていません。
“Park & Diamond”社は、一人でも多くの人にかぶってもらえるよう、従来型のヘルメットの嫌われる理由を減らしたいと考えました。風でも飛ばないアゴひも付きの、ちょっと硬い野球帽が、サイクリストの命を救うことになると信じています。これが自転車の安全の革新になってほしいと願っています。
ヘルメット着用を啓発しても、結局は本人の判断によります。その意味で、かぶりたくなるようなヘルメットという考え方には大きな意義があります。さまざまなスタイル、選択肢があることも重要でしょう。従来の形に囚われない、こうした新しいスタイルのヘルメットが増えていくことを期待したものです。
台風24号が去って間がないのに、台風25号がなぞるように接近しています。また列島縦断しないといいですが。
Posted by cycleroad at 13:00│
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