October 21, 2018

自転車で重労働から解放する

世界はデジタル化へ進んでいます。


人工知能“AI”や、あらゆるモノがネットにつながる“IoT”、“ビッグデータ”など、デジタル技術は、これからの社会を支える中核技術になっています。身の回りでも、スマホやパソコンだけでなく、デジタル家電・スマート家電などと呼ばれるものが増えてきました。

AIスピーカーを使って家電を操作したり、スマホで出先から管理出来たりと、便利になっていくのは間違いないでしょう。ただ、人間を含めた自然がゼロとイチで出来ていない以上、全てがデジタルになるわけではありません。家電であっても、アナログな技術が無ければ成り立ちません。

Photo by Itub,under the GNU Free License.制御したり通信したりする部分はデジタル処理でも、電気を使ってモーターを回し、ゴミを吸い取ったり、食品を冷やしたり、お米を炊いたり、洗濯物を洗ったり出来なくては意味がありません。むしろ家電の場合、実際に仕事をするアナログな部分が重要なわけです。

例えば、最近の洗濯機は高性能になっていますが、基本的な部分はドラムに水と洗濯物と洗剤を入れて回すだけと、その原理はシンプルです。日本では、電気洗濯機以前は洗濯板でしたが、ヨーロッパで最初に誕生した洗濯機は、手でドラムを回転させるものだったそうです。

たしかに、最近のものは全自動なだけでなく、効果的な回転をしたり、振動が抑えられたり、そのほかいろいろと工夫されています。しかし、回転させて洗うという基本的な部分は昔から変わっていません。今でも、手回し式の洗濯機が売られているくらいです。

ちなみに、手動式でも十分に使え、キレイになるそうです。少しの量の洗濯物を素早く洗いたい時には便利でしょう。小型なので、一般的な洗濯機より水も少なくて済みます。普通の洗濯機では洗えないおしゃれ着や、音や振動が迷惑になる夜間、洗濯物の少ない一人暮らしの人などに重宝されているようです。

電源が不要なので、屋外やキャンプなどでも使えますし、災害などで停電が長引いているような時にも活躍するでしょう。電動ではないので、家電とは言えないかも知れませんが、普通の洗濯機と原理は一緒です。デジタルな機器ではありませんが、アナログな部分だけでも充分に役に立ちます。

手動洗濯機手動洗濯機電源不要ポータブル洗濯機

さて、洗濯機は、洗濯という重労働から人類を解放したと言っても過言ではありません。全て手洗いで洗っていた時代には、洗濯に多くの時間をとられてもいました。そのありがたみを実感する人は少ないと思いますが、今や洗濯機があるのは当たり前です。家になくても、街のコインランドリーで誰でも使えます。

しかし、世界には未だ洗濯機が使えない人が数多くいます。例えば、アフリカのサブサハラの国々など、川へ行って洗濯するしかない人も、何億という単位でいます。もちろん、最近はアフリカの経済成長が目覚ましく、一部の人は携帯電話を使って通信や通話だけでなく、預金や決済も行うようになってきています。

いわゆる、リープフロッグ現象と言われる部分です。途上国では、固定電話の普及を待たずに携帯電話が普及しており、銀行口座を持たない人でも預金や決済などの機能が使えるようになっています。カエル跳びのように、先進国が辿ってきた技術の進展を飛び越えて実現しているのです。

アフリカの郊外の村でも、携帯電話の充電をする店があったり、スマートフォンではない普通の携帯電話でも、そのようなサービスが受けられます。しかし、そうは言っても、デジタル経済の恩恵を受けられる人ばかりではありません。アフリカでも、貧富の格差は拡大しています。

一部の技術では、リープフロッグ現象が見られるものの、アフリカの一部の都市部を除けば、まだまだインフラの整備が遅れています。電気、ガス、水道、そして道路などが整備されていない地域は多く、産業や雇用もなく、原始的な農業などで自給自足せざるを得ない人たちが大勢います。

貧しくて洗濯機が買えないどころか、村には電気も通っておらず、水道もない、そんな場所に住む人たちにとって、洗濯はいまだに重労働であり、多くの時間をとられる作業です。水を汲むのも洗濯をするにも、川まで行くだけで多くの時間をとられてしまう人も少なくありません。

そんな状況が、なんとかならないものかと考えた人がいます。アフリカは、ブルンジの孤児院でボランティアをしていた当時大学生の、Richard Hewitt さんです。孤児の服を手洗いしていて思いました。でも電気が通っていないので、仮に洗濯機を持ってきたとしても使えません。

そこで考えたのが、自転車を使う方法です。原始的ですが、動力が人力というだけで、電気洗濯機と原理は一緒です。実際に、よく汚れが落ちます。誕生した頃の洗濯機の手回しよりも、ペダル式で足を使う分、パワーがあって効率よく、疲れにくいのも利点でしょう。

SpinCycleSpinCycle

SpinCycleSpinCycle

SpinCycleSpinCycle

名付けて、“SpinCycle”です。最初の構想では三輪車の後輪部分に直接ドラムを取り付けるスタイルでした。その後、アドバイスを受けたり、ベンチャーへのインキュベートに力を入れている企業などのサポートを受けたりして現在のような形になりました。一般的な自転車に取り付けるだけなので、製造コストも安くなります。

SpinCycleSpinCycle

SpinCycleSpinCycle

ドラムはスタンドに取り付けられていますが、取り外して水を汲むことも出来ます。洗う時は、スタンドを立てて駐輪した状態でペダルをこぎ、後輪でドラムを回します。走行する時は、スタンドを上げて、ドラムを回転させずに運べるようになっています。

この形には利点があります。考えられる使い方として、まず家に“SpinCycle”を設置しておき、洗濯の時だけ使う方法があります。町でも電気が通っていない地区、安定供給されない地区もあるでしょう。人力の洗濯機として使えば、電気代も不要です。

SpinCycleSpinCycle

SpinCycleSpinCycle

次に、川で洗濯する人たちが、川辺にとめて使う方法です。川が近ければ、常設しておいて村の人々で共有して使うことも考えられるでしょう。一方、川が遠い場合は、自転車としても使えます。洗濯物を積んで、川までの移動手段にもなります。歩いて何時間もかかるような場所なら、この部分も大きな恩恵でしょう。

もう一つは、これを商売として使うスタイルです。洗濯機のない家庭を回って、洗濯サービスを提供するわけです。もちろん、わずかな料金しかとれないでしょうが、自分で“SpinCycle”を手に入れられない人のニーズに応えられます。洗濯の手段と同時に小さな仕事、雇用を生むことになります。







自転車は、途上国支援の場では、とても効果的なアイテムになります。電気が通っていない地域でも、人間の身体で一番大きくて強い足の筋肉を効果的に使うことで、重労働から解放します。道路が舗装されていないような地域でも、現地の人にとって、貴重な移動手段となります。

自転車はアナログな機械ではありますが、電気や水道、道路や公共交通といったインフラが整備されていない場所では、大きな力となります。アフリカでも携帯電話などを使ったデジタルの普及が、経済発展をもたらすのも事実でしょうが、アナログな自転車が出来ることにも、もっと注目していいと思います。




トランプ大統領が核軍縮条約離脱を表明しました。中国だけでなく、ロシアとの対立も深める気のようですね。

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