雨が降れば濡れてしまいますし、大きな荷物も運べません。クルマが行きかう道路上では、衝突に対してどうしても脆弱です。そんな弱点をカバーするため、これまでにもいろいろなアイディアが出されてきましたが、また一つ、ユニークなコンセプトカーを提案する会社があります。
ドイツはクレーフェルトにあるクルマの部品メーカー、IN-IN GmbH 社です。発表したのは、自律して動く自転車用タクシー、その名も“
Bicycle Autonomous Taxi”です。“Autonomous”とあるので、最初、自動運転の自転車用タクシーなのかと思いましたが、そうではありません。
必要な時、スマホのアプリで、この“BAT”を呼ぶことが出来ます。自転車に乗った係員によって配車されたタクシーに、自転車ごと乗り込むスタイルになっています。荷物なども一緒に載せられます。そしてタクシーに自転車をセットしたら、乗ったままペダルをこぎます。つまり、自分でペダルをこいで動かすタクシーなのです。
ペダリングの速度に応じて、車両が動きます。速度の比率はスマホから調整可能です。自転車の後輪のブレーキをかければ“BAT”にもブレーキがかかります。屋根やワイパー、ウィンカーなどは、自転車にまたがったまま、スマホを通して操作することが出来ます。もちろんハンドルは自転車のハンドルバーと連動です。
これを呼ぶメリットとしては、雨に濡れなくて済むことや、出先で自転車で運びきれないような荷物が増えた時に便利なことでしょうか。自転車単体で走行するより衝突安全性に優れるのは明らかです。複数の“BAT”を呼んで、隊列走行させることも可能なので、複数の人間や荷物などを同時に運ぶことも出来ます。
ペダリングに応じて動くと言っても、ペダルを回す脚力で直接この“BAT”を動かすわけではありません。後輪はローラーに接触していますが、回転数が伝わり、その回転に比例してスピードを変えるだけです。好きな強度でペダリングしながら、任意のスピードで移動できるわけです。
この“Bicycle Autonomous Taxi”自体にモーターやバッテリーが備わっており、電動で動きます。にもかかわらず、わざわざペダリングさせるというのも無駄というか、屋上屋を架すようなもので、無意味な気もします。荷物は運べますが、自転車でそのまま移動するよりエネルギー効率はかなり劣ります。
自転車を積める電動カートで、用は足りるわけですが、それならば特に珍しくもありません。これは、雨でも自転車ごと載せて移動でき、その際も運動になるよう、健康増進に役立つ自転車のメリットをそのままにしたい、という考えから来ているようです。
スポーツジムなどで運動不足解消のためエアロバイクをこぐのと同じですが、漕ぎ方に応じて、エアロバイクごと動くようなものでしょうか。無駄な気もしますが、これによって荷物や雨、衝突危険性などの問題をクリア出来るということのようです。必要な時だけ使える屋根付き電動アシストと考える事も出来るでしょう。
配車の際は、係員が自らの自転車をこいで持ってきてくれますが、係員はそこで帰ってしまいます。目的地に着いたら、近くにいた自転車に乗った係員が回収しに来て、充電ステーションまで移送するスタイルを想定しているようです。たしかに、自転車で自主的に移動させるタクシー、“Bicycle Autonomous Taxi”です。
いちいち係員が配車したり、回収するのは人件費がかかりそうです。自転車をそのままタクシーに積めば済む話で、必要に応じて、別途エアロバイクをこげばいい気もします(笑)。ただ、今はそうであっても、将来、自動運転のクルマが当たり前になれば、配車も回収も無人で自律走行するようになるでしょう。
すでに自動運転のクルマの実現は、時間の問題とされています。もし事故が起きた場合の責任など、法的な問題の解決や社会的な対応も必要になってくると思いますが、技術面の開発は進んでおり、2020年代にも、完全な自動運転のクルマが走るようになると目されています。
人間が自ら運転する必要がなくなれば、ずいぶんとラクになるのは間違いありません。眠ったり、映画を見ていても目的地に着くようになれば、ラクなだけでなく時間の有効利用にもなるでしょう。渋滞で、ボーっと何も出来ずにいる時間は、莫大な経済損失になっていると言いますので、大きな生産性の向上にもなるはずです。
クルマは単なる移動手段ではなくなるでしょう。例えば、クルマそのものが店舗となって、呼べば来てくれる無人の移動販売カーも考えられます。通販もありますが、試着したり、試し履きしたい商品なら、店舗が来てくれれば、その場で試して買えます。もちろん無人で決済です。
クルマそのものがオフィスにもなるでしょう。通勤時間も仕事が出来ます。クルマがホテルになれば、寝ている間に目的地に移動出来て効率的です。クルマがレストランやバーになれば、帰りの電車の時間を気にする必要もありません。飲んでいるうちに自宅まで運んでくれます。運転代行も不要です。
これまでには考えられなかったようなことが可能になるでしょう。理屈としては事故も起きなくなり、交通事故による死傷者はゼロになります。交通違反もなくなるどころか、免許制度も不要、子どもだけでもクルマ移動出来ます。過疎地の移動、買い物難民などの社会問題も解決です。
ただ、全てがバラ色とは限りません。渋滞も無くなると思っている人が多いようですが、そうはなりません。もちろん、AIが判断して、渋滞がより少ない最適のルートは選んでくれるでしょう。しかし、交通が集中すれば、自動運転だろうが渋滞は避けられません。
交通が集中する都市の中心部が100車線にでもなれば別ですが、そういうわけにもいきません。運転免許を持っていない人、お年寄りや子供でもクルマで移動するようになれば、むしろクルマの台数が増え、渋滞は悪化する可能性は高いでしょう。渋滞は依然として発生し続けるはずです。
黙っていてもドアツードアで目的地まで行けるのはラクですが、ますます運動不足も助長するでしょう。そう考えると、依然として人々は自転車に乗るに違いありません。渋滞するクルマより速いですし、移動しながら運動にもなって、健康増進にもなります。そのあたりは変わらないのではないでしょうか。
この“Bicycle Autonomous Taxi”、将来、自動運転カーの時代に、案外実現するかも知れません。好きな時に自転車に乗り、雨が降ってきたり、荷物が増えたら呼んで、自転車ごと運んでくれ、しかも運動も出来る自動運転カーです。自動運転で実現する新しいタイプのモビリティの一つとなる可能性はあるかも知れません。
居住者を危険に晒す悪質なレオパレス21の建築基準法違反、内容も件数的にも、組織的としか思えませんね。
Posted by cycleroad at 13:00│
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