April 25, 2019

自転車が変革する世界の都市

世界の都市は、さまざまな問題を抱えています。


それぞれに特有の課題もありますが、人口集中による過密化やスラム化、大気汚染などの公害やヒートアイランド、ゴミ処理や衛生環境、慢性的な渋滞に交通事故、水資源や設備の問題、インフラの不足や住宅価格、高齢化など人口構成、都市型犯罪や薬物中毒、経済格差や移民、住民同士の対立など、共通するものも多くあります。

地球規模で考えた場合にも、エネルギーや温暖化ガスなどの環境問題の多くは、人口の集中する都市に大きな原因があります。いわゆる持続可能な社会の構築、経済や開発目標を考えた時に、都市の変革、都市問題の解決は避けて通れない課題です。

問題の全てに有効な解決策はありません。しかし、その中のいくつか、特に環境や交通問題、人々の健康や福祉などの問題解決について、自転車の活用が実は有効と考える人が世界中で増えています。そのような考え方の元に活動を展開する組織、団体も増加しています。



前回取り上げた、オランダ・アムステルダムを拠点として活動する“BYCS”もその一つです。その取り組みの中で注目される「自転車市長」のプログラムについて取り上げましたが、この“BYCS”、それ以外にもさまざまな興味深い活動を行っています。

“BICYCLE ARCHITECTURE BIENNALE”もその一つです。都市で自転車の活用を進める上で、自転車走行空間の整備は欠かせません。この「自転車建築ビエンナーレ」は、世界の都市で注目を集める、自転車の移動を容易にする建築デザインのショーケースとなっています。



以前取り上げたことがありますが、中国の厦門では自転車専用の高架道路がつくられていますし、自転車専用の橋とか、立体交差、大規模な地下駐輪施設など、さまざまな建築物が生まれています。それらは、都市において自転車を優先するという姿勢、考え方から生まれて来るものです。

世界の実例や、世界中から集まった国際的デザイナーの作品を展示しています。自転車での移動を都市デザインの中心に置いている都市が、社会面、環境面だけでなく、実は経済的にも大きな収益を生み出すことを、広く都市開発の関係者に啓発するものでもあります。

BYCS BYCS

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以前、高規格な自転車レーンを整備すると、多くの人の心配に反して、地域の商業施設の売り上げが大きく伸びるというデータがあることを取り上げました。自転車レーンだけでなく、自転車のための建築物も、都市に大きな経済的な恩恵をもたらすことが注目されおり、決して単なるデザインコンテストではないのです。

“CYCLELABS”は、その名の通り自転車による変革のための共同研究室です。世界中の研究者と連携し、あらゆる自転車活用を推進するプログラムや統合するシステム、人間中心のデザイン、人々の行動観察、データの収集、ストーリーテリングや共創を行っています。

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“BIKE & CITY”はサイクリング文化と都市の変遷との関係を探る文化イベントです。アムステルダムで2ヶ月に1度開催され、革新的なテクノロジーの紹介から、自転車コミュニティーにおける人生の情熱の共有に至るまで、トピックスは多岐に渡ります。

“BIKESTOP”は、郊外の自転車道に、サイクリストのためのサービスステーションが必要だという発想から進められているプロジェクトです。都市ならば、必要なサービスを受けるための施設はたくさんありますが、郊外へ行く自転車道、都市と都市をつなぐ自転車道には、施設が十分ではありません。

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駐輪と休憩に加え、トイレや飲料などの小売り、場所によっては食事や修理などのサービスが受けられるような施設が、郊外の自転車道沿いにあれば便利です。場所によっては、サービス内容を充実させるのは難しいとしても、ちょっとした休憩施設だけでも、あればサイクリストの憩いの場所になるでしょう。

“WAVE”というプログラムもあります。これは青少年に向けて自転車の活用を啓発して行こうというものです。若者が活動的で健康的に過ごす上で、サイクリングは最適です。通学も含め、自転車に乗せるために、魅力的なサイクリング体験や若者への刺激を与えようという試みです。



“EVERY-BIKE”のコンセプトは、自転車へのアクセスが基本的な人権であるべきというものです。どんな大都市であっても、自転車に乗るための全ての障壁を取り除きたいと考えています。シェア自転車や販売、レンタル、相談、それらを結びつけるプラットフォームでもあります。

“GLOBAL BIKE PATH”は遠大なビジョンです。グローバルにつながるバイクパスのネットワークを構築したいというものです。世界中とつながる自転車道です。まだ始まったばかりですが、クラウドファンディングなどを利用して、既存のインフラを接続し、各国の自転車道を国境を越えてつなげていくことを目指しています。

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“WE BIKE THE CITY”は、アムステルダムでの発見をもたらすセルフガイド付きサイクリング・ルートであり、ツアーです。南部から北部までつなぎ、都市における未来の展望と自転車の果たす役割が示されます。知らなかった文化やビジネス、コミュニティやイノベーションを発見するルートになっています。

“FLY + BIKE”は、都市と空港をつなごうという構想です。アムステルダムのスキポール空港へのアクセス道路は、空港利用者や勤務者のクルマでいつも混雑しています。これは、空港へのアクセスを困難にし、時間通りに利用出来ない不便をもたらしています。

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それだけではなく、大気汚染を増やし、環境への負荷を増大させています。そこで、空港と都市を自転車専用の高速道路で結ぼうというのです。手荷物は別途配送すれば、自転車&飛行機は現実的選択肢になるはずです。世界に範を示すと共に、観光客には、「オランダ体験」となるに違いありません。

“IMPACT INDEX”は、自転車の活用を推進することで都市に起こる変革を表す、未来志向の指標を開発しようというものです。従来の統計的なデータとは異なります。これはまだ詳細が明らかにされていませんが、都市の変革を加速させるのに役立つものとなります。

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“BIKE TO WORK”は自転車通勤の拡大への取り組みです。自転車通勤は交通費を節約し、身体を鍛え、精神面も含めて健康を改善し、環境負荷を減らすものです。通勤者だけでなく、雇用主には、社員の病欠を減らし、生産性を向上させ、社会的な責任を果たす雇用主であることを示すものでもあります。

自転車通勤を拡大させるため、いろいろなアプローチがあります。例えばスマホアプリを使って、自転車通勤をゲームにし、挑戦や競争、賞の授与などを通して楽しく始めさせる方法もあります。さまざまなプログラムを提供することで、単なる啓発ではなく、実際に自転車通勤者を増やしているのです。

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“BYCS”は、自転車市長プログラムにとどまらず、実にいろいろな取り組みを進めていることに驚きます。まだアムステルダムローカルや、オランダ国内だけのものもありますが、一つひとつは世界の都市のお手本となるものであり、あるいは新しい挑戦や実験という意味で意欲的な取り組みと言えるでしょう。

日本では、自転車は単なる最寄り駅までのアシとしてしか見られていません。しかし、その活用は都市の変革をもたらすほど、大きなインパクトを与えます。このことは、徐々に世界的なコンセンサスになりつつありますが、日本を含め、さらに広く認識してもらうためにも、“BYCS”の活動に期待が広がります。




UAEの女性が交通事故で27年に及ぶ昏睡状態から突然目覚め、会話するまでに回復、奇跡はあるんですね。

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