天皇陛下の退位と新しい陛下の即位の儀式が行われ、歴史的な区切りを迎えています。メディアも改元一色、平成を振り返り、新しい時代を展望する内容であふれています。さて、そんな中ですが、平成の最後の時期に報じられた自転車関連の記事の中から、いくつかピックアップしてみたいと思います。
NPO自転車活用推進研究会・小林成基氏 自転車が道路で“中途半端”になった理由<前編>
「自転車活用推進法」が切り拓くもの<後編>
軽車両として車道を走ることが原則となっている自転車ですが、そのルールを実行するための走行環境は決して十分とはいえません。
世界にも例を見ない、この曖昧な状態が作り上げられた背景にはどのような歴史があったのか、またいかにしてテコ入れが始まったのかを前後編で解説します。(後略 2019/04/28 サンスポ)
自転車活用推進研究会の小林成基氏が、日本の自転車環境の変遷について解説しています。長い記事なので、リンク先を見ていただくとして、なぜ、世界的にも稀なクルマ優先の道路環境になってしまったか、それがようやく改められつつある経緯などがまとめられています。
平成という時代で区切って考えてみると、自転車が歩道走行から車道走行へ変わり始めた時期と言えるかも知れません。このブログは平成17年に始めたのですが、その頃は、例えば自転車レーンについて一般的なメディアで取り上げられることはなく、話題にもなりませんでした。

それを思うと隔世の感がありますが、自転車に対する考え方も変わりつつあり、自転車走行環境も少しずつ改善され始めた時代なのかも知れません。
以前は、歩道の上に線を引いて自転車通行帯にする整備がほとんどでしたが、自転車は車道走行が当たり前であり、それでなくては、せっかくの能力を発揮出来ないことも、ようやく理解され始めたようです。
ただ、欧米諸国とは違い、まだまだ歩道走行する人が多く、訪日外国人が、その野蛮さに驚く状況は続いています。都市交通としての潜在能力を発揮させるためにも、歩道を傍若無人に走る自転車が歩行者と事故を起こしている状況は、改善される必要があります。
まだまだ道路はクルマ優先という考え方が当然のようになっており、車道の隅にクルマの邪魔にならない程度に自転車レーンの色を塗るくらいがせいぜいです。しかし世界では、クルマの邪魔ではなく、いかに自転車を活用するかという時代になっています。そのあたりは、令和の課題ということになりそうです。
パナ、電動自転車を全IoT化へ
パナソニックが、製造販売する電動アシスト付き自転車の全車両に、インターネットに接続して走行データ分析やサービス提供などに活用できるIoT機能を搭載する方向で開発を進めることが24日、分かった。
5月にはパナソニックが手がけるスマートシティー(環境配慮型都市)で、IoT電動自転車によるシェアサイクルの実証実験を始め、開発を加速させる。
自転車事業子会社「パナソニックサイクルテック」(大阪府柏原市)の野中達行社長が産経新聞のインタビューで明らかにした。野中氏は「電動自転車に必ずIoTユニットが付くことを目指す。そこから何を変えられるか、サービスを考えている」と述べた。
リゾート地でも実験
5月に開始する実証実験で用いるIoT自転車は、スマートフォンで電子錠の施錠・解錠や利用料金の決済ができるほか、衛星利用測位システム(GPS)で走行経路や駐輪データを収集できる。各種データはインターネットを通じてクラウドサーバーで保存・分析する仕組みだ。
今年度中には観光地のレンタサイクルにスポーツタイプのIoT電動自転車を投入し、実験を拡大する。さらに「商店街やチェーン店と提携し、IoT自転車で訪ねて買い物をするとポイントがたまるような新たなサービスを検討していく」(野中氏)という。
グループのノウハウ活用
電動アシスト付き自転車は大型のバッテリーを搭載し、IoT機器を搭載しやすい。野中氏は、パナソニックグループの情報通信機器のノウハウを生かして独創的な機能やサービスを開発すれば、市場をリードできるとみている。将来はIoTユニットを外販することも視野に入れている。
国内の電動アシスト付き自転車市場は年率2桁の成長が続いている。パナソニックは平成30年度に電動自転車を約30万台生産。国内市場に占めるシェアは43%で首位に立つ。
また、欧州にはモーターや電池などの電動駆動ユニットを輸出してきた。今後は米国向けに駆動ユニット輸出を開始予定で、欧州でも販売拡大を図っていく。(後略 2019.4.24 産経新聞)
電動アシスト自転車は、平成5年にヤマハ発動機が発売した、ヤマハ・PAS(Power Assist System、パス)が世界初とされています。電動アシストは平成生まれということになります。今では原付バイクをしのぐ台数が売れるようになり、世界的にも普及が進んでいます。
近年の半導体技術や充電池、LEDなどの進歩で、自転車アクセサリーも電子的なものが増えていますし、インターネット技術の進展で、自転車がIoTになっていくのも時代の必然と言えるでしょう。バッテリーが搭載されているぶん、電子デバイスと親和性が高いこともあると思います。
科学技術の面について、昭和とか平成で分ける意味は薄いと思いますが、令和の時代も確実に進歩していくのは間違いないでしょう。素材や加工技術もそうですが、IoTやAIなどの技術が、自転車の分野にも波及し、自転車生活を変えていくことになりそうです。
川崎市自転車計画 10年間で213Km整備へ
川崎市は3月、自転車道などを整備することで市民が安全・安心で快適な道路利用ができるよう、「川崎市自転車ネットワーク計画」を策定した。今後10年間で、自転車利用者が多い駅を中心に213Kmまで通行環境整備を行う予定だ。
同計画では自転車が安全に走行できるように一部だけでなく広い範囲での通行環境整備を行う。それによると自転車利用者が多い川崎駅など市内15駅と川崎区殿町地区周辺を対象区域に選定。
各駅を中心に半径1Kmの範囲を地域自転車ネットワークに設定している。さらに市内全域に展開するため地域自転車ネットワーク間を結ぶ広域自転車ネットワークと、多摩川サイクリングコースを基軸にした観光自転車ネットワークも構築する。
整備形態は国のガイドラインに沿い、「自転車道」「自転車専用通行帯」「車道混在(矢羽根+ピクトグラム)」と、市のオリジナルの「安全啓発」の4種類。自転車道や専用通行帯を整備できる十分な道幅の車道が少ないため、車道の端に青いペンキで矢羽根を描き、自転車の通行位置を示す車道混在がメインとなる。
市建設緑政局自転車利活用推進室によると、2015年度に「川崎市自転車通行環境整備実施計画」に基づき整備。その際も車道混在での整備が多かったが、16年から17年の年間平均事故件数は整備前5年間(08年から12年)より、約55%減という。このことからも一定の効果が期待できるという。(2019年4月26日 タウンニュース)
最近の自転車関連のニュースの中で再三取り上げていますが、近年、自転車を使って観光客の誘致など、地域振興をはかろうと考える自治体が増えています。都市部においても、交通事故や市民の利便性向上などの観点から、自転車インフラの整備を考えるところが増えてきました。
たまたま、川崎の記事があったので取り上げましたが、単に自転車レーンなどを整備するだけでなく、それらをネットワークとして構築することで、都市交通としてのポテンシャルが発揮されることを理解する自治体も、少しずつですが増えてきた気がします。インバウンドが増える中、観光振興などにも寄与するでしょう。
ただ、この川崎の記事で213Kmの整備となっていますが、これは10年間での数字です。もちろん、自治体にも財政がありますし、自転車だけに予算をつけるわけにいかないのは理解します。年度ごとに予算を確保し、少しずつ整備していこうというのでしょう。
しかし、年に20キロずつでは少なすぎ、ペースが遅すぎだと感じます。コツコツと整備するのでは、市民やドライバーの認知も上がらないでしょうし、ネットワークとしても機能しません。可能であれば、なるべく一括して整備したほうが効果が高く、価値も高いものとなると思います。
冒頭の記事にあったように、歴史的な経緯はあるにせよ、車道走行は本来あるべき姿でもあります。危険の除去は優先すべき課題です。もちろん制約はあるとしても、自転車道以外は、ある程度まとめて整備することも可能でしょうし、先行させる手もあるような気がします。
どうしても、コツコツ整備していくというスタイルになりがちです。しかし、自転車走行空間の確保は、よりグレードの高い道路への改良ではなく、本来あるべきものの欠如を早急に補うべきものです。市民の安全の確保というプライオリティから言っても、整備の仕方を考える余地があると思います。
高齢者「電動アシスト自転車」交通ルールまるで無視!赤信号でも交差点進入

電動アシスト自転車の事故が多発している。自動車免許返納後の高齢者にも人気で、「楽です」(70代男性)、「坂でも上れます」(80代女性)と便利に使われているのだが、「とくダネ!」が東京・大田区の交差点でウオッチングすると、交通リールを守ろうとしない運転者がぞろぞろいた。(中略)
自動車運転免許証返納後の便利な足
去年(2017年)6月、愛知県蟹江町で電動自転車同士が出合い頭に衝突し、88歳男性が死亡した。自転車活用推進研究会の小林成基理事長は、「普通の自転車よりスピードが速いのに、止まって確認すべきところで止まらない」と警告する。
いったん止まると、こぎだすのに力がいるため、高齢者は一時停止を嫌う傾向があるという。(後略 2019/4/24 Jキャストニュース)
テレビ番組をまとめた記事ですが、高齢者の自転車利用者が、交通ルールを守らないことを指摘しています。高齢化の進行による、さまざまな社会問題は、平成の間にも次第に顕在化してきました。今後、交通事故に関連する部分でも、問題となっていくのは間違いないでしょう。
先月は、母子が犠牲になった高齢者によるクルマの事故で、その運転技術の問題や免許返納などがクローズアップされました。免許返納した場合の以降のアシとして注目される電動アシスト自転車ですが、その走行でも問題があることが指摘されています。
クルマの運転ほど、周囲にかける迷惑の度合いは大きくないとは言え、本人の死傷の問題だと片付けるわけにはいきません。自転車のルール無視、無謀な走行によってクルマを巻き込み、結果として歩行者が死傷するような事故も起きています。全く過失がなくても、ドライバーに責任が生じる点も懸念されます。
一時不停止などの交通ルールの無視は、高齢者に限ったことではなく、交通マナーの悪さも含めて全体の問題です。ただ、高齢者独特の懸念もあります。いかに本人と周囲の安全のために、ルールを遵守させるかは、今後の課題となっていきそうです。
春秋(日本経済新聞 朝刊コラム)
日本の交通事故の特徴は、「車が人や自転車をはねる」である。当たり前のように思えるが、欧米では死者の多くが車同士の事故によるもので、歩行中や自転車走行中の死者は全体の2〜3割ほど。それが日本では約5割にのぼる。弱者に厳しい交通環境といっていい。
▼歩行者が巻き込まれる事故のニュースが連日報じられている。運転技能の衰えや漫然運転など指摘される原因は様々だが、運転する責任を軽んじ、周囲への配慮を大きく欠いている点は共通する。日本自動車連盟(JAF)の調査では、信号がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしても、停車する車は1割に満たないという。
▼海外の人が首をかしげる日本の風景に「歩道橋」がある。多くは昭和期に自動車の急増を受け、歩行者を橋の上に避難させる発想で設けられた。車道を走るはずの自転車も歩道へ誘導した。事故を防ぐ緊急対策の効果はあったが、他者に不便を強いようとも道路は車が優先、との意識を定着させてしまったのかもしれない。
▼事故発生後24時間以内の死者数は、昨年戦後最少を更新した。それでも3532人である。平成の30年間では22万人を上回る。地方の中核市が丸々1つ消えてなくなった計算だ。お年寄りが渡っていると、途中で信号が赤になってしまう。そんな横断歩道にも、高度成長期の残滓(ざんし)を見る。令和の時代には持ち越したくない。(2019/4/25 日本経済新聞)

記事ではなく日経新聞のコラムですが、日本の交通事故の特徴について言及しています。私も常々感じていますが、『信号がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしても、停車する車は1割に満たない』という点は、実感としてその通りだろうと思います。
この、「クルマが人や自転車をはねる」という日本の交通事故の特徴、やはり背景にあるのは、クルマ優先という考え方だと思います。高度経済成長期に、効率優先できてしまった弊害と言えるでしょう。結果として、人間の生命が軽視されるような状況にあることが、あまり意識されていないと思います。
国によっても違いますが、欧米へ行って歩行者として歩いていると、クルマのドライバーが親切に止まってくれる印象があったりします。それほど、日本人はクルマ優先が当たり前になっているということでもあると思います。無意識にそれが固定観念となっています。
経済効率も大切です。しかし、都市部では渋滞が慢性化し、道路交通に関しては、もはや効率的とは言えない部分もあります。世界では、渋滞する都市部へのクルマの流入を抑制するところが増えています。クルマの車線を減らして、歩行者や自転車を優先する方向にシフトする傾向もあります。
高度経済成長は昭和の時代の話ですが、平成になっても、その時代の弊害を引きずってきたと言えるでしょう。出来れば令和の時代は、歩行者や自転車の安全ということを優先し、これまでの「クルマ優先」の道路や都市を考え直していくような方向に進んで欲しいと思います。
ヘルメット未着用時の致死率2.5倍に 自転車事故
自転車乗車中の事故で、ヘルメットをしていない場合の致死率は着用時の約2・5倍――。5月11日から始まる春の全国交通安全運動を前に警察庁は25日、こんな調査結果を発表した。2014〜18年の5年間で、自転車乗車中に死亡したり重傷を負ったりした事故は4万6374件。死亡者の6割は頭の傷が致命傷だったが、大半はヘルメットを着用していなかった。
また、学校に通う児童・生徒のうち、高校生のヘルメット着用率は特に低く、3〜4%台。高校生の死亡・重傷交通事故は4157件で、小学生と中学生のそれぞれ約2倍だった。
高校生の月別では5月が最多で、4月の352件から5月は480件と128件増えている。通行目的別にみると、登下校時が最多の2669件で約6割を占め、時間帯は午前7〜8時台に集中していた。
道路交通法は自転車に乗る13歳未満の子どもの保護者に対し、ヘルメットを子どもに着用させる努力義務を定めているが、条例で18歳未満や高齢者のヘルメット着用の努力義務を定めた自治体もあるという。警察庁は「ヘルメットで命を守ったり、けがを防いだりできる」と訴えている。(2019年4月25日 朝日新聞)
ヘルメットを着用したほうが、致命傷を負うような事故に巻き込まれても、致死率が低くなるのは当然です。そのための防護具なのですから、考えるまでもなく、わかることです。ヘルメットを着用するかどうかは、法律で定められていない以上、本人の判断ですが、その有効性を否定するつもりは全くありません。
しかし、「命を守るためにヘルメットを」というのが当たり前で、何の疑問も感じないところが、先ほどのコラムと一緒で、「クルマ優先」の考え方が固定観念になっている部分ではないでしょうか。ヘルメットの効果は当たり前ですが、だからと着用を義務付けるような議論は当たり前でしょうか。
以前にも書きましたが、例えば自転車先進国オランダの人々は、そのように考えません。事故で人命を奪うのはクルマのほうであり、クルマのほうで措置すべきです。致命傷を防ぐ効果が高いからといって、自転車に乗る人がヘルメットをかぶらされるのは本末転倒であり、ナンセンスだと考えるのです。
例えば、クルマの排気ガスで大気が汚染され、喘息で人命が奪われているならば、クルマの排気ガスを規制すべきです。排ガスは放置しておいて、人間にマスクの着用を強要するというのは本末転倒というのと同じです。もちろん、緊急避難として着用するのは本人の判断ですが、いかに着用させるかという議論は違うでしょう。

交通事故で人間が深刻な被害を受けかねない状況があるならば、加害側のクルマが、いかに人を死傷させないようにするかが重要であり、当たり前と考えるわけです。実際に、オランダでは、ヘルメットをかぶっている人は、ほとんどいません。その着用率は、0.5%以下です。
言われてみれば、その通りだと感じる人もあるでしょう。クルマが措置出来ないならば、道路を工夫するなどして、その危険を除去すべきです。それを、被害者になる自転車利用者が自らヘルメットをかぶって防護しろというのは理不尽であり、本末転倒と言わなければなりません。
もちろん、オランダでもまだ完璧に安全が確保されているわけではありません。事故も起きます。しかし、少なくとも、自転車利用者にヘルメットを着用させるのではなく、インフラなどでサイクリストを守る、人間を優先するという考え方で整備が進められています。
日本では、自転車の歩道走行という問題があって、必ずしも自転車が都市交通として活用されているとは言えません。しかし、近所へのアシが多いとは言え、その所有台数は世界有数であり、台数で言えば、自転車大国です。すでに多くの人が自転車を使っている国です。
国民がこれだけ自転車に乗っているのに、その走行空間が乏しく、危険にさらされているのに、整備が相変わらずクルマ優先なのは疑問と言わざるを得ません。人命優先の観点からも、自転車や歩行者の安全を第一に考えた道路インフラが求められます。令和の時代に考え方が変わっていくことを期待したいものです。
平成から令和へ、なんだか大きな年末年始のような感じもあります。新しい時代がいい時代になるといいですね。

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Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(2)
令和だからはともかく。
自転車だけでなく歩行者も交通違反だらけですね。
横断歩道で歩行者が一旦停止してるのが不思議でなりません。
ボクは絶対に一旦停止しません。
車に良く急ブレーキかけられますが
自動車の免許更新に実技試験をするべきだと思います。
たぶん更新出来ずにドライバーが半減して
交通死亡事故は9割へると思います。
国内自動車販売は減ってお気の毒ですが…
FOXさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに違反が恒常化していますね。ただ、交通違反を全て摘発は物理的に出来ませんから、いかにマナーを向上させるかが課題ということなのでしょう。
高齢者の事故は、注目されることが増え、問題と捉える傾向になっていますので、免許更新の実技試験は導入されるかも知れません。
周囲が説得しても、免許返納に応じない人が多いようですし、導入に賛成する人は多そうです。
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