May 19, 2019

自転車に乗るのは時間の無駄

自転車に乗らない理由は人それぞれです。


いろいろあると思いますが、その一つに、時間がかかるからという理由があります。単純に比較すれば、クルマのほうが速いのは当然です。都市部の渋滞など、条件によっては、かえって自転車のほうが速いこともありますが、もっともな理由でしょう。

私の友人にも、自転車は運動不足解消になったり、健康にいいかも知れないが、時間がもったいないという人がいます。クルマで行けば、何分の一かの時間で着くのに、わざわざ自転車で行くのは時間の無駄だと言うのです。クルマという文明の利器があるなら、あえて自転車を使う理由がないというわけです。

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よく行く場所、例えば通勤にクルマでなく自転車を使うとしたら、毎日時間を無駄にすることになるという考えです。その時間のロスは、積み重なれば大きな時間になります。言ってみれば、それは人生を無駄にしていること同じだと考えているようです。

たしかに、自転車のスピードには限界があります。クルマのほうが速いのは当然です。とくに朝の時間は貴重ですから、なるべく時間を短縮したい、そのぶん寝ていたいといった気持ちもあるかも知れません。しかし、自転車に乗ることが人生の無駄かと言われると、必ずしもそうとは言えない面もあると思います。

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ご存じの通り、オランダは世界有数の自転車大国です。国家政策として自転車の活用を進め、インフラ投資などにも力を入れています。自転車の効用に関する調査研究も多いため、どうしてもオランダのデータを引用することになってしまうのですが、この件に関して、オランダのユトレヒト大学による研究があります。

オランダ人は、週に75分自転車に乗ります。自転車は、全人口の全ての移動の4分の1以上を占めます。自転車に乗らない人も含めた平均ですから、かなりの量です。そのオランダ人5万人の統計データによれば、自転車に週75分乗る人は、そうでない人に比べて、寿命が約6ヶ月長いことがわかったそうです。

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これは、他の要因を排除し、自転車に乗るか否かだけの違いを導きだしたものです。WHO(世界保健機関)の研究成果などを使い、統計データの解析をしています。6ヶ月の差というと短い気もしますが、週75分の自転車の違いだけによる差としては、大きいと見ることも出来るでしょう。

これは、週75分自転車に乗ると、ちょうど75分、長生きすることに相当すると言います。自転車に乗れば、乗った時間と同じだけ長生き出来ることになります。つまり、自転車に乗る時間は全く無駄になっていないことになります。なかなか興味深いデータです。

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週75分というのは、全オランダ人の平均ですから、乗る人はもっと乗ります。日常的に自転車を使っている人も多いですから、そういう人なら、もっと長生きすることになるでしょう。自転車は健康増進に寄与するだけでなく、平均寿命も伸ばすわけです。統計的には、乗った時間だけ伸びているというのも面白い結果です。

自転車によって、ガンに罹患するリスクが45%減るとか、心疾患系のリスクは46%、早期死亡リスクは41%少ないなど、この手の研究結果は他にもたくさんあります。自転車の健康効果によるメリットを経済的な効果に換算すると、オランダの国内総生産の3%以上に相当するという研究もあります。

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自転車に乗らない派は、自転車が健康にいいことはわかるけど、もっと別のリスクもあると主張するかも知れません。例えば、自転車で走れば悪い空気も吸い込むことになるし、交通事故のリスクも高まります。そうした死亡リスクも考えれば、必ずしもメリットがあるとは言えないのではないかとの疑問です。

ヨーロッパでは、都市の大気汚染は依然として大きな問題となっています。フォルクスワーゲンの排ガス不正などをきっかけに、ディーゼル車は減る傾向にありますが、まだ走っている割合は高くなっています。いわゆる粒子状物質や窒素酸化物などによる大気汚染、そしてそれによる健康被害は、依然として問題なのです。

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排気ガスによる大気汚染に曝露されることが、健康に悪影響を及ぼすのは間違いないでしょう。交通事故についても、年代によっては、クルマの死亡率のほうが高いとは言え、事故による潜在的な死亡リスクが高まるのも当然です。実は、こうしたリスクを調べた研究データもあります。

事故や大気汚染など、自転車に乗ることによるデメリットを、疫学的な調査データと解析によって導き出している研究があります。結論的には、こうしたリスクを考慮しても、自転車に乗るメリットのほうが、かなり優ったそうです。交通事故や大気汚染の影響は、長期には低下しているので、この優位は揺るがないと言います。

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私の友人にも、ふだん自転車に乗らない人は多いですが、そうした人たちに、特に自転車に乗るように勧めたりすることはありません。理由に関わらず、自転車に乗ろうが乗るまいが、それは個人の勝手です。考え方は人それぞれですから、押し付けるつもりは毛頭ありません。

ただ、食わず嫌いで、イメージだけで敬遠している人も多い気がします。乗ってみると目からウロコで、考え方が変わる人も少なくないと思います。残念なのは、日本では格安ママチャリが席捲しているため、それらに乗っても、なかなか目からウロコ体験になりにくい点でしょうか。

ベッタリ、足が地面に着く乗り方なのも問題ですが、きちんとした自転車に正しく乗ると、自転車本来のポテンシャルが理解できるはずです。単に健康上のメリットだけでなく、『自転車に乗るのは楽しい』ことも実感するでしょう。乗る乗らないは自由ですが、一度きちんと体験してから判断してほしいな、と思います。




米中の貿易戦争、覇権争いが世界経済のブロック化につながり、悪夢の歴史が繰り返されないといいのですが。

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この記事へのコメント
英国グラスゴー大学が26万人以上を医学的に追跡調査した結果、自動車依存者より自転車利用者のほうが健康寿命も実際の寿命も長いという事実が明らかになっていますね。
また、日本国内において保有台数で事故率、死亡率を見ても自動車依存者より自転車利用者のほうが長生きな事実が見てとれます。
この辺りの自動車産業にとって都合のわるい事実が周知されると自動車が売れなくなるので困るので、自動車産業から多額のカネを受け取っているメディアはろくに報じないので日本では知らない人が多いですが、実態は上記の通り自転車利用者のほうが長生きという面では賢明と言えますね。
https://i.imgur.com/FTVy7qe.png
ちなみに同研究により、自転車利用者は自動依存者よりも長生きで、徒歩の者よりも長生きな事実が明らかになっています。
あらゆる移動手段において、長寿を目指したいならば自転車利用が最も賢明な事実が医学的に示された格好です。
Posted by 佐藤 at June 12, 2019 20:51
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
グラスゴー大学の研究については何度が取り上げていますが、クルマで移動するより、自転車で移動することでカラダを動かしたほうが健康にいいのは、大学の研究を持ち出されなくても、多くの人が当たり前に思っていることではないでしょうか。
クルマでの移動ばかりだと運動不足になることは、言われなくても明らかであり、クルマ産業にとって知られたくない真実ではないでしょう。
メディアがあらためて報じないのは、むしろ平凡で常識的なことで、あまりインパクトもないからではないでしょうか。
スポンサーにクルマ会社が多いのは確かでしょうが、それが健康面での自転車利用の優位性を伝えることに、それほど差しさわりがあるとは思えません。
クルマ会社も自転車と比べられることによる結論は常識の範囲であり、そのことが脅威とは思っていない気がします。
Posted by cycleroad at June 13, 2019 22:23
 
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