May 28, 2019

恵まれていると気づきにくい

日本は自然の豊かな国です。


国土の7割が山岳地帯で、その多くは森林で覆われています。平野は少ないわけですが、そのぶん緑の割合が高いことになります。南北に長いため、亜寒帯の北海道から熱帯の南西諸島まで気候も幅広く、貴重な生態系にも恵まれ、多様な生物が住んでいます。世界的に見ても自然に恵まれています。

日本に住んでいると当たり前のことで、とくに珍しいとは思いませんが、日本を訪れる外国人にしてみれば、日本の豊かな自然は大きな魅力です。日本独自の文化が注目されているように感じますが、日本の自然の豊かさも、貴重な観光資源となっています。

ツーリングなどで郊外へ行き、自然の中にいるとリフレッシュしますし、日頃のストレスも洗われる気がします。でも、日本のように、どこからでも少し行けば山があって、木々の緑がある国ばかりではないわけです。公園や街路樹など、人工的に緑化された緑はあっても、日本ほど森林には恵まれていない国は多いのです。

サイクリストは、郊外を走っていて、あらためて自然の素晴らしさを感じることも多いでしょう。クルマと違って排気ガスも出さず、環境への負荷が低いことを喜ばしく思うかも知れません。ただ、自然、とくに森林の貴重さを痛感する度合いは、日本よりも欧米人のほうが、ずっと高いと言えそうです。

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こちらのステムキャップも、そのことを感じさせます。木の切り株のような樹皮と、木の葉がデザインされています。イギリスのベルファストを拠点とするベンチャー企業、See.Sense 社の製品です。この会社、以前にユニークな自転車用ライトを発売したことを取り上げました。

そのライトは、クラウドファンディングサイトで資金を調達し、製品化したものでした。今度は、ステムキャップです。デザインはともかく、ライトのようなアイディア製品ではありません。ありふれたものです。このステムキャップを、クラウドファンディングサイトで提案しています。

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ステムキャップ(ヘッドキャップ)は、ステム部分のフタです。交換している人もあると思いますが、キャップ自体は、特に機能に関係するわけではありません。交換している人は、単なる好みやファッション、ちょっとしたカスタマイズでしょう。特に意識したことのない人も多いはずです。

それほど需要が高いとは思えないアクセサリーですが、実はこのステムカバーを購入すると、森林保護活動に寄付されることになっています。一つなら3本の木が植えられ、二つならば7本の木が植えられることになります。実は、SeeSeense 社は、“WeForest”という団体と協力して、世界中に木を植える活動をしているのです。

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植林活動自体は珍しい話ではありませんが、この活動に共鳴して、クラウドファンディングには、すでに目標の3倍近い金額が集まっています。ステムキャップというより森林保護ですが、すぐに資金が集まるのは、やはり欧米のサイクリストの環境意識の高さを見る思いがします。

WeForest は、ベルギーに本部を置く国際非営利団体です。彼らは、地球の温暖化を防ぐため、温暖化ガスを減らすだけでは足りないと考えています。減らすだけでなく、今あるCO2を除去するためには、森林に頼るしかありません。その森林を増やすために活動し、世界を持続可能にしたいと思っているのです。

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ヨーロッパ大陸なども、古代には豊かな森林に覆われていました。しかし、古来から人類は、木を伐採して燃料にしてきました。人間に営みによって、世界の森林は、その8割が失われてしまいました。森林が失われたことで砂漠化している地域も少なくありません。

いま、世界で合わせても、全陸地面積の約3割、約40億ヘクタールしか残っていません。しかも、毎年520万ヘクタールずつ減少しています。とくにブラジルやインドネシア、ナイジェリアなどの熱帯雨林の消失が顕著です。この減少を食い止め、逆に増やしていかなければなりません。

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現在も森林の伐採は続いています。木材として出荷したり、燃料とするだけでなく、農地にするためです。ただ、必ずしもそれを批難できません。欧米人は長い間伐採してきた身です。そこで、少しでも減少を食い止め、増やしていこうと、世界中で植林活動に力を入れているわけです。

森林の大切さは、単にCO2を吸収してくれるだけではありません。多くの生物を養い、食物連鎖を支えています。大切な生物多様性を支えているわけです。この生物多様性が失われたら、人類も生き残れません。水を貯える機能もあります。森林が減ることで、洪水などの災害が増えることになります。

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最悪のシナリオでは2050年にも原生林がゼロになると見られています。世界的に砂漠化が進み、穀物の生産量が減って、食糧不足に陥る可能性があります。気候変動がより激しくなり、洪水も大規模になるでしょう。森林の保水能力が損なわれることで、飲料水不足の深刻化も懸念されます。

毎年、日本の国土面積の半分に相当する広さの森林が失われていることは、深刻な事態です。このままではアマゾンも砂漠化してしまうと言われています。地球上の多くの生物は、直接間接に、森林なしでは生きられません。温暖化を別にしたとしても、人類にとって危機的な状況を招きかねない問題なのです。



生物多様性が損なわれていけば、さまざまな問題が起こるでしょう。よく言われるように、ミツバチがいなくなっただけで、農業は危機に陥ります。人類も生態系の一部であり、ひとり無縁でいられるはずはありません。森林伐採は、あらゆる点で人類の存亡にかかわると言っても過言ではないのです。

日本は、豊かな森林に恵まれているせいか、森林伐採、森林破壊に対する危機感が薄い気がします。もちろん、事実として世界の森林伐採は知っていますし、植林活動に寄付したことがある人もいるでしょう。しかし、どこか遠い国のこと、という気がしていないでしょうか。



森林破壊には、日本人も密接にかかわっています。熱帯雨林を切り開いたプランテーションから、サトウキビやコーヒー、パーム油、アブラヤシ、天然ゴムなどを買っています。実感はなくても、洗剤や石鹸、食料品、食用油などの原料になっています。もちろん、木材としても輸入されています。日本の木材より安いからです。

建材も家具も多くは輸入です。私たちが日常的に使っている紙や紙製品も、森林伐採に直結しています。例えば、日本の割り箸の消費量は年間およそ250億膳、その9割以上は輸入です。日本の間伐材を使ったものもありますが、値段的に割に合わないので、ほとんどが海外の森林から来ています。

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世界で進む森林の減少には、日本人も大きな責任があります。そして食料品から日用品まで多くを貿易に頼っている日本人にも大きな影響が及ぶ問題です。たまたま豊かな自然に恵まれており、森林の減少の実感に乏しいこともあり、日本人は森林破壊の問題への関心が低く、危機感が乏しいことを自覚する必要があると思います。




また無差別殺人が起きたようです。詳細はわかりませんが、小さな子供が亡くなっており、許しがたい犯行です。

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