August 11, 2019

自転車政策の方向と活かし方

各地で猛烈な暑さとなっています。


暦の上では立秋を過ぎましたが、連日の猛暑となっています。大型の台風が北上しており、お盆休みの日本列島を直撃する恐れも出てきました。さて、そんな折りですが、例によって最近の自転車関連のニュースの中から、気になったものをいくつかピックアップしてみたいと思います。


津波被災の海岸に自転車道 福島・いわき、防潮堤活用

防潮堤活用東日本大震災の津波で大きな被害に遭った福島県いわき市で9日、防潮堤などを活用したサイクリングロード「いわき七浜海道」の一部供用開始を記念する式典が行われた。

同市によると、震災後に復旧事業で建設された防潮堤を利用したサイクリングロードは東北の被災地では初という。

震災前の7割程度まで落ち込んだ観光客数の回復や、市民の健康増進が目的。

計画では全長約53キロ。うち同市勿来の関(なこそのせき)公園から三崎公園までの約26キロ区間が9日に利用可能となった。既存の国道などを活用したほか、防潮堤や防災緑地に自転車道を整備した。全体の完成は来年度中を見込んでいる。(後略 2019/8/9 日本経済新聞)


震災時の津波被害を受け、各地で新しく従来より大規模な防潮堤が建設されています。津波が、防潮堤を乗り越えたり破壊したりという例も多かったため、いくら防潮堤を築いても被害は防げないとの指摘もありますが、それでも逃げる時間を稼ぐなど、一定の効果は見込めるのでしょう。

ただ、視界を遮り、圧迫感が大きく、海辺の景観も台無しとの声は少なくないようです。そんな、普段は役に立たない防潮堤でも、その上をサイクリングロードにすれば、見晴らしもいいですし、観光面でもプラスになるなど、いい活用策なのではないでしょうか。


メリダが自転車とキャンプ道具一式をレンタル 「伊豆バイクパッキングプラン」

自転車キャンプミヤタサイクルが、静岡県伊豆の国市にある「MERIDA X BASE」(メリダ・エックス・ベース)を拠点とする、「伊豆バイクパッキングプラン」のレンタルサービスを開始した。

自転車とキャンプ道具一式を貸し出すサービスで、1泊2日、2泊3日のいずれかの期間で、伊豆半島を舞台とするキャンプツーリングを楽しむことができる。自身のバイクを持込んで、バイクパッキング用品のみをレンタルすることもできる。

バイクパッキングとは、自転車にキャンプ道具を積み込むツーリングスタイル。自転車にキャンプを取り入れることによって、1日では走ることの出来ない長距離や遠方まで行くことが可能になる。また1泊2日、2泊3日にすることによってスケジュールにも余裕ができ、観光やグルメを楽しむことが出来るとあって、近年人気が再燃している。

伊豆半島1周は距離220km、獲得標高3500m以上と1日で回るには厳しいコースだが、キャンプツーリングで巡れば伊豆半島1周も可能となり、普段のサイクリングでは味わえない楽しみ方や伊豆の豊かな自然を味わうことができる。伊豆半島にはキャンプ場が18カ所あり、個々のペースに合わせたツーリングプランが立てやすいバイクパッキング最適地。観光名所や温泉も多く、時間に余裕をもつことで楽しみ方の幅を広げることができる。

10万円分のキャンプ道具を8000円でレンタル

自転車キャンプ同レンタルサービスでは、メリダのロードバイクに加えてモンベル製品で揃えたキャンプアイテムを用意している。キャンプアイテムはテントや寝袋、ライト、ガスバーナー等計12種類。これにメリダのリアキャリアやフレームバッグなど、総額にして10万円分のアイテムがレンタルできる。

バイクのレンタル料は1泊2日で税抜8000円〜。購入時の費用と比較すると、例えばメリダの「SILEX9000」とキャンプアイテムを購入した場合、総額約59万円ほどかかるところを、レンタルでは補償費を含めて税抜1万8000円で楽しむことができる。(2019/08/05  サンスポ)


自転車でのソロキャンプに、どれほどの需要があるのかはわかりません。しかし、わざわざソロ用で、自転車に積める装備を揃えようとすると、かなりの金額になります。気軽には試せません。その点で、こういったレンタルの充実は、パイクでキャンプをする人口の裾野を広げるかも知れません。


ご当地キャラ御朱印集め 自転車で挑戦 時間内に6寺院巡る

松山城や道後温泉、電動自転車で 10月からシェア実験

諏訪湖の風切り 走り初め 自転車ロード一部開通

電動自転車で観光推進へ 御前崎、25日まで貸し出し実験

“碧志摩メグ自転車”で散策を 伊勢で貸し出し始まる


そのほかにも、各地からさまざまな取り組みが伝わっています。ご朱印を集めるのは、昨今ブームのようですので、これをサイクリングと組み合わせるのもいいかも知れません。各地で、自転車を使った観光客の誘致のために、いろいろな工夫がこらされているようです。


自転車盗情報に報奨金制度 春日井署

自転車盗情報報奨金自転車盗の被害防止を図ろうと、春日井署と春日井防犯協会連合会は、犯人逮捕につながる情報の提供者に対して報奨金を支払う制度を新設し、九月から運用を始める。

同署によると、こうした制度の導入は県内で初めて。署などは八日、制度の概要が載ったチラシとワイヤ錠百二十個を、JR勝川駅の自転車駐車場で利用者に配布した。

報奨金制度は、春日井市内で発生した自転車盗事件に関して、実際に検挙につながった情報の提供者(匿名や容疑者の家族などを除く)に対して、三千円を支払う。

期間は今年九月から来年三月末までで、報奨金の支払いは先着十件まで。効果が見込めれば延長も検討するという。

春日井署によると、春日井市内の自転車盗の被害件数は年々減少しているが、今年は六月末時点で二百四十三件と、前年同期比で六十一件(33・5%)の増加となった。一〜五月は三十〜四十件で推移してきたが、六月に五十六件と大幅に増えた。効果的な対策を検討する中で、報奨金制度の導入を決めたという。

同署の金子功治生活安全課長は「自転車の所有台数が不自然に多くなったなど、ささいな情報でも構わないので、制度を活用して犯人の検挙に協力してほしい」と呼び掛けている。(2019年8月9日 中日新聞)


自転車盗の情報に報奨金というのは、あまり聞いたことがありません。たかが自転車盗と考えがちですが、小さな犯罪を野放しにしていると、治安の悪化や、非行のエスカレートによって犯罪者予備軍を育て、やがて凶悪犯罪の発生につながると言われていますので、自転車盗から検挙に力を入れる姿勢は評価出来ます。

ただ、自転車盗の検挙につながる情報というのは、なかなか構造的な難しさがありそうです。凶悪犯罪と違って関心も低いでしょうし、3千円という金額で、果たして情報をわざわざ寄せるかという点も含め、効果は未知数と言わざるを得ません。抑止という面でも、もう少し工夫が必要かも知れません。


自転車の検挙、10年で10倍=指導・取り締まり強化−警察当局

警察当局は、自転車の利用者に対する交通指導・取り締まりを強化している。昨年の検挙件数は1万7568件と、過去10年間で10倍以上に増加。指導警告票の交付は160万6029件に上った。

警察庁によると、検挙件数の内訳は信号無視が9316件と最も多く、踏切への立ち入りが4711件で続いた。傘を差しながらの運転など、各都道府県の公安委員会が定めた禁止事項に違反する行為も685件あった。

指導警告では、無灯火が最多の47万929件。このほか、歩道で並走したり、歩行者がいるのに徐行せず走行したりするなどの「歩道通行者に危険を及ぼす違反」も29万3295件と多かった。

同庁の担当者は「自転車乗車中の死者は、信号無視などの法令違反の割合が高い。今後も指導や交通安全教育を通じて交通ルールの順守を推進していきたい」と話している。(2019年07月23日 時事通信)


自転車の交通違反の検挙は、10年で10倍になっているそうです。右側通行や歩道での危険な走行など、検挙数の拡大のわりに、減っている気がしません。スマホを使いながらの走行など、むしろ増えている感じもあります。やはり、指導警告票の交付では法的な意味もないため、実質的な抑止効果が無いのでしょう。

スマホ走行などは、歩行者や他の自転車にとっても危険で脅威となるため、取り締まりで違反を減らすべきだと思います。しかし、取締りと言っても、ただ指導警告票を渡すだけなら、実際問題として意味がありません。その部分を修正しない限り、ザルで水をすくうようなものです。

例えば、路上喫煙禁止条例と同じように、過料として2千円をその場で徴収するようなことは出来ないのでしょうか。違反者は、交番で3日間スマホを預かるなんていうのは、無理でしょうか。何か罰則を強化しない限り、取締りの件数が増えても、結局は無駄な気がします。


自転車の自動運転が実現?清華大学が自転車の無人自律運転を実現するハイブリッド型チップ「TianjIC」を発表

イギリスの権威のある科学誌「ネイチャー(Nature)」が自転車の無人自律自動運転を紹介

無人自律運転「ネイチャー(Nature)」8/1号の表紙には、清華大学の脳コンピューティング研究センターの所長であるShi Lupingが中心となり開発したスマートチップ「TianjIC」が掲載された。

カバーストーリーでは、スマートチップ「TianjIC」について詳しく紹介され、「TianjIC」を搭載した無人自律自動運転に関する事例も含まれ非常に夢を与える記事内容となっている。

一般的に、自転車走行はバランスを取らなければ実現困難であり、自動運転の研究としては、航空機や自動車の自動運転よりも自動運転の実現性に対する難易度は高いとされている。

自転車の無人自律運転を実現する場合、スタート、加速、方向転換、ブレーキ、などのアクションをバランス維持しながら行う必要があり、加えて障害物回避、信号に対する反応、交通ルール遵守などを同時遂行する必要がある。一つでもそのバランスが崩壊すれば、自転車は瞬く間に転倒してしまう。また、予測不可能な第三者の飛び出しによりバランスを崩しやすく、周囲の交通や車線変更に対する事前予測の重要度も自動車よりもはるかに重視される。

こうした複合的な判断を瞬間的かつ並行的に処理を実現するために、清華大学のShi Luping氏が率いるチームでは、脳型回路と機械学習(ディープラーニング)を組み合わせたハイブリッド型の電子チップ「TianjICチップ」の研究開発に取り組み、その開発に成功したという。Tianjicチップを無人自律自転車に組み込むことによって、自転車は自らバランスを取りながら走行し、同時に突発的な事象を予測しながら障害物を回避するという複合的な判断を行うことができるという。

実際に自転車の無人自動運転をどのように社会に役立てていくかはまだ先の課題となるが、多くの領域に応用されることが期待される。科学の進化を実感することができる非常に面白いカバーストーリーとなっており、関心ある方は「ネイチャー(Nature)」誌をご覧いただきたい。(08/06/2019 GloTech Trends)


自転車発射バランスをとらない限り、倒れてしまうわけで、クルマの自動運転より難易度が高いというのはイメージできます。その点で、この技術は進歩と言うべきでしょう。しかし、記事にもあるように、自転車の自動運転が役に立つのか、果たして意味があるのかという点で疑問です。

歩行者を避けるためなど、周囲の状況で停止せざるを得なかったら転倒は避けられないでしょう。歩行者に蹴飛ばされただけで、転倒して走行継続は無理です。自律的に起き上がるようにするならば、相当のメカとエネルギーが必要になり、自転車である意味、2輪である意味がなくなるような気がします。

バランスをとる技術を、高齢者の乗車の安定に役立てるという研究も読んだことがありますが、どうしても機械や動力の点で、装備や重量やコストが増えてしまいます。それならば、単純に3輪にしたほうが、よっぽど簡単で、低コスト、電力やスイッチなどもいらず、操作しやすいでしょう。

バランスをとる技術、それを制御する方法などの技術開発を否定するわけではありません。しかし、そもそも意味があるのか疑問が残ります。基礎研究ならともかく、とりあえず技術が完成してから役立て方を考えるくらいなら、やはり必要とされる技術を開発すべきな気がします。


自律走行する新しい配達ロボットが、活躍の場に「自転車専用レーン」を選んだ理由

自転車専用レーン自律走行する小型の配達ロボットが、市街地の自転車専用レーンを軽快に走る──。

多くの企業が配達ロボットの開発に挑むなか、新規参入したRefraction AIの「REV-1」は自転車専用レーンを走るように設計されているのが特徴だ。

歩道でも自動車レーンでもなく、あえて自転車専用レーンを走る設計にしたことには、いくつかの戦略的な理由がある。(後略 2019.08.07 WIRED)


同じ自転車の自動走行でも、こちらの3輪の自動走行カーゴバイク、ロボットは、その意味合いが明快です。フードデリバリー程度であれば、これでも十分でしょうし、逆に自動走行のクルマである必要はないでしょう。コスト的、道路占有面積的にもメリットがあります。

もちろん、自転車レーンでの他の自転車との共存や、道路環境の違い、ニーズの問題など、課題はいろいろあるとは思います。ただ、フードデリバリーに限らず、例えば高齢者の移動のアシとしても、場合によっては、この程度の大きさや速度でも間に合うような気もします。

クルマの自動運転が、今後どのように展開していくかはわかりません。しかし、自転車サイズの3輪、もしくは4輪で、自転車程度のスピードでも、十分に役立つ余地はあり、かえって実現性が高いようにも思えます。少なくとも、これで十分という用途もあるはずです。

人間の移動には、結局スピードが求められるでしょう。その場合は、今のクルマ程度の頑丈さが求められ、それなりの大きさ、重さが必要になるでしょう。それでも、依然として自転車程度で済む移動や輸送もあると思いますし、このようなモビリティと使い分ける手はあるような気がします。


体にピッタリのサイズの自転車を選んでくれるマシーン「Right Bike」

Right Bikeあなたの自転車は、あなたの体のサイズに合っているだろうか。適切なサイズの自転車を見つけることは重要だ。

体にピッタリの自転車に乗れば、私たちは安全に快適に、自信を持ってライディングが楽しめる。今回登場したのは、体にピッタリのサイズの自転車を選んでくれるマシーン「Right Bike」だ。

・身体サイズを数秒で自動測定

ニュージーランドに本拠を置くVelogic Fit社が開発したRight Bikeは、32インチのタッチスクリーンを持つ自転車販売店用につくられたマシーン。

使い方は簡単。ユーザーは画面上に指示された測定ポーズでマシーンの前に立つと、Right Bikeが内蔵3Dカメラを使用してユーザーに触れることなく、主要な身体サイズを数秒で自動測定してくれる。

次に、乗る場所を街中や森の中などから選び、オプションとして、レクリエーション用やレース用、eBikeや女性用自転車などを選択する。

以上が終わると、客の体と好みに合った自転車が表示され、価格や素材などで選択を絞りこみ、最終的に最大4台の自転車を候補として選べる。そして最後に、自転車の詳細とサドルの高さなどの推奨初期設定を示すレポートが作成され、このレポートを電子メールか印刷、または画面の写真を撮って受け取れる。

・自転車販売店へのサービスも充実

自転車販売店へのサービスも充実している。Right Bikeはスタンドとソフトウェアに店のロゴを表示してブランディングできる。また、店舗の価格設定と在庫レベルのPOSシステムと統合しており、定期的にデータベースが更新される。

体にピッタリのサイズの自転車を選んでくれる便利なマシーンRight Bikeで、ユーザーも販売店も満足できそうだ。(2019/8/7 TECHABLE)


サイズを測ると言えば、洋服や靴のサイズを自分で測れるアプリや、測定用グッズなどを提供する業者も出てきました。通販会社は、サイズが問題となる、身につける物品であっても、ネット通販で効率よく売ることが出来ます。しかし、このマシンは店舗用で、自転車を通販で売るためのものではないようです。

自転車は、組み立てや調整の必要もあるため、あまり通販には向かない面があります。種類の限られたママチャリならともかく、フレームサイズ以外にも、アジャストするため細かい調整が必要なスポーツバイクの場合、さすがにスマホで撮影して採寸、注文というのには抵抗感を持つ人もあるでしょう。

店頭で採寸するための機器は今でもあるわけで、それが多少便利になるということのようです。個人的には、正面の写真から自動判定するよりも、乗車姿勢になって、実際に採寸したほうが、精度も信頼性も上がる気がします。いずれにせよ、自転車の売り方が変わるようなマシーンではなさそうです。


ICTを活用した交通データ収集、人や自転車を含めて…国交省が検討へ

交通データ収集国土交通省は、新たな道路交通調査体系の構築に向けて「ICTを活用した新道路交通調査体系検討会」を8月9日に開催すると発表した。

国土交通省では、これまで5年に1回実施されてきた道路交通センサスを主体とした、車に焦点をあてた調査体系から、ICTをフル活用した常時観測を基本とする平常時・災害時を問わない「新たな道路交通調査体系」の構築を目指している。

このため、検討会を開催して人、自転車などを含めた道路空間に存在する全ての主体の利用データの収集にあたっての課題抽出、具体的なデータ利活用方策について、多様な交通モードとの連携も視野に入れて検討する。(2019年8月8日 レスポンス)


地味なニュースですが、国交省の道路交通の調査がクルマ中心、クルマのみから、道路空間を一体とした調査に変えることを検討しているようです。これまで、クルマ優先、あるいはクルマのことだけを考えて道路整備が進められてきたのを改めようということなら、サイクリストとしては歓迎すべき方向です。

とりあえず、クルマのことを考えておけば、オートバイや自転車は何とでもなるという発想だったのでしょう。クルマのことしか考えられておらず、自転車にとって危険だったり、不合理だったりする道路、箇所はたくさんあります。これまでの調査の姿勢が反映していると言われても仕方ありません。

今後、人や自転車などを含めた、道路空間に存在する全ての主体の利用データ収集によって、それがどう変わるかは予断を許しません。しかし、これまでデータ収集の対象にすらなっていなかったのが、対象となることで、自転車にとっても、より安全で、全体として効率の良い道路が実現されることを期待したいと思います。


周回遅れだった日本の「自転車ツーリズム」 訪日客を呼び込む“切り札”となるか

日本にも国際水準のサイクリングロードを――。

自転車ツーリズム海外に比べ、遅れがちと指摘されることもある日本の自転車政策。それが最近になって、大きく動き出した。外国人観光客の呼び込みに自転車旅行が有効なツールとなり、地域ビジネスにもプラスの効果があるという認識が広まってきたためだ。

政府が訪日外国人4000万人達成を目標に掲げたこともあり、海外で人気が高い「自転車ツーリズム」を推進する必要は急速に高まっている。てこ入れを図るため、政府は2019年度中にも、国際水準の自転車道を国が指定する「ナショナルサイクルルート」制度を創設する方針だ。

6県にわたる1400キロのルートも

そもそも政府が構想するナショナルサイクルルートとは一体何だろうか。厳密な基準は有識者検討会で専門家が議論している最中だが、安全で快適に走れる100キロ以上の自転車道であることが最低限求められる。

すでに候補となるモデルルートが各地で36カ所設定されている。例えば、北海道の石狩川の河川敷を走る「石狩川流域圏ルート」や山梨、静岡両県にまたがる「富士山一周サイクリングルート」(仮称)などだ。千葉県銚子市から神奈川、静岡、愛知、三重の4県を横断し、和歌山市までを結ぶルートとして整備が進む「太平洋岸自転車道」(約1400キロ)や、琵琶湖を1周する「ビワイチ」(約200キロ)も関係者の間では有名だ。旧筑波鉄道の廃線跡地を活用した「つくば霞ケ浦りんりんロード」(約180キロ)でも、周辺でスポーツバイクの貸し出しサービスが始まるなど、積極的な利用者誘致の取り組みが進んでいる。

このほかにも、北海道から沖縄まで各地で、官民でつくる協議会が国際水準のサイクリングロードとして将来認められることを目指し、モデルルートを続々と設定し始めている。

背景に「しまなみ海道」の成功
(中略)

欧州で見た、驚きの自転車政策

こうしたサイクリングロードの設定は、愛好家だけでなく一般人からも一定のニーズがあったが、政府はなかなか思い切った政策に踏み出せずにいた。

一方、海外ではすでに取り組みが進んでいる。政府の自転車活用推進本部によると、欧州連合(EU)では、「Euro Velo」と呼ばれるサイクルルートの認定が07年から始まっていて、直近では14路線計約7万キロに達している。自転車大国として知られるドイツ(12ルート、約1万2000キロ)やオランダ(約20ルート、約6000キロ)でも、民間団体などが主導する形で選定が進められてきた。台湾でも、島を1周する「環島」に自転車で挑む人が増えていることから、約990キロのサイクリングロードが15年に設定されている。

自転車ツーリズム

筆者も以前、欧州を訪れた際、日本と比べて大きく進んでいる自転車政策に驚かされた。ドイツの自転車都市として知られるミュンスターでは、自転車専用道が街の大半の道に存在している上、専用信号の設置など、安全に走行できるための工夫が随所にこらされていた。例えば、巻き込み事故防止のため、自転車の信号待ちゾーンは車の前方に設けてあり、駅前の地下に3000台以上の収容が可能な大規模駐輪場も整備されている。

第ニ次世界大戦からの復興期に、都市内部に入り込む車を極力減らし、「歩行者に優しいまちづくりを心掛けた結果」と、地元の行政担当者は説明していた。街の中心部から車を排除することで商店街を歩行者が安全に散策しやすいようにし、石畳の風景も保全できたという。そこで、車の代わりの移動手段として重宝されたのが自転車だった。安全な走行レーンが設けられているせいか、街を行き交う自転車の速度が日本よりも速いように感じた。

自転車道整備の完了率は84%

日本でも、こうした世界の取り組みに追い付こうと、数十年前から取り組みを進めてきた。各地に「大規模自転車道」と呼ばれる専用道を少しずつ造ってきたが、車優先の時代背景には逆らえず、空港やダムなどの「インフラ整備はおおむね完了した」(財務省)とされる現代でも、ハード整備自体がいまだ不足している状況だ。

国土交通省によると、1970年に成立した自転車道整備法に基づく大規模自転車道計画の完了率(2016年度末)は84%にとどまっている。車道や歩道に比べて優先順位が低いと見なされてきた上、予算不足もあり、なかなか自転車専用道の敷設が進まない。

自転車ツーリズムそんな中、同省では近年、車道を走る自転車の危険性を減らすため、平仮名の「く」の字に似た記号で自転車の通行帯を表す「矢羽根型路面表示」や道路標識を増やすなど、予算のかからないソフト対策に力を入れている。

ナショナルサイクルルート制度ももちろん、新しく自転車専用道を一から建設する訳ではない。すでにある自転車道を生かし、周辺施設や標識などを充実させることで、各国からサイクリストをいっそう受け入れられるようにすることを目指している。

当初の想定では今夏にも創設の運びだったが、有識者から基準に関して多様な意見が相次ぎ、意見集約に時間がかかっている。検討会委員長を務める東京工業大学大学院の屋井鉄雄教授自身、筋金入りのサイクリストであり、他にも思い入れの強いメンバーが多い。検討に当たっては各地域のルートを実際に試走するなど現場重視の姿勢も貫いている。ナショナルサイクルルートの基準を巡っては、「徐行義務のある自転車歩行者道はルートに入れてほしくない」「万が一の事故の際、救急車がルートに入る必要があるのでは」など、安全性の確保に関する意見が多いように思う。

いずれにせよ、本年度中にはナショナルサイクルルートが創設され、多くの人々が楽しめるようになるのは間違いなさそうだ。ただ、安全性や周辺施設の充実などの面で世界基準といえるのは、現状では距離が基準未満の「しまなみサイクリングロード」くらいという見方もある。実際にどの地域のルートが選定されるのか、注目されそうだ。

今回、日本政府が踏み出すのはナショナルサイクルルート制度の創設という小さな一歩にすぎないが、自転車政策を語る上では極めて重要な変化だ。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせて訪日した外国人サイクリストが、日本旅行を満喫できるような環境づくりにもつながることを期待したい。(2019年07月31日 ITmedia)


欧米の自転車政策、自転車環境の整備については、このブログでもいろいろと取り上げてきましたが、日本でも、ようやく「自転車政策」「自転車ツーリズム」といったことが記事になるようになってきました。以前は、政府の政策レベルでは、話題になることすらなかったことを思えば、隔世の感があります。

日本には、外国人観光客に人気な、日本独特のものがたくさんあります。しかし、日本人は気がつきませんが、文化や歴史だけでなく、日本の変化に富んだ自然そのものも、大きな魅力です。それを味わう手段の一つとして自転車は人気があり、そのことに各観光地でも気がつき始めたということでしょう。

自転車ツーリズム単に自転車に乗るためだけに日本に来る意味はありません。日本人にはありふれた地形や景色、自然でも、自転車に乗ることで観光資源になります。バスの車窓から見るのとは感激の度合いも違うでしょうし、体感すれば、思い出や印象の残り方も違ってくるはずです。その点に、自転車に乗る意味があります。

「外国人サイクリストをもっと受け入れる」という論調になっていますが、サイクリストでない大多数の外国人観光客も、自転車に乗りたくなるようなものにすべきです。日本の景色を楽しんでもらう、日本の自然を直に感じてもらうというスタンスで、ルートの設定にも工夫がほしいところです。

ふだん自転車に乗らない日本人が、海外に行って、自転車で移動して、そのことで思い出深い旅行になったりします。それと同じで、外国人のサイクリストだけをターゲットにするのではなく、一般の人でも自転車に乗ることによって、日本の自然を楽しんでもらえるような魅力のあるサイクルルートが求められます。

当然ながら、歩道走行させたり、歩行者と混在で徐行させたりというような、日本独自のスタイルは避けるべきです。外国人を迎えようというなら、日本独特のママチャリ感覚のお粗末な自転車道は排除し、世界的な常識に沿ったレベルで、安全で快適な整備にしてほしいものです。




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