スポーツバイクの場合は、それぞれの車種タイプによって定番のスタイルがあり、形を見ただけで、ほぼ見分けがつきます。あとは、細かいデザインや意匠の部分で、いかに特徴や個性を出すか、良いデザインと感じてもらえるか、各メーカーが工夫をこらすことになります。
スポーツバイクのデザインの多くは、もはや熟成しており、ときおり斬新なデザインのものが売り出されることもありますが、あまり大きな変更をする余地は少ないでしょう。それだけリーズナブルなデザインをしていますし、オーソドックスなほうが支持される部分もあります。
スポーツバイクよりは多少幅が広く、自由度は高めですが、シティサイクルなどにも、一般的となっているデザインがあります。加工のしやすさ、生産性、コストダウンなどから、定番のスタイルに収束していくのは自然でしょう。同じ車種ならば、どうしても似てくるのは否めません。
ただ、中にはユニークだったり、個性的なデザインの自転車もあります。メーカーがデザインする以外にも、外部のデザイン事務所にデザインを委託して、スタイルを差別化したり、斬新さを強調したり、他にない特徴を打ち出したりすることもあります。
オランダのデザイン会社、
Basten Leijh Design Studio は、自転車だけでなく、家具や照明、オフィス用品など、いろいろなものをデザインしています。自転車については、メーカーの委託を受け、ロードバイクなどのデザインも行っています。スマートなだけでなく、生産プロセスを考えて効率的なデザインになっています。
シティサイクルについても、オーソドックスでありながら、個性を強調する部分もあります。例えば、後から追加しなくてもすむよう、フレームとフロントキャリアを一体化したデザインは、実用性が考えられていると共に、控えめですが、その形状で個性も出しています。
“HELLO BIKE”という、アムステルダムで使われている、シェアバイクのデザインもしています。オーソドックスでシンプルなデザインでありながら、堅牢で壊れにくいことを重視しています。もちろん、一目でシェアバイクとわかるデザインとなっています。
こちらの小径車になると、少し個性的になってきます。特徴的なのはハンドルですが、この部分がロックになっています。わざわざ重いロックを持ち運ばなくても、ハンドル部分が駐輪時にロックになれば便利でしょう。こちらは、ジャイアント社によって販売され、世界的に高い評価を得ているそうです。
こちらはユニークな形をしています。後輪を覆って、一体となった平行四辺形の部分には広告が入ります。この形だけでも目立ちますが、普通のダイヤモンドフレームと比べて広告を入れる面積を大きくでき、目立たせることが出来るわけです。
もちろん、この変わったデザインを好んで買う人が多いとは思えません。これは、学生に無料で貸し出して、そのかわりに広告媒体になってもらおうというものです。スマホアプリと連動させ、例えば広告スポンサーが希望する、指定されたスポットへ行くと、ボーナスがもらえるなどの特典があります。
こちら、以前にも取り上げた“
Sandwichbike”も、この事務所の作品です。このデザインは、世界のたくさんの賞をとっています。木製のパネルを左右からサンドイッチする形になっており、素人でも自分で簡単に組み立てが出来るのが特徴です。でも、それだけではありません。この木製のパネル部分を活用しようというのです。
“Sandwichbike”を異業種とのコラボに使っています。その相手先は、なんと、アムステルダムにある、ヴァン・ゴッホ美術館です。このパネル部分が、「ひまわり」など、ゴッホの有名な絵画をモチーフにした図柄になっているのです。組み立てはサービスでやってくれます。
Vincent van Gogh: Sunflowers
たまに、有名なブランドとタイアップして、そのロゴやブランドカラー・意匠をフレームに施し、ブランドを打ち出した自転車というのを見ることがあります。でも、ゴッホの絵と自転車という組み合わせは意表を突かれます。たしかに、よく見ると絵画がモチーフとなっていることがわかります。
Vincent van Gogh: Almond Blossom
日本には、人気アニメのキャラクターの入った自転車に乗るのが趣味の人がいますが、それと似た感覚なのでしょうか。ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの熱烈なファンでなくても、美術マニアなら、乗りたくなる部分があるのかも知れません。自転車+アートです。
Vincent van Gogh: Irises
Vincent van Gogh: Wheatfield with Crows
Vincent van Gogh: Wheatfield under Thunderclouds
ちなみに、ゴッホの有名な5枚の絵画は、「ひまわり」以外に、「花咲くアーモンドの木の枝」「アイリス」「カラスのいる麦畑」(「カラスの群れ飛ぶ麦畑」や「黒い鳥のいる麦畑」とも。)「荒れ模様の空の麦畑」(「雷雲の下の麦畑」とも。)です。
こうして見てくると、同じ自転車でも、決して定番にこだわっていないデザイン、使い方やニーズを優先することで、個性的でユニークなデザインもあることがわかります。このデザイン会社のものでも、最初のほうのものはともかく、ゴッホの名画と自転車が結びつくとは思いませんでした。
自転車のデザインも、もっと自由に発想するならば、いろいろ考えられるでしょう。定番のスタイルに収束しているのは、むしろ冒険しなくなったからとも言えそうです。そして、自由なデザインは新しいスタイル、自転車と意外なものとの組み合わせを生み出すかも知れません。
大型の台風が北上してお盆の日本列島を直撃しそうです。大雨や強風で大きな被害が出ないといいのですが。
Posted by cycleroad at 13:00│
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