September 28, 2019

すべて満足させるのは難しい

自転車はたくさんのパーツで出来ています。


そのパーツの多くはアーレンキーなどの工具があれば、簡単に外すことが出来ます。細かい部分では、簡単に分解できないところもありますが、クイックリリースになっていたりすれば、工具すら不要で、あっという間に外すことが可能です。部品の交換や調整、パンクなどの修理がやりやすいのは利点です。

一方、簡単に取り外せると、盗むのが容易というデメリットがあります。自転車丸ごとの盗難以外にも、パーツだけ盗まれてしまうことがあります。スポーツバイクの場合、パーツだけでも高価なものは少なくないですし、パーツだけなら比較的換金もしやすいこともあるでしょう。

海外では、一般的に自転車盗が多いため、パーツの盗難も防ごうとタイヤを外し、フレームと合わせて厳重にロックして駐輪されているのを見ることがあります。サドルにもワイヤーロックをかけるなどして用心していたりします。日本でも、タイヤなどにもワイヤーを通したり、複数のロックをしている人を見ることがあります。

いちいち分解したり、いくつもロックするのは面倒ですが、タイヤだけでも盗まれたら走行は不可能になります。サドルだって、盗まれてしまったら、ずっと立ち漕ぎで帰らなくてはなりません。自転車盗は腹立たしい限りですが、痛い目に遭った経験から、備えておくに越したことはないと考える人もあるでしょう。

SeatylockSeatylock

Seatylock

さて、このうちサドルの盗難を防ぐ製品を考えた人たちがいます。“SeatyGo”、サドルの座面の部分だけ着脱出来るようになっており、駐輪したらサドルを持って離れるという作戦です。似た発想は過去にもあったような気がしますが、サドル単体で取り外せるのは世界初で唯一だとしています。

工具も不要、ワンタッチで着脱できます。これが無くても、シートクランプに、クイックリリースタイプのものを使っている人なら、簡単にシートポストごと着脱は出来ますが、持ち運ぶのにはかさばります。サドルの座面だけなら、バッグにも入るので、現実的な選択肢ということになるでしょう。

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メリットは盗難防止だけではありません。サドルの座面をナイフで切るなどの嫌がらせも回避できます。駐輪中に雨が降ってサドルが濡れて、冷たい思いをしなくて済みます。屋外で紫外線や湿度などに晒されることで、長期的にサドルが劣化して損傷するのを避けることも出来ます。

着脱できる以外は、一般のサドルと同じなので、普通のシートポストに取り付け可能です。座面の幅や厚みの違う種類がいくつか用意されているので、ある程度自分に合ったものが選べるようになっています。二重の安全メカニズムを備え、意図せず脱落することのない構造だそうです。

Seatylock

いちいちサドルを持ち歩くのは荷物になりますが、これなら盗みようがありません。サドルをワイヤーなどでロックする手間も省けます。さらに、サドルが無い状態になりますので、自転車を盗んで乗って逃げようという窃盗犯は避けるはずです。そういったタイプの自転車盗に対しては、抑止効果も見込めるでしょう。

この製品を開発した Seatylock 社、実は過去に取り上げた“Seatylock”を製造販売している会社です。こちらは、サドルを取り外すと、それがロックになるという製品でした。その後、そのバリエーションも増やしています。普通の自転車用ロックも扱っていますが、サドルにこだわった会社と言えるでしょう。

SeatylockSeatylock

Seatylock

現在は、クラウドファンディングサイトで資金調達と予約販売を行っています。まだ1ヶ月近くの期間を残して、目標の3万ドルのうち1万ドル強の資金が集まっています。値段は65ドルからとなっており、世界各国に2020年の1月に発送する予定としています。

なるほどユニークな製品です。この機構で特許も取得しているそうですので、ありそうでなかった製品と言えるかも知れません。たしかに、サドルを持って歩くことで盗難防止をしたいと考える人はあるでしょう。ただ、個人的には多少、欠点もあるような気がします。

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サドルは、人によって合う合わないがあります。お尻の形状や骨の位置、乗車姿勢などによってはサドルが合わず、乗っていて激しい痛みに見舞われることもあるでしょう。もちろん、慣れもありますが、一人ひとり体格や骨格が違うわけですから、どうしても合わないケースもあります。

いくつかタイプがあるとは言え、そのあたりに不満が出る可能性はありそうです。シティサイクルならともかく、スポーツバイクなら、サドルの形状や性能をシビアに求める人も多いと思います。盗まれなければ何でもいいという人ばかりではないでしょう。

逆に言うと、自分に合った唯一無二のサドルだからこそ、盗られたくないのであって、このサドルにそうした価値が出るかはわかりません。あるいは、高性能で高価なブランドのサドルだからこそ、換金目的で盗まれるわけで、こうした汎用的なサドルの盗難防止に気を使う必要があるかという疑問も出てきます。



たしかに、サドルの座面が無ければ盗んで乗って逃げるのには難があります。ただ、もしこれがある程度普及するならば、一個購入しておくことで、用意した座面を取り付けて乗って行けてしまいます。そう考えると、以前の“SEATYLOCK”のほうが、アイディア的には優れていた気がしないでもありません。

あまりサドルにこだわらない、シティサイクル向けということになるでしょうか。でも、濡らしたくないだけなら、カバーという手もありますし、シティサイクルのサドルをいちいち持って歩きたいという人が、どれだけいるかは疑問です。パッと見ると便利そうにも思えますが、よく考えると微妙です。

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せっかくのアイディアにケチをつけるわけではありませんが、評価は分かれるような気がします。たしかに、盗ませないため、外して持ち歩くというのは、一つの作戦だと思います。自分のどうしても盗まれたくないサドルに、この機構が取り付けられるのであれば、違ってくるかも知れません。

自転車のパーツは、一般的に簡単に外せるため、盗難の心配が拭えません。しかし、パーツが簡単に外せないと、調整や交換、修理などの点で不便になります。パーツを外して持ち歩けば盗難は防げますが、荷物が増えたり、機能が制限されたりします。どうしても一長一短になり、全て満足させるのは難しそうです。




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いよいよラグビーW杯 アイルランド戦です。番狂わせの起きにくい競技とは言いますが、期待してしまいますね。

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