October 10, 2019

いつまで活動を続けられるか

人生100年時代が到来すると言われています。


日本人の寿命は伸びており、すでに100歳以上の高齢者が全国で7万人を突破しました。今働き盛りの人が高齢になる頃には、人生100年時代は十分に現実的になっているでしょう。喜ばしいことですが、一方で長生きのリスクも意識されるようになってきました。

いわゆる老後資金2000万円問題がクローズアップされ、多くの人が、年金だけでは生活が成り立たなくなる可能性という事実を突きつけられました。政府は、全世代型の社会保障制度の実現を打ち出し、70歳まで働くことを軸にさまざまな制度の見直しを始めています。

これにより、年金制度の持続性や、少子高齢化による就労人口の減少を補うことも期待されます。一方、年金の支給年齢は上がることになり、支給を間近に控えた人にとっては、割り切れない思いがあるかも知れません。厚生労働省や旧社会保険庁の不祥事などを考えれば、納得のいかないということもあるでしょう。

Carl GroveCarl Grove

ただ、戦後すぐの頃の日本人の平均寿命が53歳だったことを思えば、急速に寿命が伸びたのも確かです。40年ほど働けば、定年退職して年金生活が出来たのは、亡くなるのも早かったからであり、これだけ寿命が伸びたのに、同じ40年でリタイアでは年金収支が合わないのも仕方のないところでしょう。

今は70歳までといっていますが、将来は更に伸びるかも知れません。果たして、働き続けられるだろうかと思ってしまいます。しかし、今だって70歳を過ぎても元気に働いている方は大勢います。むしろ、働き続けているからこそ元気でいられるという面もあるに違いありません。

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ところで、自転車も乗り続けなければいけないと主張している人がいます。アメリカ・インディアナ州のブリストルに住む、Carl Grove さん、御年91歳です。地域では、ちょっとした有名人です。なにしろ、自転車で数々の年齢別世界記録を更新し続けているのです。

今年8月、90から94歳のクラスでの2つのサイクリングの世界記録を樹立しました。コロラド州コロラドスプリングスの、20kmのローリングコースでのタイムトライアルでは、32分59秒を出しました。これは、以前の記録を6分も上回る記録です。

屋内トラックでのタイムトライアルでは、1時間で103ラップ、21.44マイルを走りきりました。これも、その前のフランス人の記録、88ラップ、18.9マイルを大幅に上回る世界記録です。そのほか、この10年間だけでも、いくつもの大会で記録を残しています。

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実は90歳の時にも世界記録を樹立しましたが、ドーピング検査にひっかかり、タイトルを剥奪されるという憂き目にあっています。これは、前日に食べた牛肉が成長剤か何かの薬剤で汚染されていたからである可能性が高いことを、検査機関も認めています。

ドーピング検査で陽性になるなんて思ってもいなかった、Carl Grove さんにとっては、とてもショックな出来事でした。いくらマスターズ大会の世界記録がかかっていると言っても、わざわざ90歳でクスリを飲んで得られるものがあると思いますか、と語っています。

しかし、そんなショックも乗り越え、今年再挑戦して見事記録を樹立しました。突然の出来事にもめげず、速く走れるよう毎週12時間、しっかりと練習を積んできた成果です。記録を狙うモチベーションになったのは、2010年に始めて80〜84歳のグループで優勝した経験だそうです。

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カールさんは、もちろん小さい頃に自転車を買ってもらい、乗れるようになりましたが、大人になって初めてサイクリングするようになったのは40代だそうです。そして本格的に始めたのは62歳です。昔から自転車競技の選手だったわけではなく、普通の人が地道に続けてきただけです。

80歳になっても乗り続け、2010年に初めて山岳地帯の40Kロードレースで表彰台に上がりました。そこでアメリカ国歌を聞き、星条旗が揚がるのを見てとても感動したと言います。そこから、さらに記録を伸ばすべく努力を続けてきたのてす。

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そんなカールさんは、91歳で世界記録を樹立できる秘訣を聞かれ、走り続けることと答えています。今も若い人たちに混ざって練習をし、忙しい日々を送っています。70歳になったから、80、90歳になったからと言って、自転車をやめる必要はありません。

年齢を重ねても精力的に活動を続けることが重要だと指摘しています。彼のご両親も同じでした。彼の父親は93歳まで働き、97歳で亡くなりました。母親は105歳まで長生きしたそうです。カールさんは、自転車だけでなく、今度は再びバグパイプを始めようかと考えているそうです。

年齢を重ねても活動を続けること、また、新しいことを始めること、新しいスキルを習得することも、若さの秘訣と言えるでしょう。これは、認知機能の改善にも寄与すると、さまざまな研究でも指摘されていることです。カールさんは、ずっと自転車に乗り続けると話しています。

Carl GroveCarl Grove

何歳までと区切る意味はありません。年をとっても働いたり、自転車に乗ったりするには、身体が健康で、脳の認知機能もしっかりしていなければなりません。逆に年齢を重ねても、精力的に活動を続けることが、身体や脳の健康につながるのでしょう。実際、リタイアした途端、急に老ける人は少なくありません。

年金受給年齢が上がると、損をした気がする人は多いと思います。しかし、それだけ寿命が伸びた時代に生きているのも確かです。むしろ仕事をリタイアせず、ほかの活動も含めて続けていくことが健康を保つ秘訣なのでしょう。そして、それが幸せに過ごせるということなのかも知れません。




◇ ◇ ◇

今年も日本人のノーベル賞受賞が決まりました。吉野彰さん、おめでとうございます。笑顔が素敵な方ですね。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんばんは.これは本当に賞賛ものですね.

自転車はランニングなどと違って身体に無理な衝撃がかからないこと,しかも効率良く広範囲を移動できることなどが,生涯スポーツとして特に優れている所以なのでしょうね.

私も悲しいかな,20〜30年前と同じ気で走行距離を伸ばそうとしても基礎体力や反射神経の衰えは争えない年代になりましたが,事故防止,特に加害者には絶対ならないように最大限に注意しつつ,今後も末永くサイクリングは続けたいと思っております.
Posted by マイロネフ at October 12, 2019 19:38
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
誰でも世界記録が出せるものではないですが、誰でも乗って楽しめますし、それが健康・長寿につながるなら、こんなにいい話はありません。
一度やめてしまうと、なかなか復帰する気にならなかったり、身体能力も衰えて、以前と同じように走れなかったりするでしょうから、続けるのが大事かも知れませんね。
Posted by cycleroad at October 12, 2019 22:20
 
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