スポーツバイクにサイクルコンピュータなどを取り付けている人なら、最高速や平均時速、走行距離などが出るので、それらの数字を意識することもあると思います。なにも自転車に限ったことではなく、運動をすれば自分のパフォーマンスが気になるのは自然かも知れません。
同じコースを、より短い時間で走破できれば、脚力や心肺機能などが向上しているとわかります。1日に走れる距離が増えれば、持久力がアップしたと実感するかも知れません。レースなどに出る人でなくても、自分の以前の記録と比べてしまうことはあると思います。
日本記録、世界記録などに挑戦するような人でなくても、自分のパフォーマンスが向上していれば、悪い気分はしません。特にトレーニングしているわけでなくても、平均時速、一日の走行距離などの数字をチェックしている人は多いかも知れません。

レースに出るような脚力の自信はなくても、ある程度の年齢になって元気であれば、マスターズの大会などに出て、その年代の記録を狙える可能性があります。これまでにも、高齢でも元気に自転車に乗り、素晴らしい記録を出している人を取り上げてきました。
いくつになっても、少しでも速くと考えてしまうのは、人間の性のようなものなのかも知れません。しかし、今イギリスで話題になっているサイクリストの記録は、スピードではありません。御年82歳の、Russ Mantle さんが達成したのは速さではなく、累積距離です。

彼の約68年間の自転車生活のなかで走った走行距離が、100万マイル、なんと160万キロに達したと言うのです。もちろんイギリス初ですし、少なくとも知られている中では世界一ではないでしょうか。平均すると、これまで年間14,700キロ走ってきたことになります。
地球を40周する距離であり、月までだったら2往復してお釣りが来ます。実際に走ることを考えると、想像を絶する長さです。旅行で航空会社のマイルを貯めている人だって、なかなか100万マイルはたまらないでしょう。その距離を、飛行機ではなく自分の足だけで走破したのです。

実は、Russ Mantle さん、イギリスの由緒あるサイクリングクラブである、
30万マイルクラブのメンバーです。1962年に設立されたクラブで、30万マイル、約48万3千キロを走破した人でないと正式なメンバーとして登録されません。このクラブに所属していたため、正確な走行距離の記録が残っています。
現在のメンバーで、
30万マイル以上走っている人は58人、当然 Mantle さんはこのクラブの累積距離記録で一番、初めて100万マイルに達したメンバーです。ちなみに2位は79万マイルです。すでに亡くなった会員の記録も残っていますが、
最長でも91万マイルです。

イギリスサイクリング協会は、多くの人を自転車に乗せる活動をしており、通常1人のサイクリストの功績を祝うようなことはしていませんが、特別に賞を授与しました。協会の責任者は、これは素晴らしいを超えて、考えられないような記録だと最大級の賛辞を贈っています。
若い頃はタイムトライアルレースに出場して優勝した経歴もありますが、多くは学校や職場に通ったり、日常生活で乗った距離の蓄積です。もちろん最初から記録を狙って乗ってきたわけではありません。ただ自転車に乗るのが好きで、乗り続けてきただけです。
40万マイル乗った時に、100万マイルも可能だとは思ったそうです。しかし、目指すにはあまりに遠くて、実感のない目標だったでしょう。いつか届くかも知れないとは思ったものの、日々好きな自転車に乗ってきただけだと言います。そして、100万マイルも通過点に過ぎないと話しています。
過去には事故に遭ったこともありました。単に脚力や体力だけの問題ではありません。元気に長生きしなければ、到達は不可能です。長生きしたから到達できたのか、到達するくらい乗ってきたから健康で長生きできたのかはともかく、誰でも乗っていれば、いずれ達成できるというような記録でないことは確かです。
目指したわけではなく、サイクリングが好きで楽しんできたら、自然に距離が積みあがったと語っています。ただ、あらためて100万マイルという数字を見ると圧倒されると感想を述べています。でも、これで終わりではなく、100歳になっても走っていると思うとも話しています。

何らかの数字を意識するサイクリストは多いと思いますが、スピードや一日の走行距離をチェックする人でも、累積距離を意識する人は、あまりいないのではないでしょうか。一年間に乗った走行距離の更新を目指す人でも、累積160万キロは、あまりに遠くて実感のわかない数値でしょう。
もし、累積距離を記録しているなら、年間走行距離と照らして、何歳くらいで160万キロに到達するか計算してみてはいかがでしょう。生涯の到達距離は、日々のモチベーションには向かないとは思いますが、果たして自分は一生のうちに、どれくらい自転車に乗れるのか考えてみるのも一興です。
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明日は天皇陛下の即位を祝うパレード、最近は沿道だけでなく上空のドローンもあるので警備も大変でしょうね。
Posted by cycleroad at 13:00│
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