駅前とか大型の商業施設などの駐輪場に、有料の機械式の駐輪ラックが設置されているのを見かけるようになりました。ラックにとめると前輪がロックされ、帰りに料金精算機にラックのナンバーを入力し、料金を入れるとロック解除するようになっているタイプが多いのではないでしょうか。
駅前の月極めの有料駐輪場は別として、例えば、とめて最初の何時間かは無料、以降は1時間いくらといった料金設定になっていることが多いと思います。ただスペースがあって白線がひいてあるだけの駐輪場から、わざわざ機械式にするのには、相応の理由があるでしょう。
ラックに駐輪するスタイルなら、整列して駐輪してもらえ、係員による整理は不要になります。コインパーキングのような方式なので、有料にしても、料金係の人手は必要ありません。有料ならば、勝手に個人の駐輪スペースのようにして、長時間放置されることも防げるでしょう。
ただ、こうした機械式駐輪機、必ずしも利用するお客にとって、使い勝手がいいとは限りません。間隔が狭くて、隣のママチャリのカゴが邪魔だったり、車種によってはとめられない自転車もあるでしょう。盗難防止のためにロックをしようにも、ロックがしにくかったりします。

とめると前輪がロックされると言っても、それが盗難防止にはならない駐輪機が多いのではないでしょうか。少し前に京都市で、有料の機械式駐輪ラックにとめたのに、放置自転車として行政に撤去移送されてしまうケースが続出しているというニュースを取り上げました。
駐輪場が満車だと、他人の自転車を勝手に外して移動させ、駐輪ラックを横取りする人がいるのです。入庫1時間内なら無料ですし、ラックの番号を入力さえすれば第三者でもロックは開けられます。ラック外にどかされた自転車は、放置自転車として市に撤去されてしまうわけです。
前輪がロックされるので盗難防止になっているような気がしてしまう人もあると思いますが、そうではありません。ロックされたつもりで、自前のロックをしていないと、無料の時間はもちろん、駐輪料金さえ支払えば簡単に自転車を盗めてしまうわけです。
盗難防止のためのワイヤー錠やU字錠がかけにくいことも含め、駐輪する人のことが考えられているとは言えません。つまり、設置者の都合にそって設計されているわけです。駐輪機メーカーにしてみれば、設置してくれる自治体や企業がお客様ですから、当然かも知れません。



しかし、エストニア発の新興企業、“
Bikeep”の機械式駐輪機は違います。盗難防止機能が重視されています。バーを下してセットするとフレームと前輪がロックされます。後輪をロックするには、別途自分のロックが必要ですが、トップチューブのないママチャリタイプのフレームでもロック可能です。
持ち歩く必要のない駐輪機ですから、頑丈なバーでロックされます。窃盗犯がバーを破壊するなどして盗もうとすると、大音量のサイレンが鳴るようになっています。さらに各駐輪ステーションごとに監視カメラを装備、インターネットに接続して監視されており、異常が検知されると、設置施設や警備会社などに通報されます。



バーを開け閉めするためのキーは、駐輪機の設置団体・企業の選択により、各種カード、バーコード、スマホのアプリなどから選べます。地元の交通系カードと一緒にしたり、その施設の入館カード、会員証等と共用にも出来るので、利用者に複数のカードを持たせる必要はありません。
窃盗に使われた道具とか、破壊された事例などを研究して設計された素材や構造も含め、何重ものセキュリティーにより盗難防止に注力しています。すでに欧州や北米13か国、1100か所以上に設置され、100万人のユーザーに使われていますが、今まで一度もラックから自転車が盗まれたことはないと言います。



自転車泥棒にしてみれば、わざわざ頑丈でセキュリティーの厳重な施設から盗む必要はないでしょう。ほかにも無防備な駐輪場や路上駐輪はたくさんあるはずです。そう考えれば、この駐輪機から盗まないのは当然かも知れませんが、それでも一台も無いというのは注目すべき実績だと思います。
ネット接続されていることで、利用時間などの稼働データをマーケティング分析などにも利用できます。駐輪機自体はモジュール式なので、設置場所に合わせてレイアウトしたり増減させることも可能です。電源が必要ですが、ソーラーパネルから供給したり、電動アシスト自転車用に充電装置を設置することも出来ます



設置主に対し、利用者の満足、安心感こそが駐輪機に必要だと積極的に提案しています。もちろん、費用はかかりますが、単なる駐輪ラックでなく、利用者に満足してもらえる駐輪ラックを設置することが、その施設の利用拡大にもつながるとアピールしているのです。企業のイメージカラーにあわせるなどのアレンジも可能です。
これは、サイクリストにとっては魅力的な駐輪機と言えるのではないでしょうか。もし、普通の駐輪機の施設と、この“Bikeep”の駐輪機を備えた施設があったら、多少遠くなっても、後者の施設を選ぶというサイクリストも少なくないかも知れません。
(こちらの動画を見ると、ひと目の多いところでも、それだけでは自転車は盗まれてしまうことがわかる。)
日本では、格安のママチャリが市場を席捲していることもあってか、どうせ盗まれないだろうと駐輪してカギをかけない人が、かなりの割合に上るとされています。しかし、被害額は高くないとしても、盗まれれば不便ですし、帰りのアシが奪われて困ったりもするでしょう。盗まれたくない人は多いはずです。
最近は、スポーツバイクに乗る人も増えましたし、相対的に高価な電動アシスト自転車に乗る人も多くなりました。自転車盗は、青少年の非行の入り口になり、増加を放置すると街の治安が悪化し、凶悪な犯罪が増えることも立証されています。盗難防止効果の高い駐輪機のニーズはあるはずです。
駐輪機を設置する企業、団体には、なるべくこうした駐輪機を設置してほしいと思います。利用者に喜ばれて選ばれるだけでなく、犯罪防止という企業の姿勢は市民から評価されるでしょう。残念ながら、“Bikeep”、日本には未上陸ですが、日本の駐輪機メーカーも、盗難防止機能の高い製品を開発してほしいものです。
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報道を見る限り、桜を見る会は公費の乱用、前夜祭は政治資金法違反に思えます。どう説明するのでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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