November 30, 2019

次世代の通信がもたらす恩恵

次世代通信が始まろうとしています。


いわゆる5Gです。海外では一部サービスが試験的に始まっていますし、対応する端末も登場してきています。近い将来、5Gの高速・大容量で多接続、低遅延の無線通信が一般的になり、さまざまな分野で便利になったり、これまで出来なかったようなことが実現すると言われています。

巷では、5Gになると通信速度が4Gの20倍とか100倍とか言われています。差がありますが、理論値の単純計算で20倍程度、実質的には約100倍ということのようです。いずれにせよ、飛躍的に速くなり、2時間の映画をわずか3秒でダウンロード出来るようになるなどとアナウンスされています。

携帯電話の通信速度は、アナログ無線の1Gの時代から、それこそ幾何級数的な進化をとげています。ただし、速い速いと言われて誤解しがちですが、電波の速度が速くなったわけではありません。電波は秒速30万Kmという速さで、当たり前ですが、これは昔も今も変わりません。

5Gになると、通信速度は最大で10Gbpsとか、実効速度で800Mbpsとか言われていますが、単位は、bps(bits per second)です。これは1秒間に送ることの出来るデータの量の単位です。(Gbpsは、bpsの10の9乗倍、Mbpsは、bpsの10の6乗倍。)

This image is in the public domain. Photo by 多摩に暇人,under the GNU Free License.

電波に載せて送ることの出来るデータの量が増えているわけで、電波の速度そのものは同じです。同じ量のデータを送る場合、bpsの値が大きいほうが短い時間で送れます。小さいと時間がかかるので、例えば画像の表示や動画の再生に待たされたりします。これが速さと表現されているわけです。

ですから、10Gbpsなどと表されるのはデータ転送レートであり、単位時間あたり多くのデータが送れるようになったというのが正確な表現ということになります。単位時間にデータを送れる量が増えることで、動画がスムーズに再生されるなど、速くなったと感じるわけです。

よく、スマホの契約によっては、月末近くに速度が遅くなる場合がありますが、あれは転送レートが低く制限されることでデータの受信に時間がかかり、遅くなったように感じるわけです。転送レートが変わらなくても、基地局の混雑やサーバーの応答時間などによって遅延が生じ、遅くなったように感じることもあります。

スマホで扱う動画などはデータ量が多いため、この転送レートが問題になります。逆に言うと、テキストなどの量の少ないデータであれば、転送レートが小さくても時間はかからず問題ありません。動画などでなければ4Gや、それ以前の転送レートであっても、遅くて使い物にならないことはありません。

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いわゆる速度の速さをアピールするのが次世代通信の5Gならば、遅い回線として電波を使おうというのが、LPWAです。こちらは速度が遅い、つまり転送レートは低いですが、データの種類によっては十分です。大きなデータを送る用途でなければ問題なく使えます。

その一方でメリットもあります。遅いですが、そのぶん消費電力も低くなります。たくさんの機器を接続出来たり、広い範囲をカバーすることが出来たりします。通信料金も安くなります。これを、モノのインターネット、IoTに使おうというわけです。すでに日本の通信会社も提供を始めています。

格段に低い消費電力や、安い通信料金は、モノのインターネットには最適です。高画質の動画をリアルタイムにモニターするような用途には向きませんが、機械がその稼働状態をサーバーとやり取りするような用途なら十分です。これも、5Gとは違う形のこれからの通信として使われ始めています。

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IoT機器、インターネットとつながるモノは増えており、2022年までに、この LPWAによってネットワーク接続されるデバイスは50億台に達すると見られています。いろいろなモノがつながっていくと目されますが、その中には自転車も考えられます。

自転車がIoT化する恩恵として考えられるのが、セキュリティ面です。自転車の状態を離れた場所で把握できれば、盗難に対処できます。また、盗まれた場合にも位置を調べることが可能になります。これまでの携帯電話回線を使う方法だと、それなりの回線料金がかかりました。

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しかし、IoT用のLPWAのような回線を使えば、わずかな料金しかかかりません。一般的には、こうした回線は、運用業者が何万とか何百万というような数の回線をまとめて契約することになるので、携帯電話のように、いちいち通信会社と契約したりする必要もなくなります。

このタイプの機器が、すでに開発されはじめています。“Sense AIR”は、LPWAのようなナローバンドのIoT回線(NB-IoT)を使うネットワーク機器です。自転車の正確な位置をリアルタイムに把握したり、盗難をアラートで知らせたり、衝突を検出して通報したり出来ます。

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電力消費も少なく、バッテリーの充電は3ヶ月間必要ありません。筐体もコンパクトです。設定や操作は手元のスマホのアプリで行えます。通信規格が違うので、今のところ、この“Sense AIR”は日本では使えませんが、このような機器は、今後日本でも登場してくるはずです。

See.Sense 社はイギリスのベルファストを拠点とするベンチャー企業で、以前にも他の商品で取り上げたことがありますが、ライトやバックランプなどの自転車アクセサリーを作っています。この“Sense AIR”は新商品として現在クラウドファンディングサイトで販売型の資金調達を行っています。

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1万8千ポンドの目標に対し、まだ15日間を残して既に5万7千ポンドを超えており、その人気の高さがうかがえます。ふだんは特に気にする必要もない、“AIR”のような存在でありながら、イザという時に通報してくれたり、場所を探せたりするのであれば、取り付けておいて損はないと考えるのでしょう。

5Gになって手元のスマホは速くなるかも知れませんが、当面、自転車向けに特に便利になるわけではありません。しかし、LPWAによるIoTは、自転車のセキュリティに寄与することになりそうです。こうした機器の普及や、それによる抑止効果も含め、盗難を心配しないで済む時代が来てほしいものです。




◇ ◇ ◇

明日から、ながら運転の罰則が強化されます。簡単に殺人者になりかねないという点を、よく考えるべきですね。

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