アメリカは感謝祭後のホリデーショッピングシーズンを迎え、
サイバーマンデーは過去最高の1兆円を超えるなど消費は堅調のようです。ブラックフライデーも伸びましたが5千億円強となっており、ネット通販の強さが目立っています。ショッピングモールの
実店舗の中には、お客を減らすところもあったようです。

消費者が実店舗に行かずに、ネット通販で買い物をすると、増えるのは配送のトラックの輸送量です。ニューヨークでも、たくさんのトラックが走り回っています。ネット通販が大きく伸びているのは、昨日今日の話ではなく、ニューヨークの道路の混雑に拍車をかけています。
もちろん、配送のトラックばかりがニューヨークのひどい渋滞の原因ではありません。しかし、
ニューヨーク市の運輸局は、少なくとも混雑の原因の一つである、配送のトラックを減らそうと、今週から
新しいパイロットプログラムを始めました。
ニューヨークでの配送に、電動アシスト式のカーゴバイクを使う実験です。当面6ヶ月の予定ですが、この実験にはアマゾン、UPS、DHLなどの大手配送業者が参加しています。アマゾンはネット通販会社ですが、自前の配送網を構築しており、配送トラックを走らせています。
大手物流業者だけでなく、すべての商業配送を行う会社に参加資格があります。配送で使われるカーゴバイクは、市内の自転車レーンを通行でき、特別に認められた荷下ろしゾーンに駐輪することが出来ます。幅の広い歩道や公園、その他のスペースがカーゴバイク専用の荷捌き場所として認められます。
配送トラックの違法駐車は常態化しています。他のクルマの邪魔となり、渋滞の一因となっているのは間違いありません。トラックから振り替えられた各カーゴバイクは、配送データを記録し当局に提出します。当局はこのプログラムよって、配送トラックのカーゴバイクへの置き換えの効果を測ろうというわけです。
ニューヨーク市内の荷物の配送量は増加の一途をたどっています。このままではさらに配送トラックの交通量が増えてしまいます。配送にトラック以外の手段を導入するのは、今でも混んでいるニューヨークの道路を、これ以上混雑させないためにも必要な取り組みです。
協力する配送業者にもメリットがあります。ネット通販の翌日や当日配送のニーズが増えている一方で、酷い渋滞により配送にかかる時間は伸びています。カーゴバイクで市内の自転車レーンや自転車道を使って渋滞を避ければ、トラックよりも早く配送できる可能性があります。
渋滞に加え、トラックは駐車場所を探すのが大変です。空きスペースを探して、周辺を何周も回ることも珍しくありません。カーゴバイクで専用の荷捌き場所が使えれば、駐車場所を探す時間が減ったり、トラックよりも配達先の近くにとめられたりするでしょう。

トラックだと大量の荷物を一度に運べますが、カーゴバイクは運べる量の点ではかないません。何度も配送することになり、効率が悪くなるような気もします。しかし、実際には配送トラックの荷台のアルミの箱の中に、荷物が満載されているとは限りません。
配送の場合、方面別、時間別などに分けられた荷物を載せるため、必ずしも満杯にして出発するわけではないのです。意外と少なかったりします。つまり、カーゴバイクで十分間に合う荷物量の場合も多いわけです。市内で、長距離を走るわけではないので、カーゴバイクで2回配送したほうが早い場合もあります。

電動アシスト付きですから坂だろうと平気ですし、小回りもきいて便利です。むしろカーゴバイクのほうが効率が良かったりするわけです。カーゴバイクならば、運転免許のない人でも雇えます。車両の価格やランニングコストの点でも大幅に有利です。パーキングメーター代を支払う必要もありません。
それだけではありません。トラックと違って温暖化ガスを排出しませんので、二酸化炭素排出量の削減に貢献します。交通安全の面でも、配送トラックは違法駐車や二重駐車が問題となっています。今年発生したサイクリストの死亡事故の半数がトラックとの事故です。交通事故の減少にも寄与すると期待されています。

アメリカのトランプ大統領は、パリ協定から離脱しましたが、州レベル、企業レベル、市民レベルでは温暖化ガス問題に対する意識は高まっています。とくに民主党が強い西海岸や東海岸では、企業の姿勢が厳しく問われる傾向があり、企業はイメージ悪化を恐れ、こうした取り組みを重視しています。
カーゴバイクによる配送については、このブログでも何回か取り上げましたが、ヨーロッパの都市では既に始まっています。例えばUPSは、2012年にドイツのハンブルグで導入して以降、すでに30以上の都市で運用しています。この波がニューヨークにも及んできたと言えるでしょう。

アマゾンは、このパイロットプログラムに90台のカーゴバイクを投入し、すでに稼働を始めました。今後数か月の間に、さらに数倍に増やす予定です。これは、同社のCO2排出量を2040年までにゼロにする取り組みの一環でもあるとしています。
一部のトラックドライバーや運送会社からは反対する声もありますが、全体としては関係者の支持を得ており、市の当局者は自信を見せています。全米で、同じような課題に悩む都市は多く、このニューヨークのプログラムは注目を集めると見られています。
実は、これまでにもUPSなどは、アメリカのいくつかの都市でカーゴバイク配送をテストしています。都市によっても環境や条件は違うわけですが、必ずしも行政の協力が得られたわけではないと言います。このニューヨークのような取り組みが、他の都市の行政当局へも波及していくことを期待しています。
今後もネット通販の取扱高は増える一方でしょう。実店舗は閉まっていくかも知れませんが、配送のニーズは減らないと思われます。ニューヨークと言えば、これまでイエローキャブと自転車メッセンジャーが名物でした。今後は、それに配送業者の電動アシスト・カーゴバイクも加わることになりそうです。
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長年アフガニスタンを支援していた中村哲さん、こんな立派な方が現地の凶弾に倒れる理不尽に胸が痛みます。
Posted by cycleroad at 13:00│
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