自転車にとってのリスクは、交通事故などの路上のリスクだけではなく、空気にもあるわけです。北京などでは、霞んだ街の中を、マスクをつけて自転車に乗っている人が少なくありません。なかには、本格的な防塵マスクをしている人もいます。
ところで、昨日までアメリカ・ラスベガスでは、CES2020が開催されていました。コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、以前は家電の見本市でしたが、近年はコンピューターや電子機器からクルマ、住宅まで、広く最先端のテクノロジーが披露される一大イベントです。
5GやIoT、MaaSや近未来のモビリティ、ドローンに空飛ぶクルマ、VR、AR、MR、ロボットにAIなど、注目されるテクノロジーが目白押しです。ただ、披露されるのは最先端のデジタル技術だけではありません。中には、ちょっと変わったユニークなものも発表されています。
その一つ、“
AO air atmos”、顔に装着するエアフィルターです。バッテリーで駆動し、空気中の汚染物質を除去するパーソナルでポータブルな空気清浄機、ハイテクなフェイスウェアです。電動のファンがフィルターを通して、毎分約240リットルの空気をきれいにします。
不織布やガーゼで出来た通常のマスクと違って、呼吸に負荷をかけません。空気の流れを制御するので、メガネが曇ることもありません。重さは、約290グラム、単体で動作しますが、スマホのアプリで、バッテリーとフィルターの状態や呼吸情報などを表示させることも出来ます。フィルターは使い捨てです。
このパーソナル空気清浄機で、空気中のPM2.5の98%以上を除去すると言います。市販の普通のマスクに比べ、汚染物質を除去する能力は約50倍に達すると、AO air 社は主張しています。一回の充電で約5時間持ちます。350ドルで販売される予定です。
ウェアラブルコンピュータや、VRゴーグル、脳波を読み取るヘッドセットなど、続々と登場する頭部に取り付けるハイテク機器と比べると、ややアナログではありますが、なかなか面白い発想です。いろいろな要因で空気に悩む人が世界中にいるわけですから、なるほど、こういうアイテムがあってもいいはずです。
以前、テレビのニュースで、防塵マスクとホースで結んだ室内用の空気清浄機を背中に担いで歩く北京の男性を見たことがあります。肺疾患を患い、やむを得ずとのことでした。これがあれば、そうした苦労は不要になります。小型でスマートでスタイリッシュですし、口元が透明で、マスクのような威圧感もありません。
これはユニークなアイディア、目の付け所です。ありそうでなかった製品と言えるでしょう。パッと見ると、シュールな感じがあって笑ってしまう人もいるでしょうし、特殊な環境ならともかく、日常でわざわざこんなものを使う人がいるのかと訝る人もあるかも知れません。
しかし、冒頭でも述べたように、大気汚染が酷いために自転車に乗るのを敬遠している人がいます。もちろん、自転車専用ではありませんから、徒歩での外出に使うことも出来ます。排気ガスだけでなく、大規模な森林火災や黄砂などで、呼吸器系疾患の危険に晒されている人の助けとなるでしょう。
中国やインド、メキシコなどの新興国からヨーロッパまで、大気汚染に悩んでいる人は、世界中で相当な数に上ると思われます。今までは、不織布やガーゼなどで出来たマスクをするか、防塵マスクをするくらいしか防御手段はありませんでしたが、もしかしたら、これは一定程度、普及するかも知れません。
日本でも、大気汚染対策ではないとしても、マスクをする人は大勢います。インフルエンザの予防や、とくに花粉症対策として使う人が出てくるかも知れません。この“atmos”は、ウイルスやバクテリアからの保護が目的ではありませんが、使い捨てのマスクよりも効果は高そうに見えます。
自転車に乗る時も、普通のマスクやフェイスカバーと違って息苦しくないなどのメリットがあれば、採用する人が出てきても不思議ではありません。まだ見慣れないため、大げさに見えてしまうのは否定しませんが、案外近い将来、これが自転車に乗る時の装備の選択肢の一つになる可能性はありそうです。
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台湾総統選の投票が始まりました。香港の様子を見れば自ずと投票先は決まってくる気はしますが、果たして。
Posted by cycleroad at 13:00│
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