いわゆるモンスーン気候のため、一年の平均で1700ミリほどの降水量があり、これは世界平均の約2倍です。多いだけでなく季節ごとの変動が大きく、梅雨時や台風シーズンなど、時期的・場所的に集中して降ります。これが近年増えている水害が起きる背景にあります。
北日本や、日本海側では冬場の降雪量が多いということでもあります。雪解けで、農作物を育てる豊かな恵みになる一方で、冬の積雪シーズンの間は、日常的に雪かきが必要となり、人々が生活する上での負担となったり、自治体には除雪費用のかかる厄介な存在でもあります。
さて、冬の間は寒いので、自転車はお休みというサイクリストもあるでしょう。まして積雪の多い地域では、乗りたくても乗れません。一部、雪でもマウンテンバイクなどを楽しむ人達もいますが、多くの人は封印でしょう。滑るので、冬季の日常移動には役に立ちません。
ところが近年、その常識は覆りつつあります。冬でも滑らない自転車に乗り、楽しんでいる人たちがいます。ファットバイクと呼ばれる、極太のタイヤをつけた自転車です。普通のマウンテンバイクの2倍以上の極太のタイヤ、ファットタイヤが装着できるフレームを備えた自転車です。
ファットバイクが一般の市場に流通するようになったのは、2004年頃と言いますから、まだ新しいカテゴリーです。それ以前にも、普通サイズのタイヤにチェーンなどを装着して乗っていたツワモノがいないわけではありませんが、太いタイヤになったことで、雪上での安定性や駆動性能は格段に向上しました。
一般的に、ウィンタースポーツと言えば、スキーやスノーボード、スケートなどですが、世界では、ファットバイクを新しいウィンタースポーツとして楽しむ人が増えてきました。通勤など移動に使う人もいますが、雪上でのファットバイクが、新しい自転車スポーツのカテゴリーとなりつつあります。
まだまだ歴史は浅く、世界でも積雪地域は限られるので、一部ではありますが、徐々に広がりを見せつつあるようです。アメリカ・コロラド州のクレステットビュッテでは先週、“
BOREALIS FAT BIKE WORLD CHAMPIONSHIPS”という雪上でのファットバイクの大会が開かれました。
世界選手権とはなっていますが、タイトルを争うプロのレーサーから、ファットバイクを始めたばかりの初心者まで、冬の自転車を楽しもうという人達が集まるイベントです。レースはもちろんですが、グループライドや、ファットバイクを使ったポロ、パーティーやデモまで盛りだくさんの内容となっています。
圧雪状態になった道路だけではありません。オフロードの雪上も走行します。起伏もありますし、雪のクロスカントリーや雪上のダウンヒルのようなコースも走っています。動画や写真を見ると、どの人も楽しそうな笑顔をしているのが印象的です。そう、雪上の自転車は楽しいのです。
ウィンタースポーツをやらない人は、わざわざ寒い中、滑って不安定な雪の上で自転車に乗って、何が楽しいのかと訝るかも知れません。しかし、スキーやスノーボードをやる人なら、おそらく、雪上でのファットバイクの楽しさが想像つくのではないでしょうか。
確かに、雪上走行は、ファットバイクでも不安定な場合はあります。平地や除雪された圧雪路ならともかく、そうでない場所では少なからず、横滑りしたりもします。転んだりもするでしょう。でも深雪ならば痛くありませんし、転んでも楽しいのです。
私もスキーやスノーボードをします。かなり経験があるので、特にスキーでは転ぶことはありませんが、転んでも楽しいという感覚は、よくわかります。スキーやスノーボードをする人なら、わかると思いますが、ファットバイクも、まさに雪上スポーツの楽しさなのです。
もちろん、スキー等をしに行って、吹雪いたりすれば寒いですが、それでも滑ります。わざわざ雪のない地域から、スキーやスノーボードをしに行くわけです。それだけの理由があります。スキー等をやらない人には、想像しにくいかも知れませんが、雪上のスポーツには楽しさ、大きな魅力があるのです。
今までの常識では、雪の中で自転車に乗るなんて考えられないかも知れません。しかし、世界的にはファットバイクの認知度は高まりつつあります。まだ全体からみれば少数ですが、雪上での自転車を楽しむ人が増えています。日本でも一般的になっていく可能性は十分にあるでしょう。
最近は、冬のインバウンドの訪問先として、北海道のニセコや長野の白馬などが大人気となっています。パウダースノーが楽しめるため、わざわざスキーやスノーボードをやりに海外から来るのです。スキー場は外国人であふれ、夜は街に繰り出し、地域経済も潤っています。周辺の地価が高騰するほどです。
メジャーなスキー場がない積雪地域では、うらやましい限りでしょうが、スキーだけがウィンタースポーツではありません。もしかしたら、冬の期間の雪上のファットバイクは、新しいウィンタースポーツとして、インバウンドの集客の起爆剤になるかも知れません。
スキー場を建設するような大規模な投資は必要ありません。冬用のブロックタイヤやスパイクタイヤを装着したファットバイクさえ用意すればいいのですから、試してみて損はないでしょう。雪はありますし、走る場所はいくらでも用意できるでしょう。これは、降雪地域の町おこしになる可能性があります。
スキーやスノーボードは、滑れるようになるまで一定の練習が必要です。しかし、ファットバイクでの雪上走行なら、自転車に乗れさえすれば、すぐに楽しめます。その点で、スキーやスノーボードをしない外国人、雪を見たことが無く、雪に親しんでみたい南国の外国人にもアピールするに違いありません。
日本人は当たり前なので感じませんが、日本の変化に富んだ自然は外国人にとっては大きな魅力となっていると言います。わざわざ日本へサイクリングしに来る外国人もいます。そう考えれば、冬場の雪上の自転車走行が、新しい日本でのアクティビティとして、集客の目玉となっても不思議ではありません。
冬の降雪にはうんざりという雪国の人は多いと思います。しかし、雪が降る、しかも降雪量が多いという特徴を活かさない手はありません。さらに名が知られれば、夏場のクロスカントリーライドなどにも広がるかも知れません。有名スキー場のない降雪地域の関係者の方、ファットバイクで売り出してみてはいかがでしょうか。
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新型コロナウイルスの感染者が急増、関係者は封じ込めに必死です。増加の勢いが衰えるといいのですが..。
Posted by cycleroad at 13:00│
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