何がいいということではなく、人によって、時と場合によっても変わってくるでしょう。前回は新たな自転車用製品を開発・提案する人たちについて取り上げました。スティーブジョブズばりに言えば、「消費者は自分が何を欲しいかわかっていない」と、今までにないコンセプトを提案する人たちがいます。
既存の物を改良したり、新たな価値を加えたりする余地なら、まだまだありそうですが、今までにない製品・アイディアというのは、なかなか難しいでしょう。一般的に何かの商品を使い、ある程度満足していれば、どうしても保守的になり、それを変えさせるのは簡単ではありません。
でも、消費者に新しいスタイルを提案して、大きく市場をシフトさせたケースはこれまでにもあります。例えば、有名なのは、アメリカのフォードモーターの創始者、ヘンリーフォードの例でしょう。彼はクルマを発明したわけではありませんが、それまでにない量産方法を編み出しました。
それにより大幅に価格を下げて、一般大衆が買えるT型フォードを発売、最終的には世界で累計1,500万台以上も生産されるという空前のヒットとなり、世界的な道路交通の革命につながりました。いわゆるモータリゼーションを起こして、クルマを広く普及させるきっかけをつくったわけです。
当時は、馬や馬車が一般的な道路交通手段でした。すでにクルマは販売されていましたが、一部富裕層だけの高級品、趣味のものでした。ヘンリーフォードは、「もし一般の消費者に欲しいものを聞いたならば、『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」と語っています。
今となっては、クルマと馬車の違いは歴然で、比べものにならないように思いますが、当時の一般の消費者は、特にクルマを欲しいとは思っていませんでした。今のように道路やクルマの為のインフラは整っておらず不便で、クルマ自体も今とは違って扱いやすいものではなく、価格以外にもいろいろと障壁が多かったからです。
しかし、一般大衆でも買いやすいT型フォードという魅力的な商品を開発し、新しい移動スタイルを提案したことが、大きな需要の喚起につながりました。T型フォードは、馬や馬車のほうがいいと思う保守的な人が大多数だったのを、大きく変える結果となったわけです。
もちろん、世界の工業史に残るT型フォードと、単なる自転車用品とは比べるべくもありません。ただ、新たなスタイルを打ち出さなければ、ニーズは旧来のものの延長にとどまります。新しい提案がヒット商品を生むかも知れないという点では同じでしょう。今回も、最近の自転車用品を取り上げみたいと思います。
こちらは、TOPEAK 社の“
PAKGO XS”という自転車を収納するケースです。輪行袋を使って自転車を運ぶ人は多いと思いますが、こうしたケースを使う人は多くないでしょう。輪行袋をもっと丈夫にして欲しいとか、こうした工夫があれば、と考える人はいても、ケースにしたいと思う人は多くないと思います。
当然ながら、輪行してそのまま駅から走り出す用途には向きませんが、旅先の宿泊先などから走り出すなら、選択肢になるでしょう。宅配便で荷物として送ってしまえば、自分で運ぶ面倒もありません。ケースは衝撃にも強いため、宅配の荷物で送るのにも安心感があります。
航空機での旅行などでも便利でしょう。空港への移動にはキャスターがついていてラクです。全てのパーツが収納でき、組み立て・調整の際のワークスタンドとしても使えます。輪行袋での輪行とは別の、宅配便や電車、航空機、クルマなどと組み合わせた、新しい自転車旅行のスタイルが広がるかも知れません。
こちらは、“
SQUIDD Lock”、さまざまな盗難防止機能を搭載したスマートロック、ワイヤー錠です。各種センサーが搭載されており、ワイヤーが切断されたり、動かされたり、温度に大きな変化があるなど異常を検知すると、耳を切り裂くようなアラームを発したり、持ち主へ通報したりします。
GPSによる追跡機能やコミュニティベースで連携するアプリへ通報するなど、いろいろな盗難防止手段が搭載されています。コンパクトですし、通常のワイヤー錠と使い方はあまり変わりません。今使っているワイヤー錠と置き換えるだけで、比較的導入しやすいのではないかと思います。
この製品に限らず、最近は同様の盗難防止ロックがいろいろと出てきています。ただ問題は、一度盗まれて痛い思いをしないと、なかなか従来型のロックから移行しないことでしょう。多くの人がスマートロック類を使うようになれば、窃盗を諦めさせる効果も期待できるわけで、爆発的な普及を促すような製品の登場が待たれます。
こちらは、PedalCell 社の“
CadenceX”です。自転車の車輪の回転を使って発電するダイナモです。これまで、ダイナモによるライトは、ペダルが重くなると敬遠され、バッテリー式やハブダイナモ、無接触型のダイナモなど、さまざまな方法が提案されてきました。
その流れに逆行するようにも思えますが、最近はライトだけでなく、乗りながら、さまざまな電子機器を使うニーズが増えています。それらにまとめて電力を供給しようという製品です。それぞれの機器のバッテリー切れを心配するより、この製品のパワーハブにつなげばいいという考え方です。
上り坂では負荷を減らしたり、ブレーキをかけるとエンジンブレーキのように抵抗を増やすなど、センサーにより細かい制御が行われるぶん、従来のダイナモより進化しています。どんな自転車にも装着できますし、ライトだけではなく、電力需要の増加を考えると、こういう方向もアリなのかも知れません。
こちらは、一つの製品に限りませんが、スマホや、GoPro などのカメラを頭部に取り付けるヘッドストラップ製品です。走行中の動画撮影をして楽しんだり、ツーリングの走行動画をネットにアップする人達は増えています。ただ、多くはハンドルやフレームに固定するスタイルだと思います。
それを頭やヘルメットなどに取り付けることで、いわば目線カメラのように記録出来るアクセサリーです。これによって、同じ方向でなく、景色を追って好きな方向を撮影できます。さらに、イザという時にはドライブレコーダーのように使うことも可能でしょう。即座に当該車両のほうを撮影できます。
振り返ってナンバーを撮影するなど、臨機応変に使えるでしょう。最近は、スマホのカメラ性能も上がっています。ハンドルなどに固定したカメラでの撮影が悪いわけではありませんが、まさに見たものを記録する、目線の方向の撮影というのも楽しみ方でしょう。
こちらは、“
BikerTop”、自転車に乗っている時に、雨に濡れないようにするためのポップアップ式のシールドカバーです。普段はハンドルの前に収納されており、雨が降り出したら、すぐに取り出して屋根のようになるのが便利です。もちろん前方は透明なビニール素材なので視界は確保されます。
これまでにもシールドやシェル、フェアリングなど、雨を防ぐ方法はいろいろと考えられてきました。これは使う時だけ簡単にセットアップできるのが特徴です。使ってみないことには、実用性のほどはわかりませんが、少なくとも傘を片手でさすより安定して走行できそうです。
ただ、風にあおられたりしそうですし、横なぐりの雨には弱そうです。大坂でよく見る、ママチャリに傘を固定するグッズのほうが手軽という意見もありそうです。結局のところ、雨ガッパやポンチョを着るというところに落ち着くのかも知れませんが、自転車始まって以来のこの弱点に取り組む人は絶えないようです。
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人々の自転車の使い方、楽しみ方を変えるのは簡単ではないでしょう。黙っていても、新しい素材や技術が出てくれば改良が施されていくと思いますが、それに飽き足らず、今までにないアイディア、新しいスタイルを提案する人達がいます。進化のない商品もあるわけで、消費者にとってもありがたいことなのかも知れません。
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日本感染症学会が新型コロナウイルスは既に国内で散発的流行が起きていてもおかしくないと発表、心配です。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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