March 23, 2020

禁止から推奨と悲観に期待も

新型コロナの感染は拡大する一方です。


世界の感染者数は32万を超え、死者数は1万4千を上回りました。その影響は広い範囲に及んでおり、市民生活は大きな制約を受け、経済へのダメージへも日ごとに高まっています。特に欧米での感染拡大が顕著で、各国は対策に追われています。

世界の状況については、テレビや新聞でも連日大きく報道されています。ここで繰り返しても仕方がないので、自転車ブログとしては、メディアではあまり大きく取り上げられない、自転車に関連した部分に注目して、各国のニュースを見てみたいと思います。

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日本でも、大規模イベントの自粛や学校の休校、テレワークや時差通勤から公園での花見宴会の禁止に至るまで、国民に対していろいろな協力要請がなされています。一方、欧米諸国では、より踏み込んだ屋内退避(shelter-in-place)や、封鎖(lockdown)といった強い施策がとられ始めています。


感染拡大の著しいイタリア、フランスではサイクリング禁止です。全てのサイクリストに対し、全てのアウトドアライディングを停止し、自転車による移動を避けるよう通告しています。フランスは屋外でジョギングなどをする場合は、自宅から半径2キロの範囲に制限すると発表しています。

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スペインでは、自転車に乗っていると罰金がとられます。最大で3千ユーロと言いますから、安い金額ではありません。一部食料や医薬品の購入のための移動だと許される地区もあるようですが、悪質であれば懲役1年の刑に処せられると言いますから、厳しい制限です。


一方、イギリスではコロナによる封鎖の中でも、必要な移動や運動不足の解消、息抜きに自転車が有効だという意見が少なくないようです。イギリスの大手一般紙、ガーディアンも同様の主張を展開しています。コロナのリスクを下げながら、健康上のその他のリスクを軽減できるという立場です。

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イギリスのウェールズ経済にとって、マウンテンバイクは有力な観光資源となっています。そのウェールズのサイクリング産業が大きな被害を受けています。MTBのライディングが出来るパークの閉鎖など影響を受けているからです。ウェールズ政府は、観光セクターの雇用の喪失を懸念しています。



ドイツの自転車市場は、eバイクに対する高い需要もあり、昨年は普通の自転車と併せて431万台と市場は大きく成長しました。しかし、今年は一転して暗雲が立ち込めています。多くの部品が中国から輸入されているため、中国の工場の生産停止、いわゆるサプライチェーンの分断が起きているのです。スイスも同様です。

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一方、室内用のエクササイズ・バイクは、人々の室内退避で需要の拡大が見込まれています。屋外での運動が出来ず、トレーニングジムなどへ行くわけにもいかない状態が続くと見込まれるからです。世界的な株式市場の急落にもかかわらず、Peloton 社の株価は上昇しています。Wahoo 社は、Kickr Bike を発売しました。


野外活動の自粛やサプライチェーンの分断での販売減少が懸念される一方で、今回のコロナ禍が、新たな自転車ブームの始まりになると考えている人もいます。ビジネスが閉鎖され、多くの人が自宅で仕事をし、自宅学習する中で、必要な移動や運動の需要が自転車に向かうと見ているのです。

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アメリカ・ミズーリ州では、レストランやバーの閉鎖が決まりました。飲食店はクローズ状態がつづけば死活問題です。そこで多くのレストランが、食事メニューや食品の配達を検討しています。地元では、自転車によるフードデリバリーサービスが急拡大しています。


当然ながら、同じアメリカでも州や都市によって、温度差があります。オンタリオ州の地方紙は、外出自粛中の健康維持に自転車に乗ることを勧めています。過去数年にわたって進めてきた自転車レーンのネットワーク、素晴らしいサイクリングロードがあり、これを利用しない手はないとしています。

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ニューヨークでは、自転車の利用が拡大しています。コロナウイルスへの曝露が最小限で安全な移動手段と見られています。運動のニーズもあり、シェア自転車の利用者は今月50万人も増えています。そのうちの多くの人が当面、地下鉄やバスでの移動に戻るつもりはないと答えています。



ニューヨークでは、電動アシストでないeバイクは自転車として認められておらず、取り締まられてきました。しかし、食料品のデリバリーが、これらの違法自転車に依存している面があるため、デブラシオ市長は、コロナ対策の一つとして取締りを一時停止しました。配達員たちがコロナとの闘いの最前線にいると認めたからです。

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サンフランシスコ市長は、周囲の人との社会的な距離を確保するようにし、熱があったり感染の可能性がある場合は、家にいるように求めています。一方で、自転車での移動が相対的にリスクが低いこと、自転車店などは、このコロナ禍でも必要なインフラだと認めています。


メキシコでは、自転車をコロナウィルスと闘う手段として捉えています。社会的な距離を確保しにくい公共交通機関に代わって、自転車での移動を促すため、メキシコシティでは既存の自転車レーンに加えて、新規や、臨時の自転車レーンを設置する計画が進められています。

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コロンビアでも、市民に手洗いの励行と、なるべく家にいることを要請しています。しかし、どうしても外出する必要がある場合、公共交通機関でなく自転車の利用を検討するよう勧めています。そのため、首都ボゴタでは先週、新しく117キロの臨時自転車レーンを開設しています。

◇ ◇ ◇

世界でコロナ危機が広がる中、国によって対策や、その考え方は異なっています。深刻になりつつありますが、爆発的な感染が広がる国と、まだそれほどではない国の危機感に温度差があるのも確かでしょう。それぞれの地域の事情も違うため、自転車についても、禁止から推奨、悲観から期待まで差が大きくなっています。

WHOのテドロス事務局長は、若い世代に対して警告を発しています。外出自粛要請にもかかわらず、比較的重症化率が低いこともあってか、集団で集まって飲食して騒いだりするグループが出ている地域もあるようです。そうした地域では、全面的な封鎖や外出禁止にせざるを得ないのも理解できます。

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自転車が相対的にリスクが低いことを理解していたとしても、自転車による外出を例外として認めてしまうと、結果として人が集まり、集団を形成してしまうことも考えられます。おとなしく、一人で自転車に乗り、運動不足解消に努める人ばかりとは限りません。

イタリア北部のような感染拡大、棺も運び出せないような死者の急増の中で、都市を封鎖し外出を厳しく制限するのを行き過ぎとは、誰にも言えないでしょう。それを思えば、日本のように、乗ろうと思えばまだ平気で自転車に乗っていられることに感謝すべきなのかも知れません。

ただ、欧米各国の厳しい対策と比較して、諸外国から見ると日本は危機感が無さすぎるとの声も多いようです。自粛とは言いながら、一部では人が集まっていますし、密集や密閉、密接を避けながらも、普通に出歩いたり、食事をしたり、移動したりしています。

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果たして、これが吉と出るのか凶と出るのかはわかりません。特に都市部で、少しずつリンクの追えない感染者が増えており、専門家会議はオーバーシュートがいつ起きても不思議でないと指摘しています。一方で、いつまで続くのか先が見えず、自粛疲れが広がりつつあるとも指摘されています。

経済活動との兼ね合いもあるため、どの程度の対策が正しいのかは難しいところです。しかし、日本でも、もしオーバーシュートが起きてしまえば、都市の封鎖や、より厳しい自宅待機を余儀なくされるでしょう。そうならないことを祈りつつ、一人ひとりが出来る範囲で感染の拡大の阻止に努めたいものです。




◇ ◇ ◇

とうとう五輪は延期の方向のようです。一方、感染ゼロが4日続く武漢は、上からの厳命で新たな感染を隠しているとの疑惑も出ています。イタリアの惨状も伝えられますし、まだまだ先の見えない状況は続いていきそうです。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんにちは.

イタリアは本当に悲惨な状況のようですね.かの国にはCOLNAGOをはじめ著名な古豪ブランドがありますが,その母国でさえ自転車に自由に乗ることができないというと,影響が気懸かりです.

Posted by マイロネフ at March 23, 2020 15:09
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ジロデイタリアも延期ですし、自宅待機を余儀なくされているサイクリストも多いでしょうね。
あの状況では仕方ないのでしょうが、日本もそうならないよう祈りたいものです。
Posted by cycleroad at March 26, 2020 22:39
 
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