いろいろあると思いますが、我々の生活がいかに感染症に対して脆弱だったか、自宅に閉じこもるしかなく、いかに100年前と変わっていないか、必要な物資の生産をいかに他国に依存していたか、過剰な恐怖や防衛本能が、いかに簡単に差別や他者への攻撃を招くか、などでしょうか。
本来あるべき住環境に気づかされた人も多いはずです。コロナによるロックダウンでクルマが走っていないため、喧騒がなく、街でも鳥のさえずりが聞こえます。排気ガスの嫌な臭いも、粉塵によるスモッグもなく、スピードを上げて走り抜けるクルマに安全を脅かされることもありません。
スモッグが酷かった都市でも空の青さが戻り、本来は、都市でもこういう住環境なのだと、あらためて実感した人も多かったに違いありません。以前のように渋滞と騒音、大気汚染に交通事故のある環境には戻りたくないと思った人も少なくないことでしょう。
前回も取り上げたように、通勤や必要な移動、そして運動のために世界中で自転車に乗る人が急増しています。外出自粛でクルマの交通量は激減していることを背景に、欧米をはじめとする多くの都市ではクルマを通行止めにして歩行者や自転車に開放したり、即席の自転車レーンを設置するなどしています。
注目すべきは、欧米を中心に、こうした臨時の自転車レーンを恒久化する動きが相次いでいることです。クルマ用の車線を減らしたり、一方通行にしたり、パーキングメーターを撤去するなどして、自転車レーンを増やしています。恒久化、すなわちロックダウンが解除されても、元のような道路には戻らないということです。
欧米の政府や自治体は、このロックダウンを契機に、クルマから自転車へのシフトを進める意向を示しています。温暖化ガスの削減だけではなく、交通事故を減らし、特にヨーロッパで懸案だった酷い大気汚染を減らし、肺疾患等による死者数を減らし、人々の健康増進を進めるためです。
これまでにも、特にヨーロッパでは、都市の中心部へのクルマの流入を抑制しようとしてきましたが、そう簡単には変えられませんでした。このコロナによるロックダウンは、長年の課題解決を進める好機と見ているのでしょう。今なら、自転車利用のニーズも急増しているため、理解が得られやすいということもあります。
各国の市民の意識調査でも、ロックダウン後の公共交通機関の利用を懸念する一方で、元のクルマの渋滞、大気汚染、騒音、交通事故の街へは戻りたくないと考える人が多いことが明らかになっています。多くの人が、クルマの利用を抑制しようとする政府や自治体の姿勢を支持しています。
下の動画を見ても、昔の渋滞の街がいかに酷かったかわかります。そして、せいぜい平均して1.2人しか乗っていない自家用車によって都市の道路が占有されることが、いかに非効率で無駄で、莫大な経済損失を生み、市民に悪い住環境を強いていたか、あらためて気づかされた面があるに違いありません。
もちろんロックダウン解除後に、クルマで通勤したい、移動したいという人もあるでしょう。しかし、各都市で歩行者や自転車用のスペースを拡大し、クルマ用の車線を減らしていけば、クルマはさらに渋滞して時間がかかるなど、これまで以上に不便になるでしょう。
このコロナを機に、都市の中心部でのクルマ優先の道路構造の変化が加速していくかも知れません。テレワークで、そもそも通勤の不要を実感した人もいたでしょうし、通販や宅配で、クルマで買いに行く必要を感じなくなった人もいるでしょう。クルマのニーズは、少なくとも都市部では減っていく可能性があります。
もしかしたら、クルマの未来像も、コロナ前とコロナ後では違ってくるかも知れません。クルマは自動運転になっていくとされていましたが、今まで考えられていたより、クルマそのもののニーズが減っていくならば、自動運転のニーズも減ることになるでしょう。
たしかに自動運転はラクでしょうし、事故は減るかも知れません。しかし、依然として渋滞は減らないはずです。いくらAIで最適な経路を選んだとしても、クルマが都市部へ集まる物理的な交通の集中は避けようがありません。都市部でクルマを使わなくなれば、クルマの開発方針も変わっていく可能性がありそうです。
クルマのライドシェアも今回、軒並み利用者を減らしています。物流や業務用車両は別として、少なくとも都市部では、クルマの利用が減る傾向が見られ始めています。もちろん、だからと言って、全てが自転車にシフトしていくなどと言うつもりはありません。
ただ、自転車だと疲れるという人には、電動アシスト自転車があります。さらに電動だけで動くe‐bikeもあります。全天候型のベロモービルという選択肢もあるでしょう。こうした自転車と同じような大きさの二輪や三輪、省スペース型のモビリティが都市での移動を担うようになってもおかしくありません。
現在でも、電動だけのe‐bikeと普通の自転車が同じレーンを走っている都市はあります。同じような速度であれば、問題にならないでしょう。こうした小型モビリティのほうがスペース効率的に、都市部に向いているのは間違いないわけで、都市部では、クルマからクリーンで小さなモビリティへシフトしていく可能性があります。
そう考えると、今回のコロナによるロックダウンは、道路やクルマの未来像も含め、都市の景色を変えていくかも知れません。もともとヨーロッパでは、都市部へのクルマの流入を抑制する方向にあったわけで、それをコロナが加速させていると言ってもいいでしょう。
いずれにせよ、今回、人々はクルマのあまり走っていない街を見ることとなりました。渋滞、大気汚染、騒音、事故といったクルマのデメリットや、都市部では合理的でないこと、住環境を悪化させていることを改めて実感したでしょう。私たちは、都市でのクルマ優先の道路整備の間違いを、あらためて気づかされたのかも知れません。
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PCR検査を増やすと言って3か月近く、一向に増えないことを始め、日本のコロナ対策への国民の支持は他国と比べて著しく低くなっています。自粛要請に国民が協力したおかげで減少に転じましたが、政策には多くの疑問や不満があります。その上、検察庁法改正案をドサクサに紛れて成立させようとする姑息さ、安倍一強の傲慢さも見え隠れします。国民も不要不急の外出を控えているのですから、『不要不急』の法案成立こそ控えるべきでしょう。
Posted by cycleroad at 13:00│
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