世界各国がロックダウンからの出口を探し始めています。
依然として世界の感染者は増えているものの、急激な伸びがおさまってきた国も多く、徐々に経済活動を再開し始める国や地域が増えてきています。いつまでも人の移動を止めたままでは、国の経済がダメになってしまいます。感染予防との兼合いで難しい舵取りを余儀なくされていいます。
ロックダウン前とは、生活や行動も変わりました。人と距離をとるよう求められ、欧米でもマスクが義務付けられ、手指消毒が求められたりしています。そして、移動や運動で自転車を使う人が世界的に急増していることは、これまでも取り上げてきましたが、今回は最近の海外の自転車関連の報道を見てみたいと思います。
The Guardian 紙は、コロナによる、全米でのサイクリング人口の増加を「爆発」と表現しています。まさに爆発的ブームと言うべき状態になっており、自転車販売店では、これまでにない売り上げの伸びを経験しています。街のライダーの数も急増しており、週末に乗る人も増えています。
自転車シェアや通行量などのデータを見ても、自転車が公共交通機関に代わる移動手段となっていることが鮮明です。多くの人にとって、自転車がパンデミックからの自由の象徴となっていると報じています。今後も仕事に戻る人が増えると予想され、アメリカでは、サイクリングの記録的な夏になると予測されています。
こうした需要の爆発を受け、各地で即席の自転車レーンが作られています。ロックダウンのクルマの減少状態を利用してスペースが確保されたため、急きょ自転車に乗り始めた人にも乗りやすくなっています。自転車レーンを増加させ、それを恒久化する動きも続いています。
英国放送協会、BBC ニュースは、イギリスでもコロナウイルスが生活スタイルを変え、自転車ブームが始まっていると評しています。公共交通機関での感染への恐れが、cycle-to-work、自転車通勤を増やしています。移動と同時にエクササイズのニーズにより、イギリス全体の自転車販売を押し上げています。
このニーズを満たすため、自転車店は大忙しです。また、古い自転車をガレージから引っ張り出した人は、新しいタイヤやチェーンなどが必要だと気づくため、修理や整備の注文も殺到しています。政府も自転車通勤を奨励しており、通勤用自転車の購入の税額控除なども拡充しています。
やはりロックダウンの間に、多くの即席自転車レーンが設置されています。自転車レーンは、距離をとって安全にすれ違えるような幅が求められています。単にニーズの増加で自転車レーンが必要というだけでなく、ソーシャルディスタンスをとって自転車に乗れることが求められるようになっています。
ロンドン交通局は、ロックダウン後の自転車交通量は、10倍に増加すると予測しています。また別の予測では、自転車通勤する人口が最大500万人に達するとしています。これは、英国全国の推定3千2百万人の通勤者の17%という驚異的な数字です。約550万台の自転車が路上に出てくることになります。
感染予防のため、首相や各首長、政府機関が推奨しているためでもあるわけですが、一方で急激な自転車人口増加に対応するため、新しい自転車レーン、ルートの確保を迅速に計画さぜるを得ない状況に追い込まれています。レーンもある程度物理的距離がとれる必要があります。
公共交通機関の混雑を減らして、人々の移動を確保するため、各都市の中心部は、「完全に変容」させる必要があるとしています。ロンドン市長も、この爆発的な需要を満たすため、迅速に、戦略的なサイクリングネットワークを構築するとしており、短期的に街の道路の景色が大きく変わると見られます。
ロンドンでは、ヨーロッパでも最大の、クルマの通行禁止区域を定める計画を発表しました。もちろん、人々が、釈迦定期距離をとりながら自転車で通勤できるようにするためです。これは他のヨーロッパの都市にも広がっています。このロックダウンは、都市を自転車に優しくする一生に一度の機会だと評しています。
自転車販売が驚異的に伸びているというニュースは各地から伝えられています。もちろん、ばらつきはありますが、3桁%の伸びというのは珍しくありません。売ろうとする必要もなく、片っ端から売れていく状態と言います。ただ、在庫が払底し、仕入れが難しくなっています。
3月以降の驚異的な売り上げにより、現在は一部で売り切れ状態が続出、世界的に自転車は品薄状態です。場所によっては、自転車がマスクやトイレットペーパーと同じようになっています。長く業界にいる人も見たことが無いような売れ行きと、自転車不足に見舞われていると報じられています。
中国からのパーツ輸入が滞ったり、流通などの問題で商品が足りないため、中古のニーズも非常に高くなっています。今まで、5月は自転車が売れる月ではありませんでしたが、今年は全く形相が変わっています。もちろん、販売で感染リスクを上げるわけにはいかないため、予約販売など各ショップは工夫を求められています。
自転車不足で、家庭に眠る使っていない自転車を集める動きもあります。子供用の自転車も不足しており、あらゆる種類の自転車を引き取り、自転車を捨てたりスクラップしないよう呼びかけています。リサイクルや環境保護のためでもありますが、今年は力が入っています。
ベルギー、ブリュッセルでは、新しくパークアンドライドの推奨プランが始まりました。これは市内への入り口となる地区に無料の駐車スペースを提供し、そこから自転車で通勤してもらうものです。ロックダウン後の封鎖緩和に伴う措置です。クルマで移動する人による渋滞を避けるため、都市部へのクルマの流入を減らす必要があります。
似たような方策は、オーストラリアのシドニーでもとられています。昨日から緩やかにロックダウンの緩和を進める中で、即席の駐車場を設置し、そこから自転車レーンを使って自転車で移動してもらいます。ラッシュアワーの時間帯に、電車やバスを避けてもらうと同時に渋滞を避けるためです。
コロナのパンデミックで航空業界や観光業界などが苦しむ一方で、自転車業界は活況を呈しています。しかし、このコロナによる自転車販売の急増は、少し前まで誰も予想できなかったのは間違いありません。例えば、GMが2018年に投入した電動自転車は、このブームが僅かに間に合わず撤退しました。
一方で、パンデミックで街路が再編されたおかげで、Rad Power Bikes、Aventon Bikes といった米国の自転車会社はすべて、3桁%の売り上げの伸びを報告しています。オランダの電動自転車メーカー、VanMoof は記録的な販売増加を記録し、このブームを利用すべく1千350万ドルの新たな投資を決めています。
ちなみに、コロナとは関係ありませんが、ScienceDaily のニュースも報じられています。ワシントン大学の調査によると、自転車シェアシステムが街に導入されると、自転車通勤を20%増加させるとの結果が出ました。これは先週発表されたものですが、コロナ流行前の調査です。
◇ ◇ ◇
日本でも一部で、自転車に乗る人が増えたとの報道があります。しかしこのコロナのロックダウンを受けての欧米の自転車ブーム、自転車人口の急増は、桁違いの規模です。販売店から自転車が消え、都市の街路の景色が変わるほどの変化となっています。
欧米では、自転車が実用的な都市交通の手段として完全に認知されているのに対し、日本の自転車は歩道を走行し、せいぜい最寄り駅までの移動手段としてしか認識されていません。もちろん日本では鉄道網が発達していて、平均の通勤距離が長いため、自転車で代替しにくいという背景もあるでしょう。
ただ、職場までの直接の自転車通勤が十分可能な人でも、日本ではまだまだ電車を使っています。自転車を現実的な移動手段としては見ていません。一方、欧米ではロックダウンが自転車走行空間の充実をもたらしています。このコロナで日本と欧米の自転車環境の差はさらに開くことになりそうです。
◇ ◇ ◇
安倍政権の支持率が下がっています。検察庁法改正案の今国会での成立は見送られましたが、コロナ対策も遅かったりチグハグな対応が目立ち、黒川検事長の定年延長、もりかけ桜と理由はたくさんあるでしょう。内閣不支持の理由のトップがずっと、人柄が信頼できないというのも、安倍首相に対する不信感が現れている気がします。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)