June 09, 2020

あなたたちに売るのは止める

自転車の使い方はいろいろです。


移動や運動、配送や営業に使う人もあるでしょう。人それぞれですが、買った後にどう使おうが購入者の勝手です。他人からとやかく言われることではありません。当然ながら、買った自転車を製造するメーカーからも、文句を言われる筋合いはありません。

ところが、元は日本のブランドで、今はアメリカのメーカーである富士自転車、“Fuji Bikes”社が、自社の自転車のユーザーの使い方に対して文句をつけました。先週、自社の自転車が、抗議する市民たちに対し、自分たちの意図していない使われ方をされたのを見たからです。(↓ 下の動画参照。)



fujibikesそのユーザーとは、アメリカの警察です。警察向けに販売した自社のポリスバイクのことを指しています。どういう使われ方をしたかは、SNSにも動画が投稿されています。この出来事を受けて、Fuji Bikes 社は、真の変革に向けて努力するため、警察向け自転車の販売を停止しているとの声明を発表しています。

今、全米で広がる抗議デモでの出来事です。言うまでもなく、ミネソタ州ミネアポリスで先月25日、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を押さえつけられて死亡した事事件を契機に始まったデモです。今や、デモは全米どころかアメリカ以外の国にまで広がっています。

もちろん、Fuji Bikes 社は、デモをする市民に対して自社の自転車が武器のように使われたことを問題視する形で、人種差別や警察暴力を批判し、抗議しているわけです。今、著名人がSNSに黒一色の写真を上げての抗議が広がっていますが、黒字に白の画像の声明は、この問題への抗議の姿勢を表しています。



ジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を押さえつけられ、息が出来ないと命乞いする動画は、日本のテレビでも繰り返し流されました。武器も持たず、抵抗もしていないのに一方的に9分間近くも首を圧迫され、亡くなりました。誰が見ても酷い話です。

しかし、アメリカでこの種の事件は珍しいことではありません。警察が業務を遂行する上で、黒人の容疑者を結果として殺害する形になっても、ほとんど処分されることはありません。黒人が白人警察官に殺される事件は、これまでにも多数起きています。ロサンジェルス暴動などのきっかけにもなりました。

息ができない息ができない

アメリカの黒人は、警察の暴力に日常的にさらされています。それがが当たり前になっています。黒人の親は、自分の子供に対し、日常生活で気をつけなければいけないことを、きつく言いつけると言います。例えば、ポケットに手を入れてはいけない、といったことです。

日本人にはピンときませんが、銃を隠していると思われて、警察に即座に射殺されかねないのです。パーカーのフードをかぶるな、シャツを着ないで外出するな、買わないものを触るな、遅い時間に出歩かない、何かを買ってレシートやレジ袋なしに店を出てはいけない、など細かい注意がたくさんあります。

誰かと言い争うように見せてはいけない、身分証明書を持たずに外出してはいけない、タンクトップを着て運転してはいけない、大きな音楽をかけてクルマに乗るな、白人女性をじっと見てはいけない、といった注意が並びます。全て、トラブルになったり、警察に疑念を抱かれて、下手をするとその場で殺されかねないからです。

今回のような警察の黒人に対する暴力は常態化しており、その下で生きていかざるを得ないのが現状です。こうした事例が明るみになるたび、繰り返し抗議行動も起きまてきました。しかし、アメリカの人種差別の問題は根深いものがあり、警察暴力の問題も、根本的な解決にはほど遠い状況で今まで来ているのです。

黒人男性殺害抗議デモ黒人男性殺害抗議デモ

今回のデモは1960年代の公民権運動以来の規模となり、大きなうねりとなっています。いまだに収束するきざしは見えません。今回のコロナ禍でも、黒人の致死率は著しく高く、失業率も白人の何倍もあり、経済的に困窮している不満が背景にあると指摘されています。

しかし、それだけではないようです。これまでは黒人が抗議活動の中心でしたが、今回は当事者の黒人だけでなく、白人も多く参加しています。今までとは違い、これは黒人の問題ではなく、差別的な体制を作っている白人の問題であり、白人が解決しなければならないとの論調が目立っています。

企業も次々と声を上げています。ターゲット、ノードストローム、リーバイス、LVMH、H&M、ギャップ、フェイスブック、といった日本人にもお馴染みの著名企業も含め、多くの企業がこの問題に対する立場を表明しています。Fuji Bikes 社は、そのうちの一つに過ぎません。




このデモを米軍を使って抑えつけようとしたトランプ大統領への反感もあるでしょう。Twitter 社は、大統領のツイートに注釈をつけて問題視しました。しかし、メディアは中立であるべきとした、Facebook 社の方に批難が殺到し、同社は撤回して謝罪し、この運動に加わることを表明しています。

NFL(米ナショナル・フットボール・リーグ)のコミッショナーは、これまで人種差別や警察暴力に抗議する選手たちを支持しなかったことを謝罪しました。「かつて私たちがNFL選手の言葉を聞かなかったのは間違っていた。我々は、全ての人が発言し平和的に抗議することを応援します」と表明しています。

“Black Lives Matter”(黒人の命も大切だ)が、人種を問わず、個人だけでなく法人や団体にまで広がり、大きなうねりとなっているのが、これまでとは違うと言えるでしょう。そして、これは黒人だけでなく自分たちの問題であり、中立の立場にいたり、傍観していてはいけないとの考え方が広がっています。

黒人男性殺害抗議デモ黒人男性殺害抗議デモ

公民権運動の指導者、キング牧師は、いくつも言葉を残しています。例えば次のようなものがあります。


In the end, we will remember not the words of our enemies, but the silence of our friends.
(結局、我々は敵の言葉ではなく友人の沈黙を覚えているものなのだ。)

The ultimate measure of a man is not where he stands in moments of comfort and convenience, but where he stands at times of challenge and controversy.
(人の真価がわかるのは喜びに包まれている瞬間ではなく、試練や論争に立ち向かうときに示す態度である。)

Our lives begin to end the day we decide to become silent about things that matter.
(問題になっていることに沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める。)

Nothing in all the world is more dangerous than sincere ignorance and conscientious stupidity.
(この世で本当の無知と良心的な愚かさほど危険なものはない。)

The ultimate tragedy is not the oppression and cruelty by the bad people but the silence over that by the good people.
(最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。)


まさに、これらの牧師の言葉を実践するかのような、「傍観をやめ、変革を。」というメッセージに共感する人々、企業や団体が立ち上がっているのでしょう。それが、これまでの多くの抗議活動とは違い、公民権運動以来という大きなムーブメントになっている要因のように思えます。

営利企業が自社の製品の顧客に対し、その使い方に文句をつけ、販売を停止するというのは、普通にはなかなか有り得ないことであり、ある意味、勇気のある行動でしょう。しかし、そのような行動をとらせるくらい、この問題は今までとは違う広がりを見せているような気がします。











◇ ◇ ◇

将棋の藤井聡太七段が、自粛で危ぶまれた最年少タイトル挑戦者記録を更新し、棋聖戦の第一局も勝ちました。相手の渡辺明3冠には悪いですが、更にあと2勝しての最年少タイトル獲得の記録更新も期待してしまいますね。

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