サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
July 03, 2020
道路のあり方を見直す機会に
アメリカで感染が再拡大しています。
コロナの感染者と死者数がともに断トツの世界最多となっているアメリカですが、感染の中心だった東部が落ち着いてきたのに対し、南部や西部の州で感染者が急増し始めています。経済活動の再開に積極的だった州を中心に感染拡大が広がる形で、関係者は危機感を表明しています。
ロサンジェルスでは今週に入って1日の新規感染者が過去最多を記録しており、レストランの店内での飲食が再び禁止されました。比較的落ち着いているニューヨーク市でも、来週に予定していた飲食店の、屋内での営業再開を延期することが決まっています。
一日に5万人という日本とはケタ違いの新規感染者数ですが、街には人出が戻ってきています。マスクをつけていない人も多いようです。感染拡大が心配される状況ですが、規制を強めると経済への影響も無視出来ません。難しい舵取りが求められています。
飲食店にとって営業禁止は死活問題です。従業員の雇用も維持できません。すでにロックダウンで大きなダメージも受けています。ここで注目すべきは、屋内での飲食禁止という措置です。つまり、屋外でなら営業することが出来るという、いわば公の抜け道が示されているようなものです。
ただ、最初からテラス席があるような店は限られます。そこで多くの飲食店では、店の前にテーブルやイスを出して営業することになるでしょう。当然、店の前の歩道や、場合によっては車道まではみ出します。公共の場所を不法に占拠して営業する形ですが、背に腹は代えられません。
街に人出がないならば、屋内も屋外も関係ありませんが、そうではありません。屋外だけでも営業できれば大きく違うでしょう。屋外ならば感染を防げるわけではありませんが、屋内と比べれば風通しがよく、相対的にリスクは下がります。お客にとってもリスクが低く感じるぶん、利用しやすくなるに違いありません。
ちなみに、中国でも今般のコロナ禍の経済への打撃は大きく、雇用も厳しいと言われています。市民の警戒もまだ強い部分がありますが、都市部では、屋外で飲食させる露店が急増しています。飲食の屋台に加え、日用品から怪しげなブランド品まで扱う露店も急増しています。
中国でも不法占拠です。これまで、こうした違法な営業は厳しく取り締まられ、当局は強制的に撤去してきました。しかし、今般のコロナからの経済活動再開局面においては、その感染リスクの相対的な低さから、露店は市民の支持を集めており、その経済効果が注目されています。
中国では、国営企業はともかく、中小の民間企業や個人事業主の苦境が鮮明です。こうした露店による商売は、少なくとも現状では、国の経済や雇用にとっても大きな役割を果たします。李克強首相は、「屋台が中国を救う」とまで言っています。
話をアメリカに戻しますが、飲食店のゲリラ的な屋外営業が広がっています。これによって、歩道が占拠されると、歩行者の通行が妨げられます。そこで車道、自転車レーンが占拠されるケースも広がっているようです。自転車利用者も増大する中、場合によっては危険な状況が生まれ、事故も起きています。
例えばニューヨークでは、市交通局もこのことを把握しています。不法占拠ですし、バスレーンや自転車レーンにはみ出せば危険なのも明らかです。しかし、交通局もレストラン経営者の苦境をよくわかっているため、なかなか強制的な取り締まりは躊躇されるというのが現状のようです。
このような状況もあって、新しい道路のあり方を模索する動きが出てきています。パンデミックによる都市のロックダウンを受け、公共交通機関のリスクを避け、運動も含めた人々の移動が自転車にシフトしていることは、これまでも再三取り上げてきました。世界的な規模で自転車の利用が拡大しています。
各地の自治体は、ロックダウンでクルマの通行量が激減したことを利用し、車道を転用する形で即席の自転車レーンを設置しました。これを恒久的な自転車レーンにしようという動きも広がっています。クルマ用の車線を削減し、自転車用や歩行者用を増やそうという方向です。
この背景には、都市への人口集中やクルマの台数増加で、都市の酷い渋滞が慢性化していることがあります。もはや都市でクルマを使うのは効率的ではなく、クルマの都市への流入を抑制すべきという考え方が広がっています。さらに、飲食店の屋外営業のニーズという新たな要素が出てきました。
全米都市交通局(NACTO)は、今般のコロナのパンデミックを受けて、街路を再設計し、新しい用途に適応させる必要があると表明しました。その
具体的な提言を発表
しています。これまでとは違う発想で、大胆かつ創造的で素早い対応が必要だと指摘しています。
道路は、クルマで移動するためだけが重要なのではなく、歩行者、自転車とのシェアを広げる必要があります。さらに、道路のスペースを道路としてだけでなく、商売やマーケットとして、ダイニングとして、子どもが遊ぶスペースとして、などの機能を持たせるという発想の転換が必要だと明言しています。
もちろん、バス停などの乗り換え、流通などの荷捌き、ゴミの収集・清掃などの機能も必要です。場合によっては、検査場にするような臨時の広場として使われるかも知れません。都市の道路の活用という点で、クルマや徒歩、自転車という種別でなく、もっと広範な考え方が必要となってきているわけです。
ニューヨークタイムズ
は、パンデミックで道路を通行するクルマの数が減って、空気がきれいになったことを指摘します。欧米から新興国まで多くの都市で、クルマから即席の自転車レーンに振り向けたことによる効果であり、これは戦後、見たことの無い変化で、気候変動対策にも示唆を与えるとしています。
一方、それにもかかわらず交通事故の死者数が必ずしも減っていないことを問題視しています。都市の交通を持続可能なものにするためにも、もっとクルマの速度を下げさせるべきだと言及しています。そのため、ストリートのデザインを見直べきだとしています。
これまでのような、クルマの効率的な移動という目的より、環境負荷の軽減や、事故死者の低減、人々の安全や暮らしやすさを重視する考え方です。速度を落とさせることは多方面に利益があり、クルマの交通量が減少している今こそチャンスだというわけです。
コロナによる死者数は50万を超えましたが、世界全体では交通事故で130万人が死亡しています。毎年130万人です。さらに大気汚染などの公害を原因とする死者が420万人も出ています。安全で、市民の健康を害さない道路にすることは重要であり急務なのです。
世界全体では新規の一日の感染者数が16万人を超え、感染拡大のペースが加速している状態です。アメリカでもコロナの感染の再拡大が懸念される状況ですが、一方で、道路のあり方を見直すなど、コロナショックからの回復や、コロナ後に向けた模索も始まっているようです。
◇ ◇ ◇
今月からレジ袋有料化が始まりました。これまでレジ袋は家庭のゴミ袋として使われる率が高く、マイバッグで運ぶと、新たにゴミ袋購入の必要が出てきます。相変わらず個々の品物のパッケージの多くにはビニール等が使われてますし、そもそもプラごみ全体に対する袋ゴミの割合は2%以下、プラスチックごみ削減になるのか疑問です。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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コロナ
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