August 20, 2020

オンデマンドのシェア自転車

世界でシェア自転車が広がっています。


シェアサイクルを導入する都市は、世界中で増えており、すでに千数百都市で稼働しています。これまでも増加傾向にありましたが、今回のコロナ禍で、さらに広がりを見せています。世界中で自転車に乗る人が急増し、シェア自転車の利用者も大きく増えているからです。

公共交通機関の利用が敬遠され、シェア自転車の利用者が増えるのは世界的傾向です。すでに導入済の都市では台数や拠点数を増やしたり、そうでない都市は、新たに運営を計画したり、導入予定を前倒しするといったニュースが、世界各地から届いています。コロナが追い風になっているのは間違いないでしょう。

ただ、事業としてのシェアサイクルは、必ずしも収益性が高いとは言えません。その都市で独占的にサービスを提供していても、赤字で事業者が撤退する事例があります。あまり高い料金では利用が伸びず、安くすると採算が厳しくなります。自治体などの補助に頼らざるを得ないケースも少なくないようです。

Bike-shareBike-share

難しい理由はいろいろあります。例えば、規模が小さくてエリアが限られると使い勝手が悪く、あまり利用者が増えません。貸出や返却の拠点数が少ないと不便ですが、その設置には費用がかかります。道路環境によっては、そのスペースがとれるとは限りません。

都市によっては、スマホを使ってドックレスと呼ばれる、貸出・返却ステーションを設置しない方式をとるところもあります。その場合、自転車の放置が歩行者の通行を妨害するなど、社会問題となることもあります。中国の都市で、たくさんの自転車が道端に積みあがったのは記憶に新しいところです。

中国では参入者が相次ぎ、過当競争となって倒産や廃業する業者が続出しました。大きな初期投資が必要ですが、低料金を競うような状態になれば、資金繰りに窮します。車体に広告を入れるなど、スポンサーがつけば心強いですが、継続的に確保できる都市は多くないようです。

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中国の参入企業は、利用者の走行記録をいわゆるビッグデータとして活用したり、現在地に合わせて最寄りの店の広告を配信するといった新しいビジネスの展開を構想していました。しかし、そのためには事実上の標準となる必要があり、激しいシェア争いとなったことも事業の厳しさを増したようです。

場所によっては、自転車が盗まれたり、不法投棄されたり、ぞんざいに扱われて破壊されるなど、メンテナンスや車体の補充にも費用がかかります。そして人の流れによって、自転車の配置が徐々に偏ってしまうため、需要のあるステーションに自転車がなくなってしまうのが構造的な問題です。

常に再配置する必要があるわけですが、その人件費もかさみます。この問題は、どこのシェア自転車事業者でも大きな悩みとなっているようです。自転車が自動運転になって、勝手に移動でもしてくれない限り、自転車の配置は偏り続けます。ちなみに自転車の自動運転のイメージは、下の動画のようになるでしょうか。



これは、グーグルが、2016年のエイプリルフールに投稿したウソの動画です。子どもだけで自動走行する様子が笑えます。こんな自動運転で無人走行する自転車が出来れば、自動で返却ステーションに帰ってくれるでしょう。ただ、それはナンセンスなので、エイプリルフールのネタになるわけです。

電動のEバイクなども進化しているので、動力的には可能かも知れません。しかし安全上、歩行者にぶつからないためのセンサーや、操舵装置なども搭載する必要があります。そうした機材は、それなりの大きさ、重量になるでしょうし、価格も高くなってしまいます。

もし無人走行が出来たとしても、止まれば倒れてしまいます。例えば自動で無人走行中に、歩行者に前に立たれてしまえば急停止せざるを得ず、転倒はさけられません。いったん倒れてしまえば、さすがに自律的に起き上がらせるのは困難でしょう。

無人でバランスをとる技術はあります。例えばジャイロ効果を使えば、グーグルの動画のように横から押しても倒れずに反発するような力が働きます。しかし、そうした機構を搭載すれば、さらに大きさや重量が増し、価格も高くなります。自転車の場合、ある意味クルマの自動運転より実現が困難な面があります。

私も自転車の自動運転なんてナンセンス、意味がないと思っていました。自動運転にして、人間を乗せるなら、クルマのサイズになるでしょう。自転車での実現は困難ですし、わざわざ挑戦する意味も乏しいと思っていました。しかし、マサチューセッツ工科大学の研究者は、違ったようです。( ↓ 下の動画参照。)



キャンパー角をつけたような後輪がミソです。人が乗って走行する時は、後輪がダブルですが普通に走行できます。しかし、人が乗らない場合は、後輪が2つに分かれ、角度がつきます。アクチュエータによって動くようになっています。これで走行すれば、止まっても転倒することはありません。

常に3輪ならば転倒もしないわけですが、それだと2輪の普通の自転車のようには使えません。単にトライクを採用するだけでは工夫もありません。無人で移動させる時だけ3輪にするところに意味があります。言われてみれば簡単な話ですが、なかなかこういう発想は出てこないでしょう。

MIT Autonomous Bicycle

これならば、自動運転、無人走行の実現の可能性も出てきそうです。シェア自転車に採用すれば、どこで乗り捨ててても、自動で返却ステーションへ帰ってくれるでしょう。スマホのアプリで呼び出せば、任意の場所へ無人走行して配車させることも可能になります。

今まで、シェア自転車が便利に利用されるためには、貸出・返却用のステーションをたくさん配置する必要がありました。自転車を返してから歩く距離が長いと不便だからです。人気のシェアサイクルは、1ブロックごと、街角のあちこちに、多数のステーションが配置されています。

MIT Autonomous Bicycle

しかし、この自動運転が実現すれば、その必要はありません。まとめて集配所を用意すればすみます。道路沿いでなくても、設置しやすい場所に駐輪場を設置し、そこから配車・帰車させることが可能になります。さらに、リアルタイムで利用者の多い地域へ移動するように指示を出せば、自転車の偏在も解消出来ることになるでしょう。

ちなみに、今のところ報告されていませんが、シェア自転車の利用が、接触による感染の機会になりうるとの見方があります。防止には、ハンドルなど他人が触る場所の消毒が考えられますが、各々のステーションに消毒に行くのは困難です。集配所ならば、利用一回ごとに消毒することも可能になるでしょう。

MIT Autonomous Bicycle

実は、動画では自律走行ではなく、リモートコントロールで動かしています。次のステップとして、自立走行のためのセンサーなどのハードウェアとソフトウェアを搭載する予定です。この“MIT Autonomous Bicycle”は、オンデマンドのモビリティシステムを目指しています。

自動の配車や返却に加えて、自律的リバランス機能も視野に入れています。自転車が足りなくなった場所へ移動させるだけでなく、利用データや天候などの情報を元に、あらかじめAIがニーズを予測し、再配置しておくような形も考えられます。自転車の自動運転なんてナンセンスかと思えば、大真面目に開発されているのです。



シェア自転車の大きな課題である再配置も、技術で解決できる可能性があります。自転車が勝手にやって来て、勝手に帰っていくなんて、SF映画かエイプリルフールのネタだと思っていましたが、案外近い将来、次世代型シェア自転車として、どこかに登場することになるのかも知れません。




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藤井聡太棋聖が王位戦第4局に望んでいます。是非とも最年少2冠と八段昇段に向け、頑張ってほしいですね。

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