ごく自然な考え方と言えるでしょう。買い物に行ったり、どこかへ出かける時には自転車を使う人でも、歩行のトレーニングのためにウォーキングをするという人は多いかも知れません。ところが、必ずしもそれが正しいとは限らないことがわかってきました。
ハンボルト州立大学(アメリカ・カリフォルニア州)の研究です。“
Journal of Aging and Physical Activity”に発表されました。それによると、
自転車で運動する高齢者と、ウォーキングで運動する高齢者を比べた場合、加齢に伴う歩行効率はウォーキングのほうが低下するということがわかったのです。
歩行による代謝、つまり歩くために必要なエネルギー量は、加齢とともに大きくなります。代謝が高いと、そのぶん疲れてしまい、歩行が困難になります。歩行能力の低下です。高齢になると、若い時より疲れやすくなり、歩ける距離も短くなってしまうのは容易に想像がつきます。
ただ、同じ年齢でも軽快に歩く人、長い距離でも平気で歩ける人がいるのも確かです。ヒザが痛いとか、機能面などの要素は別として、歩くための代謝は人によって違い、この代謝コストが重要ということのようです。必要な代謝が低い、すなわち歩行効率の高い人のほうが、同じ年齢であっても、より元気に歩けるということでしょう。
この研究では、65歳以上の人で、週3回30分ずつ、自転車に乗る人と、同じ時間だけ歩く人とを比較しました。同じ時間ならにば、歩くより自転車のほうがラクに思えますが、運動として、歩行能力を低下させない効果は、9〜17%、自転車のほうが高かったのです。
一般的な健康な高齢者でも、若者に比べれば、歩行効率は15〜20%低いとされています。それより9〜17%高いということは、若者と比べても遜色のない歩行効率ということになります。運動能力が、ではありません。あくまで歩行による代謝コストが遜色ないということです。確かに、若者より元気に歩く高齢者はいます。
自転車をこぐ能力ではありません。自転車に乗っている人のほうが、歩いている人より、歩行効率の低下が小さかったのです。平たく言うならば、ふだん自転車に乗っている人のほうが、歩いても疲れにくいということになるでしょうか。歩く能力の維持についても、自転車のほうが優れていることになります。
自転車による運動の健康効果は、これまでにもいろいろ取り上げてきました。メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防だけでなく、心臓病や心筋梗塞などの心血管疾患、ガン、および全ての疾病死亡のリスクを低下させるという研究結果もあります。認知症予防に効くという研究もありました。
今回の研究結果は、歩行能力を低下させないためにも、歩行ではなく自転車のほうが効果があるということを示しています。意外な結果ですが、それならば、わざわざウォーキングでなく自転車の乗ってサイクリングにしようと思う人もあるのではないでしょうか。
なぜ、サイクリングがウォーキングより効果的なのかは、まだわかっていません。代謝効率は、酸素消費量と二酸化炭素の排出量を測定して調べるのですが、人体の細胞にあるミトコンドリアに何らかの関係があるのではないかと見られています。今後、水泳など他の運動との関係を研究する予定だそうです。
もちろん、この研究結果だけを見て、いつまでも歩けるようにしたいなら、ウォーキングをやめてサイクリングにしろ、などと言うつもりはありません。ウォーキングをするのが悪いとか、ウォーキングに意味がないと言っているわけでもありません。ウォーキングが好きな人も多いでしょう。
ただ、サイクリングでもいいならラクで楽しいけど、健康のためには歩かなきゃ、と黙々と歩いているように見える人もいます。もし、そのように思っている人がいたら、自転車でもいい、いや、むしろ自転車の方がいいみたいですよ、と言ってあげたい気はします。
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ここへ来てトランプ陣営が差をつめているようです。世界の行方をも左右するアメリカ大統領選、どうなりますか。
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Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(4)
cycleroadさん,こんばんは.
サイクリングよりウォーキングの方がウケているのは,日本では自転車をスポーツとして活用する習慣が歴史的に定着していないことにもよりますし,ウォーキングの方がサイクリングより金がかからず経済的であるという背景もあるのでしょう.
しかし,例えば現在使っている実用系の所謂ママチャリの類であっても,サドルの高さを少し上げるなど,ちょっとした工夫とこまめな点検整備で快適かつ効率的に走れて健康増進にも効果が増すことは明らかなのです.
それが全く知られもせず実践もされていないのは,ある意味で全く近代化の進まない自転車業界(特に小売りの現場)にも小さくない責任があると思います.
小売りも問題ですが、小中学校の自転車教育にも問題ありとにらんでいます。
私の子供の体験ですが、小学校中ほどからロードに乗っており、中学の通学用自転車も、同じようなサドル高さ(実際には、少し低く、片足の足裏半分をつけることが出来る程度)にしたところ、両足裏べったりまで、サドルを下げる指導がなされました。無条件にそのようにしないとNGとのこと。
停車時、サドルの前に降りる習慣がないと、確かに高いサドルは怖いですが、昔は自転車屋では、結構高い位置に設定されていたように思います(最も、そのころの軽快車(歩道走行を前提としていない)は、今のシティーサイクルとは大きく違い、そのままで車道を長距離まともに走れるフレーム寸法構成でしたが)。
ちなみに高校ではそのような制限はなく、正しい位置に調整したサドル(しかも、ロード用から少し幅の広いのを選んでつけた)で(娘ですが)通学途中、運動部の男子をごぼう抜きにしていたようです。
なお、通学用自転車に付属のシートポストでは、十分な高さまでサドルを上げることが出来ません。サイクル〇〇〇などで、(重いですが)マウンテンもどき用の、シティーサイクルに合う長いシートポストを売っているので、これに交換すると、無理なく高さを上げることが出来ます。
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
小売り業界の問題もあるのかも知れませんが、やはり自転車で健康増進というより、買い物などの実用で使うために買う人が多いのでしょうね。
お店にもよりますが、多少なりとも運動を意識している人であれば、より高額な自転車、例えばクロスバイクなどを勧めるのではないでしょうか。
やはり一般的には、同じ距離を行くのに、自転車のほうが圧倒的にラクなので、運動にはならないという先入観が邪魔しているのでしょう。
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
小学生の教師とは言っても、たまたま自転車が趣味でもない限り、自転車の正しい知識は全く無い人がほとんどなのでしょうね。
せっかくロードに乗ってるのに、両足べったりを指導するなんてナンセンスですが、小学校の先生としては、安全が第一、イザという時に足がつくほうがいいと考えるのでしょう。
適性なサドルの高さについて、広く知られていないこともあるでしょうが、日本ではママチャリで両足ベッタリが当たり前のようになっているため、業者もシートポストを長くしても無駄と考えるのでしょうか。
サドルが低いままペダリングするとヒザを痛めたりしますし、坂などがしんどくて、自転車そのものを嫌いになりかねません。正しい知識が広がるよう願いたいものです。
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