今年は敬老の日と秋分の日が並んで連休になりました。
通勤用レンタル自転車はロードバイク 競技団体が大幅値下げで貸し出し
新型コロナウイルスの感染予防で、通勤通学にレンタサイクルはいかが−。兵庫県川西市を拠点に自転車競技の普及などに取り組んでいる団体「BICYCLE PROJECT(バイシクル・プロジェクト)」が、感染防止の支援策として、本格的なスポーツ用自転車の一般貸し出しを始めた。感染リスクが怖い満員電車などを避け、屋外を走ることで不安を軽減。健康維持とともに、自転車の楽しさも広める狙いという。
同団体は自転車ロードレースチーム「コラッジョ川西サイクリングチーム」の運営や自転車関連イベントの企画などに取り組む。レンタサイクルは主にイベント向けだったが、今年は新型コロナの感染拡大の影響でほぼ中止や延期に。栂尾大知(とがおだいち)代表(35)は「自転車を寝かしていてももったいない。人のためになることに使いたい」として、3月から料金を大幅に値下げして一般貸し出しも始めた。
利用できるのは、スポーツ用自転車のトップブランド「MERIDA(メリダ)」のロードバイクやキッズバイクなど約30台。価格は車種と、7日間▽14日間▽30日間−の利用日数ごとに設定され、ヘルメットと鍵、発光ダイオード(LED)ライトの貸出料、保険加入料も含めて5千〜3万円。受け渡しは川西市内が基本だが、配達などの相談にも応じる。
栂尾代表は自転車ロードレースの元プロ選手。現役時代は川西市からアルバイト先の大阪・梅田まで自転車で通っていたという。「猪名川沿いなどを走れば、7、8割はサイクリングロードで梅田まで行ける。通勤ルートなども助言したい。家族でも気軽に乗ってみてほしい」と話している。申し込み、問い合わせは、同プロジェクトのホームページから。(2020/9/18 神戸新聞)
自転車通勤ブームの中、日常的に自転車に乗る人の約75%が事故に遭いそうになった経験あり!自転車保険に関する意識調査
通勤、通学で週3日以上自転車を利用する20代から40代の男女330名に、近年義務化が進んでいる「自転車保険」の意識調査を実施しました。
調査の結果、事故に遭いそうになった経験者の65.9%が、自転車保険への加入または加入したいと思っていることがわかり、「自転車保険」に高い注目が集まっていることがわかりました。
調査サマリー
自転車を便利な交通手段として使用している人が最多の55.5%
自分の住んでいる地域で自転車保険の義務化がされているか知らない人は15.8%
自転車の高頻度利用者の約75%の人が事故に遭いそうになった経験がある
自転車事故に遭いそうになった経験者は保険加入率が高い
1万円以上3万円未満の自転車に乗っている人が41.2%
高額な自転車に乗っている人ほど自転車保険に加入または加入意識が高い
調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:通勤、通学で週3日以上自転車を利用する全国にお住まいの20代-40代の男女
調査期間:2020年8月17日~8月18日
調査エリア:全国
サンプル数:330名
自転車で通勤、通学を始めたきっかけは「交通手段として便利なため」が最多の55.5%
自分が住んでいる地域の自転車保険の義務化を把握していない人は15.8%
約75%の人が自転車利用時に事故に遭いそうになった経験あり。自転車事故に遭いそうになった人は、保険加入もしくは加入検討への意向が高い傾向。
1万円以上3万円未満の自転車の利用者は41.2%。高額な自転車利用者ほど自転車保険への加入意識が高い。(以下略 ナビナビ保険)
自転車の危険運転がコロナ禍で増えている現実
新型コロナウイルスの流行で、感染リスクを減らすために自転車を使う動きが広がっている。危険な運転も多く、マナーの向上が急務だ。
自転車を共同で使うシェアサイクルの利用者は、都市部で急速に増えている。全国に1万2000台を配置する「ドコモ・バイクシェア」の4〜7月の新規登録者数は、緊急事態宣言前の3月に比べて2〜6割増加した。
通勤や買い物の際、人が密集する電車やバスを避けたいという心理からだろう。外出自粛で家にこもりがちになるため、体を動かしたい人もいたのではないか。
シェアサイクルを使える地域は広がっている。オフィス街では、出勤に使われた自転車が専用駐輪場からあふれ、歩行を妨げるケースもある。事業者は利用拡大に対応できる設備を整えてほしい。
懸念されるのは、自転車の利用増に伴い、危険な運転が目につくようになったことだ。警視庁によると、東京都内で3〜7月、自転車の交通違反で摘発した件数は前年同期の1・5倍にあたる1300件超に上った。信号無視が多かったという。
コロナ禍で食事の宅配需要が高まり、配達員が自転車で街中を走る光景も珍しくなくなった。宅配の自転車には、「スマートフォンを見ながら運転している」「歩行者にぶつかりそう」などの苦情が相次ぐ。配達中に高速道路に進入するトラブルや、歩行者とぶつかる事故も起きている。
スマホのアプリで、速すぎる移動を検知した場合は、運転者に警告を発する取り組みを始めた宅配事業者もある。交通安全講習の実施など、事故防止に向けた対策を強化しなければならない。
自転車事故は近年、全体としては減少傾向だが、対歩行者の事故はあまり減っていない。速度が出るスポーツタイプや車体が重い電動アシスト自転車が普及し、重大事故の危険性も高まっている。
自転車は道路交通法で軽車両に位置づけられ、守るべき交通ルールがある。決まりを無視した乱暴な運転は、重大な事故を引き起こしかねない危険な行為であることを、運転者は自覚すべきだ。
自転車を安全に運転できる道路環境の整備も大切になる。国や東京都は、新たに都内の幹線道路約100キロ区間に自転車専用レーンを整備する方針だ。自転車レーンに車を違法駐車し、通行を妨げているケースもある。警察には路上駐車の取り締まりも強化してもらいたい。(2020/09/13 東洋経済)
デリバリー需要高まる一方、自転車のトラブルも増…危険運転一斉取り締まり2時間で52件の指導・警告
「ウィズコロナ」として『宅配』の需要が高まる一方で、交通トラブルが増えています。宅配時の交通トラブルを減らそうと、自転車の危険運転の一斉取り締まりが行われました。
10日、愛知県警などによる自転車の危険運転の一斉取り締まりが名古屋市内で行われました。白バイにパトカー、警察官14人体制でピリピリモードです。
先月までの愛知県内の自転車の交通違反の検挙数は1356件。去年の同じ時期と比べて、2割以上増えています。デリバリー途中の自転車に声をかける警察官。耳に手をあてたりして何かを確認しています
「何を聞いていたんですか?」(記者)
「(配達員の人が)イヤホンを付けていたので…周囲の音が聞こえない状況で非常に危ない違反になりますので。ただ今の場合は片耳だけだしたので、指導・警告という形にさせていただきまして」(警察官)
一方、市内でデリバリー途中の別の男性は、配達中に「ヒヤリ」とした経験があるといいます。
「僕ら毎日走っていて、一般人そもそものマナーが悪いというか…交通ルールを知らない人が逆走してきて危ないなと。幅寄せしてくる車もいるので、そっちをどうにかしないと」(自転車でデリバリーをしていた男性)
「経済活動なのでデリバリー事業者は必要だと思いますが、交通ルールとマナーを守って活動していただきたいと思います」(愛知県警 東警察署 栃川和彦交通課長)
午前11時から午後1時まで行われた10日の一斉取り締まりで、摘発は1件でしたが、指導・警告は52件あったということです。(2020年9月10日 名古屋テレビ)
「北欧版ウーバー・イーツ」が東アジア初上陸の地に広島を選んだワケ
フィンランド発のフードデリバリーサービス「ウォルト(Wolt)」が広島に初上陸した。ジャーナリストの藤澤志穂子氏は「広島は企業のテストマーケティングによく用いられるが、ウォルトが初上陸した理由はそれだけではない」という――。
広島ではお馴染み「スカイブルー」のバックを背負った配達員
収束の見えないコロナ禍の巣ごもり需要で「ウーバー・イーツ(Uber Eats)」などのフードデリバリーが急速に広がっている。競争が激しくなる中、北欧フィンランド発祥の「ウォルト(Wolt)」が3月に日本に初上陸し、広島市からサービスを開始した。(以下略 2020/09/14 プレジデント)
料理宅配「フードパンダ」日本進出。日用品も25分で配達
フードデリバリーネットワークの「foodpanda(フードパンダ)」が日本に上陸。9月17日から神戸、横浜、名古屋で、10月1日から札幌、福岡、広島でサービスを開始する。アプリで料理や食料品を注文できるデリバリーサービスを展開する。
foodpandaは、ドイツ デリバリーヒーローの100%子会社で、アジア太平洋地域の12市場でデリバリーサービスを展開している。シンガポール、香港、タイ、マレーシア、パキスタン、台湾、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、ラオス、カンボジアに続き、日本が12番目の市場となる。(以下略 2020年9月17日 インプレス)
最新の自転車専用レーン走った 駐車車両に邪魔されず
コロナ禍で電車などが敬遠され、自転車人気が加速している。感染症・環境対策で優れるが、安全面では課題も多い。普及が進むシェアサイクルに乗り、最新の自転車専用道路を走った。
東京都文京区の東京ドームの北側を走る都道434号線の一部に、目新しい自転車専用レーンがこの春生まれた。車道の左側(歩道側)にあるレーンは青く塗られ、幅は約1.5メートルと十分な広さがある。ここまでは特に珍しさはない。目新しいのは、そのレーンの内側に駐停車枠があることだ。つまり、左側から(1)歩道(2)自転車レーン(3)駐停車枠(4)車道(2車線)と4つのレーンに分かれているのだ。
初めてシェアサイクルを借りて、最新レーンの走り心地を試した。内側に駐停車枠があるのは300メートル程度だが、その間は自転車レーンを塞(ふさ)いで止まっている車はない。目の前の視界は開け見通しがいい。駐車車両の左側を通る感覚は慣れないが、快適に走れる。強いて言えば、左ハンドルが多い外車の横を通るときにドアが急に開かないか緊張するのと、スピードの速い自転車が後ろを走っていると気を使う。ただ、総じて安全性は高いと思う。
そのまま、交通量の多い白山通りを走ってみた。自転車専用レーンはあるが、一部を除いて内側に駐停車枠はない。停車中のバスや駐車車両が数十メートルおきに自転車レーンを塞ぎ、追い越すたびに右後ろから迫る自動車との接触が気になる。後ろを振り返りながら専用レーンと車道を行き来するのは怖い。自動車側の目線でも、この自転車のジグザグ走行はとても怖い。
都道の最新レーンを自転車でよく通る女性(45)は「歩行者も駐車車両も気にせず走れるので安心感がある。ただ、短すぎるので増やしてほしい」と注文する。
都内を走って改めて気づくのは、自転車の種類と乗り手によって走行スピードがかなり違うことだ。子供を2人乗せたいわゆるママチャリとスポーツサイクルでは、軽トラとフェラーリほど違う。自転車として一緒にくくるのは少し無理があると感じた。
実は、都道434号は歩道も自転車が通行できる。スピードの速い自転車は車道内の専用レーンを、子供を乗せた遅い自転車は注意して歩道を走る、というすみ分けができるのだ。自転車通行空間を整備する都では「限られた道路幅や交通量など地域の事情に応じ、歩行者、自転車、自動車がともに安全で快適に通行できるように整備していく」(建設局)としている。
実は、自転車の通行場所を巡っては「車道か歩道か」という日本特有の問題がある。「交通戦争」と呼ばれた1970年のピーク時の交通事故死者数は現在の5倍の1万6765人。自転車は車両なので車道を走るのが今も原則なのだが、自動車との接触事故を減らすために、標識を掲げるなどして歩道も通行できるように法改正をした。
日本自転車普及協会常務理事の田中栄作さんは「事実上、自転車を歩道に上げたが、2000年以降、歩行者との接触事故が増えて『自転車は車道』の原則論が強まり、車道派と歩道派の混乱が続いている」と指摘する。434号の試みは、この混乱の一つの解決策になりうる。
コロナ禍の世界的な自転車ブームを背景に自転車部品最大手シマノの株価は8月に上場来高値を更新した。日本は人口当たりの保有台数がアジアで最も多いが、安全対策は弱い。自転車文化センター(東京・品川)の学芸員、谷田貝一男さんによると「最先進国のオランダの小学校では実技を含む毎週1時間の自転車の授業がある」という。同センターでは学校や自治体での安全講習に力を入れている。
シェアサイクルは電動アシスト型が多い。上り坂も快適に走れたが、実は電動アシスト車の事故が増えている。交通事故総合分析センターの中西盟事業課長は「高齢者の死亡事故が多く、事前に安全な場所で十分に練習してから乗ってほしい」と注意を促す。
新宿区の自宅から千代田区の本社まで自転車で走った。電車で約1時間かかる通勤時間が25分に縮んだ。燃料もいらず排ガスも出さない。公共交通が弱点となる災害時に自転車は力を発揮する。都道434号のような自動車と歩行者との共存空間が整備されて安全教育が広まれば、自転車の存在は新しい日常でいっそう重みを増すだろう。(以下略 2020/9/5 日経BP)
佐川急便/全国60営業所に業務用電動アシスト自転車導入
佐川急便は9月10日、豊田TRIKEと共同開発を進めてきた業務用電動アシスト自転車「TRIKE CARGO(トライクカーゴ)」の本格導入を開始したと発表した。
全国60営業所へ計155台を順次導入する計画で、8月24日から導入を開始した。
「TRIKE CARGO」は、従来使用していた電動アシスト自転車と比べて、荷重の影響を直接車体に受けない牽引タイプを採用したことで、積載可能重量が30kgから150kgへと大幅に増加。
牽引部分には台車を直接搭載することが可能で、積み替え作業の軽減に繋がるほか、積載量が増えたことで集配拠点の往復頻度を低減でき、一人当たりの集配エリア拡大も図れる。
また、シマノ製の業務用アシストモーターと変速機の採用で、重量物を載せていても大きな漕ぐ力を必要とせず走行でき、女性や運転免許未保持者でも乗車できるほか、トラックの代替輸送に活用することでCO2排出量の削減にもつながる。
「TRIKE CARGO」の共同開発では、2019年3月から複数の営業所でトライアルを開始し、実用化に向けて改良を重ねながら検証を進めた。その結果、取り回しを安易にするため車体を軽量化するなどの各種改良を実施したことで、安全性の担保や集配業務の効率化に一定の効果を見込めると判断し、本格導入を決定した。(2020年09月10日 流通ニュース)
自転車による子育て支援で全国表彰 尼崎市・ふたごじてんしゃの中原美智子さん
子ども2人を後部座席に乗せられる三輪自転車の開発・販売に取り組む株式会社ふたごじてんしゃ(尼崎市)。国の自転車活用推進本部(本部長:国土交通相)から、兵庫県では初めて功績者として表彰された。商品の特徴や開発に至る経緯を、代表取締役の中原美智子さんに聞いた。
――「ふたごじてんしゃ」の特徴を詳しく教えてください。
後ろが2輪になっている三輪自転車で、日本初の6歳以下の子どもたち2人を同時に乗せられる自転車です。ママの後ろに子どもが2人縦にならんで座るようすは、「カルガモの親子」をイメージしてください。普通自転車の企画内ですので、一般的な26インチの自転車と全長は同じです。
――何歳まで乗せられるのですか?
そもそも、自転車の前に乗せられる子どものは4歳未満、という製品規格があります。後ろには、兵庫県ではちょうど変わって、6歳までの子どもを乗せられるようになりました。つまり、ふたごじてんしゃなら小学校にあがるまでのお子さんを2人同時に乗せることができます。実は、6歳の誕生日を迎えると保育園や幼稚園の送迎時に自転車に乗せられない、という都道府県がまだまだあって、兵庫県もそうでした。オンラインで署名を集めるなど、いろいろな活動をしてきました。(以下略 2020/8/19 ラジオ関西)
銀行の4桁暗証番号だけではない 自転車の「10桁押しボタン式鍵」実は“210通り”しかなく脆弱
ドコモ口座から始まった“不正出金事件”で4桁暗証番号の脆弱(ぜいじゃく)性が騒がれる中、自転車の鍵などに使われる10桁の押しボタンの脆弱性にも注目が集まっています。一見1万通りあるように見えますが、実は210通りしかないというのです。なんと少ない……。
押しボタン式の鍵は、0〜9までの数字から4つの正しい数字を押すことで開くというもの。しかし、1度押した番号はもう一度使えず、さらに順不同となるため、10×9×8×7/4×3×2×1=210通りとなります(詳しくは「nCr 計算」などで検索)。慣れている人だと、10分もあれば開けられてしまいそうです。
この件について投稿したのは、立命館大学教授の上原哲太郎さん(@tetsutalow)。“不正出金事件”を受け、「10個の数字から4桁を選んで押すタイプの鍵って、ものすごく弱いのはもう少し知られても良いと思う」「3桁のダイヤル錠(1000通り)よりずっと弱い」と指摘しています。
この件についてネット上では、「そこからさらに手垢ついている、または汚れているボタンがよく使っているボタンと気づけば、たった何十通り試すだけで良いと気づく可能性も」「そもそもこのタイプの鍵は物理的に脆弱なので秒で壊せる」など、押しボタン式の鍵についての議論がかわされています。(以下略 2020年09月17日 ねとらぼ)
コロナで注目の自転車 世界を変えたスマホ級の大発明
歴史は繰り返す。まったく同じではなくとも、確かに繰り返す。コロナ禍で自転車の需要が急増し、サイクリングとウォーキングに新たに焦点を当てた都市の再開発に各国が数十億ドルをかけようとしている今、19世紀後半の自転車の登場がいかに世界を変えたかは、振り返る価値があるだろう。
自転車は、極めて破壊的な技術だった。少なくとも今日のスマートフォンと同じ程度には。価格も手頃で、速くてスタイリッシュな交通手段であり、好きなときに好きな所へ無料で行ける自転車は、1890年代の数年間において究極のマストアイテムだった。
ほぼ誰でも乗り方を覚えられ、そして、ほとんど誰もが乗った。アフリカ、ザンジバルの君主やロシアの皇帝はサイクリングを始め、アフガニスタン、カブールの国王はハーレムの全員に自転車を買い与えた。
しかし、真に自転車をものにしたのは、世界中の中産労働階級だ。歴史上初めて大衆が移動手段を手に入れ、好きに行き来できるようになったのだ。高価な馬や馬車はもはや必要ない。「庶民の足」として知られた自転車は、軽量、手頃な価格、維持が容易なだけでなく、最速の乗り物でもあった。
社会は一変した。女性は特に熱狂した。面倒なビクトリア調のスカートを脱ぎ捨て、ブルマーや「合理的」な服を着て、大挙して道にこぎ出した。
「自転車は、世界中の他の何よりも、女性解放に多大な影響を与えたと思います」とスーザン・B・アンソニーは1896年に米New York Sunday World紙のインタビューで答えた。「自転車に乗る女性を見るたびに立ち止まり、歓喜しています。それは、自由で制約のない女性の姿なのです」
1898年までには、サイクリングが米国で大人気のアクティビティーとなり、米『New York Journal of Commerce』誌によれば、レストランや劇場の損失は年間1億ドルを超えたという。自転車の製造は、米国で最も大きく、かつ最も革新的な産業の1つになった。全特許出願の3分の1が自転車関連で、そのあまりの多さに、米特許庁は別館を立てなければならなかった。
珍品から熱狂させる商品へ
現代の自転車を発明した人物として、一般に名が挙がるのは、英国人ジョン・ケンプ・スターリーだ。
1870年代に、ジョンの叔父のジェームズ・スターリーが「ペニー・ファージング」と呼ばれる前輪が大きくて後輪が小さい自転車を開発していた。ジョンは、ペニー・ファージングほど乗るのが怖くも危険でもなければ、自転車の需要が高まるのではないかと考えた。1885年、30歳になった彼は、英コベントリーの作業場で以前よりはるかに小さな車輪を2つもつチェーン駆動の自転車を開発し始める。
いくつかのプロトタイプを試作した後、彼は「ローバー安全型自転車」を考案した。重量は20キロで、今日我々が自転車と聞いて思い浮かべるものにおおむね似ている。
1886年、初めて自転車ショーに出展した時には、スターリーの発明品は珍品と見なされた。だが2年後、新たに発明された空気タイヤと組み合わせると、衝撃が緩和されただけでなく、速度が約30%も向上した。まるで魔法のようだった。
世界中の自転車メーカーが先を争って独自の製品をつくり、需要を満たすために何百もの会社ができた。1895年に英ロンドンで開催されたスタンリー自転車ショーでは、およそ200社の自転車メーカーが3000車種を展示した。
最大手の1つはColumbia Bicycles社で、米コネティカット州ハートフォードにある工場では、自動組立ラインのおかげで1分1台のペースで自転車を生産できた。これは後に、自動車産業の大きな特徴となる革新的な技術だった。また、Columbia社は先進的な雇用主として、従業員に駐輪場、個人ロッカー、社員食堂での食事補助、図書館を提供した。
飽くなき自転車への需要は、ボールベアリング、スポーク用ワイヤー、鋼管、精密工具の製造など、製造業にも活気をもたらした。
広告市場も潤った。アーティストは美しいポスターの制作を受注し、ポスターは鮮やかな新技術リトグラフで印刷された。製品の寿命を意図的に短くする「計画的陳腐化」や、毎年新モデルを発売するといったマーケティング戦略は、1890年代の自転車業界から始まったものだ。
村をまたぐ結婚増える
自転車があれば何でもできるように思え、普通の人が異例の旅に出た。たとえば1890年の夏、ロシア軍の若い中尉は、サンクトペテルブルクからロンドンまで1日平均110キロもペダルをこいだ。1894年9月、24歳のアニー・ロンドンデリーは、自転車で世界一周を成し遂げた初の女性となるべく、真珠の象嵌を施した拳銃と着替えを持って米シカゴを出発した。それから1年弱の後、彼女はシカゴに帰り着き、賞金1万ドルを手に入れた。
オーストラリアでは、羊の毛刈りの巡回労働者が、仕事を求めて水のない奥地を何百キロも自転車で走った。「彼らは公園で自転車に乗るかのようにこの旅に出る」と、新聞記者C.E.W.ビーンは著作『On The Wool Track(羊毛を追って)』に書いている。「彼は道を尋ね、パイプに火をつけ、自転車に乗ってこぎ出した。彼が多くの羊の毛刈り職人のように都会育ちだったなら、まるで叔母の所へお茶をしに行くかのように、黒いコートと山高帽を身につけていただろう」
そして米国西部では、1897年の夏、バッファロー・ソルジャーと呼ばれたアフリカ系米国人部隊である米陸軍第25連隊が、モンタナ州フォートミズーラからミズーリ州セントルイスまで、異例の3000キロ行軍を行い、軍における自転車の有用性を実証した。フル装備でカービン銃を持ち、荒れてぬかるむ道を自転車で1日平均80キロ近くを走破した。騎兵隊の2倍の速さで、コストは3分の1だった。
自転車は、芸術、音楽、文学、ファッション、さらには人の遺伝子に至るまで、事実上生活のあらゆる面を変えた。英イングランドの教区の記録は、1890年代の自転車の大ブレイクで、村をまたいでの結婚が著しく増えたことを示している。新たな自由を得た若者が、意のままに田舎を動き回り、道で交流し、遠くの村で出会った。そして、顔をしかめた当時のモラル活動家が指摘したように、多くの場合、年配のお目付役を出し抜いたのだ。
英国のヘンリー・ダクレが作詞作曲した『デイジー・ベル』は、1892年に欧米で大ヒットを記録し、「2人乗りの自転車」というリフレインが有名になった。熱烈な自転車愛好家で鋭い社会観察者だった作家のH.G.ウェルズは、いくつかの「サイクリング小説」を書いた。この素晴らしい新たな交通手段のロマンチックで、人々を解放し、階級を消失させる可能性にまつわる優しい物語だ。
自転車が未来を形づくる役割を見抜いた慧眼の持ち主は、ウェルズだけではなかった。1892年の米国の社会学の雑誌には、「都市の発展における自転車の影響は、まさに革命的になるだろう」とある。「自転車の経済的・社会的影響」というタイトルの記事で、より幸せで、より健康的で、より外向的な住民が暮らす、より清潔で、より環境に優しく、より穏やかな都市を著者は予見した。
若者は自転車のおかげで、「より多くの世界を見ることができ、それに触れることでさらに世界が広がる。自転車なしでは、家から歩ける距離を超えて出かけることはめったにないが、自転車があれば、多くの周辺の町をコンスタントに動き回り、郡全体に詳しくなり、休みにはいくつかの州をまたいで旅することも珍しくはなくなる。そのような経験が、活力の増進、自立、個性の獲得を促す」
数百万人の自転車愛好家と国内最大規模の産業の政治的影響力が、都市の通りや田舎道の急速な改善につながった。自転車乗りが、まだ予期せぬ自動車の時代へと続く道を文字通り切り開いたのだ。(以下略 日経新聞)