近所には無くても、見たことはあるでしょう。車両が交差点に差し掛かって停止したことを感知し、信号を切り替える装置のついた信号機です。交差する道路の間に大きな通行量の差がある交差点などに設置されます。交通量の少ない夜間だけ感応式になる信号もあります。
主要道路の交通量を測定し、連続した信号の切り替えを調整する感応式信号機もあるようですが、信号に「感応式」と表示され、交通量の少ない方向にクルマが来た時だけ、切り替わる信号機がお馴染みだと思います。自転車でツーリングしていて出会うこともあるのではないでしょうか。
ただ、おそらく自転車の感知は想定されていないと思われます。感知することもあるのかも知れませんが、上空に設置されている検知器の真下に停まっても反応しないことが多いのではないでしょうか。そもそも、道路の中央にあり、自転車で停止しやすい場所には設置されていません。
自転車の場合は、仕方なく歩行者用の押しボタンを押すことになるでしょうし、それを前提にしているようです。しかし、必ずしも押しボタン式と併用されておらず、車両が来ずに感知しないと、一定時間が経過するまで切り替わらないものもあるため、自転車だと、やたらと待たされる所もあるようです。
感応式信号機にもかかわらず、その表示をしない都道府県も10程度あります。感応式とは気づかず、歩行者用の押しボタンも押さないと、いつまで経っても変わらない交差点があるわけです。歩行者用の押しボタンなので、自転車だと押しにくい場所にあったりします。いずれにせよ、自転車に対しては不親切と言わざるを得ません。
ところが日本と違って、海外では自転車を感知しようとしている場所もあります。例えばアメリカの一部の地区です。アメリカでは、前方の信号が赤でも、クルマは右折できるのが一般的です。日本に置き替えると、直進はダメですが、赤信号でも左折可の交差点が普通ということになります。
このルールによって起こりやすいのが、いわゆる「右フック」です。日本式に言えば、左折巻き込み事故ということになります。日本でも、交差点で大型車などに左折巻き込みされる事故が起きますが、右側通行のアメリカでは、右折巻き込み事故が起きます。赤信号右折可のルールがこれを助長するわけです。
このため、感応式信号を使って、自転車の事故を減らそうと努力している地域があります。その一つがオレゴン州ポートランドです。全米でも自転車にフレンドリーな都市として知られています。これまでに、自転車の右フック事故を減らそうと、交差点の信号を改良してきました。
まず、巻き込み事故が頻発する場所では、「赤信号の時には右折禁止」という標識でクルマの常時右折を禁止します。クルマを赤信号で待たせている間に、自転車用信号で自転車を直進させる形にしました。自転車用信号を見間違えて右折しないような工夫もしました。ただ、自転車がいないのにクルマを待たせるのが非効率でした。
そこで、自転車がいる場合にクルマの信号を赤にするため、自転車を検知する感知器を設置することにしました。路上にマーキングし、このマークのところで待てば青信号になると書いた標識も設置しました。つまり、自転車を感知する感応式信号です。市内の多くの交差点に設置しました。
さすが、自転車にフレンドリーな都市、自転車を感知する信号で事故を防ごうというわけです。しかし、その後調査をすると、市内で自転車に乗る人の半数が、青信号にする方法を知らないことがわかりました。この数字は、滅多に乗らない人などは含まれていません。上手く機能していない実態が見えてきました。
そこで、
ポートランド運輸局は、市民にこの信号の周知に努めたり、存在に気づいてもらう工夫をするといった試行錯誤を熱心に行っています。交差点の前方に、感知したことを知らせる表示装置も設置しました。また、路面のマーキングの意味を知らなくても感知するように出来ないか実験もしています。
マーキングの色を変えたり、位置をずらしたり、検知器の精度を上げるなどの実験も繰り返しています。従来型の感知器ではなく、マイクロ波や、金属探知機なども試しました。そして今年、また新たな取り組みとして、ライダーを熱で画像検知する、
サーマル自転車識別ビデオ検出装置を試すことにしました。
実証実験を、市郊外のワシントン郡の3か所の交差点で開始しています。ちなみにワシントンと言うと、首都のワシントンD.Cか、西部のワシントン州を思い浮かべると思いますが、ワシントン郡は全米各地に31か所もあります。その一つがポートランド都市圏を構成する郡の一つのワシントン郡です。
熱により、自転車ではなくライダーを検出します。サーマル画像でライダーだと認識するハイテク機器です。この機器は、同州に本拠を置く、
FLIR Systems.Inc 社の製品です。これは、今までの方法とは違う発想による感知方式と言えるでしょう。
自転車は決まった場所に停止する必要はありません。もちろんボタンを押す必要もありません。クルマやオートバイなどとは、自転車は違うヒートマップになります。サーマル画像で自転車を検出し、信号を切り替えたり、そのタイミングを調整して、自転車をスムースかつ安全に通過させることが出来ます。
まだ実験中ですが、カメラで広い範囲を感知できれば、設置場所の選択肢も広がります。さらに、これは感応式信号としてだけでなく、将来的に多方面で役に立つ可能性があると思います。これまでの感知器や、自転車レーンにゲートを接地して通過をカウントする装置などを代替するだけではありません。
将来のクルマの自動運転に向けた整備の中で、自転車の検知も確実に必要になるはずです。自転車を検知できなければ、事故も回避出来ません。クルマに搭載するセンサー以外にも、道路上や交差点に感知器を取り付けて、クルマと通信しながら、自転車との共存を図ることになると思われます。
その時、ピンポイントで、その場所に停まらなければ検知できない感応装置では役に立たないでしょう。将来的にこの方式を超える方法が開発されるかも知れませんが、少なくともこれまでよりは、自転車の動きを把握するのに役立つと思われます。自転車の安全にも貢献するはずです。
おそらく将来的には、こうしたセンサー、5Gなどの次世代通信、AIなど最新の技術を使って交通を制御するようになるでしょう。高度の交通安全の実現も期待されます。もちろん、自転車を検知する気のない、日本の感応式信号にイライラすることもなくなりそうです。
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感染・入院したと思えばすぐ退院、強い大統領を誇示するも感染を広げ支持率下落、目まぐるしい展開ですね。
Posted by cycleroad at 13:00│
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