October 13, 2020

運転しない決断を促す選択肢

先週、交通死傷事故の初公判が行われました。


いわゆる池袋暴走事故の裁判です。母娘が死亡し、通行人9人が重軽傷を負いました。この初公判で被告が無罪を主張したため、遺族だけでなく社会から大きな反感を買っています。科学的な物証があるにもかかわらず、自説を曲げないという高齢者特有の頑固さが際立ったと見ることも出来るでしょう。

この事故は発生当時から大きな注目を浴び、事故後の経緯も含めて社会的な関心を集めました。高齢ドライバーによる事故という社会問題をあらためてクローズアップし、これ以降、高齢ドライバーの免許返納が大幅に増えたことを見ても、大きな波紋を広げた事故と言えるでしょう。

高齢ドライバーの家族にとっても、決して他人事ではありません。本人が事故で死傷するのも困りますが、罪のない第三者を死傷させる可能性が強く意識されました。高齢になれば、どんなに慣れている人でも、本人が意識しないうちに運転技術が衰えるのは否めないでしょう。

池袋暴走事故This image is in the public domain.

悲惨な死傷事故を起こす前に免許を返納させ、運転を止めてほしいと家族が考えるのは自然です。ただ、本人が頑固に拒否する場合も多く、家族が悩むケースは多いようです。ほかにも、移動手段が無くなると買い物難民になったり、病院に通院できなくなるなど、現実的な問題にも直面するようです。

さて、関心が高まっている高齢ドライバーの運転ですが、問題となるのは日本だけではありません。当然ながら、高齢になって運転技術が衰えるのは、日本人に限りません。ただ、まだ日本ほど高齢化社会が進んでないため、大きく取り上げられていないというのが実際のところのようです。

例えば、クルマ社会と言われるアメリカでも、高齢ドライバーの事故は起きています。日本と比べて国民の平均年齢が若いため、目立たないのでしょう。アメリカは州によって法律が違うため、一概には言えませんが、クルマ社会が長いぷん、高齢ドライバーの事故への対策が進んでいる面もあるようです。

高齢ドライバー事故カリフォルニア州では、70歳になるとDMVと呼ばれる日本でいう運転免許センターのようなところへ行く必要があります。そこで学科試験や医師の診断を受けないと免許が更新されません。試験の結果や医師の診断、過去の経歴、健康問題などに疑義があれば、実技試験を受けなければなりません。

これに合格しなければ免許は更新されません。その自信がないと自ら返納する人もいます。試験とは別に、高齢ドライバーのための安全運転のガイドを発行したり、いつ運転をやめるかの判断のための目安や情報を発信するといった活動も、DMVの役割となっています。

アメリカには高齢者しか住めない街もあります。そこでは電動のゴルフカートが交通手段となっており、クルマと比べれば速度が遅いため、深刻な事故は起きにくいということはあるようです。運転問題だけのために街が設置されたわけではありませんが、一つの対策となっています。

都市部など、あまり長い距離を移動しなくてすむ場所では、当然自転車に乗り換えるという選択肢もあるでしょう。全米に自転車にフレンドリーとされる都市があり、自転車レーンなどの整備が進んでいるため、高齢者でも自転車で安全・快適に移動することが出来ます。

Screecher

そうした高齢者のニーズを見込んだ自転車を開発する動きも出ています。ニューハンプシャー州を拠点とするスタートアップ企業、SUNOX 社もその一つです。4輪の電動アシスト自転車、“Screecher”です。以前からあったペダルカーの最新バージョンとして、先ごろ生産を開始しました。

4輪なので、低速でも安定し転倒の心配も小さくなっています。アシスト速度は時速24キロまでとスピードが出ないので、重大事故は起きにくいでしょう。ひさしの上や後部の貨物トランクの上にはソーラーパネルが搭載されており、電動アシストモードだけでなく、ペダルをこがずに電動のみで走行するモードもあります。

家庭用電源で4時間、ソーラーパネルからなら6時間で充電できます。電動だけの走行で約32キロ、ペダルアシストモードなら約56キロ走行できます。日常の移動としてなら十分という人は多いでしょう。家庭用電源で充電したとしても、ガソリンより大幅に安くなるのも確かです。

Screecher

後輪2輪が駆動輪ですが、4輪駆動にもなります。田舎道とか林道、野山や郊外の非舗装道路でも走行性の高さを誇ります。牽引用のフックを有しており、トレイラーを連結して農作物を運んだりするのも簡単です。都市部以外でも、荷物の運搬に便利に使えそうです。

ソーラーなら電気代もタダですし、CO2を排出しないという点も今どきは支持されるでしょう。シート下には独自のサスペンションが設けられ、ソフトな乗り心地です。そして本体の価格は、4,495ドルと、クルマはもちろん、他の電動ペダルカー、4輪バギーと比べてもリーズナブルです。

屋根がついているので、多少の雨なら濡れません。回生ブレーキやクルーズコントロールも備えています。クルマのような長距離を高速で移動するような用途には使えませんが、近所へのアシとして使う、PMD(パーソナルモビリティデバイス)として、十分なスペックでしょう。

Screecher

もちろん、自転車でも事故は起きますし、歩行者を死傷させる可能性はあります。しかし、クルマと比べてスピードが遅いですし、事故の被害を大きくするボディの強度も重量もクルマとは比べものになりません。重大な事故になる可能性が相対的に低いのは間違いありません。運転も簡単です。

この“Screecher”、高齢者用のシルバーカーとして売っているわけではありません。最初からシルバー自転車としていたら、高齢者にとってもイメージが良くないでしょう。私が勝手に高齢者向けにもメリットがあると書いているだけです。若い人が乗ってもいいわけで、これは便利という人もあるはずです。



ただ、ウェブサイトには、フロリダのリタイアメントホーム(定年退職者住宅)に住む人から、サンフランシスコの自転車通勤者、中国の山岳地帯から田舎に住む住民までなどと書かれており、高齢者のニーズを意識しているのは間違いないでしょう。エレガントで機能的かつシンプル、環境に優しく、手頃な交通手段とアピールしています。

クルマの運転免許を返納して、これに乗り換えるかどうかは、それぞれの判断です。住んでいる場所や普段の暮らし方にもよるでしょう。しかし、選択肢の一つにはなるはずです。アメリカでも、今後こうした高齢者を意識した製品のニーズは高まっていく可能性がありそうです。



日本でも、悲惨な高齢ドライバーの事故の増加を受け、さまざまな対策が進められています。自動ブレーキなどの技術開発を進め、サポカー(安全運転サポート車)の普及を進めることも一つの方向でしょう。免許返納の推進や、免許更新制度の見直し、限定免許なども検討されています。

日本の高齢者に向かって、一概に自転車にしろなどと言うつもりはありません。しかし、自転車ならば重大事故のリスクは軽減されます。高齢者でも乗りやすく使いやすい自転車の開発、そして自転車レーンなどの走行環境の整備も、高齢ドライバーの免許返納の推進につながるのではないでしょうか。




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昨シーズンも今もインフルエンザの患者激減だそうです。1つのウイルスが流行すると他のウイルスが駆逐される「ウイルス干渉」と推定されます。いっそ、どうしても必要な人以外はインフルのワクチン接種をやめてインフルエンザを流行させ、コロナのほうを激減させ終息させられないものでしょうか。インフルなら治療薬もありますし..。

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