もちろん、コロナの影響です。折しも政府のGOTOキャンペーンが行われていますが、航空、宿泊、観光、飲食をはじめ、業種によって大きな打撃を受けています。旅行に加えてテレワークの普及で、通勤や移動する人が減ったため、鉄道会社も大きく売り上げが落ち込みました。
定期券収入だけでなく、移動する人が減ったため、周辺の商業施設など関連事業も落ち込んでいます。先般、利用者の回復は望めないと、JRが終電の繰り上げを発表しましたが、鉄道事業は一般的に固定費の割合が高いため、列車を間引いても、あまりコスト削減にはならないと言います。
コロナ禍で、仕方なくテレワークを始めた企業も多かったようですが、思いのほかオンラインで出来ることが多いと気づいた会社も少なくないでしょう。つまり、今後、出張などの需要も確実に減ると言われています。コロナが終息したとしても、以前ほどには、鉄道の利用者が戻らない可能性があるわけです。
日本にはJR各社や大手・中小の私鉄、第三セクターに至るまで、たくさんの鉄道会社がありますが、経営基盤の脆弱な鉄道会社は、先行きが懸念されるところもあります。鉄道事業は巨大な装置産業であり、コスト圧縮の効果は限られるため、今後は不採算路線の廃止が進む可能性も考えられるでしょう。
日本は世界的に見ても鉄道網が発達していますが、近年は廃止される路線も増えています。2000年以降だけでも各鉄道の61もの区間が廃止され、2区間の廃止が決まっています。廃止ではないものの、休止や長期にわたって運休している区間も16以上、廃止が噂されている路線・区間も少なくとも25以上あります。
多くは過疎化や人口減少で利用者が減って採算がとれなくなり、やむを得ない廃止なのでしょう。沿線人口が減っていなくても、クルマのほうが便利なため、利用者が減って本数が減らされ、不便になってさらに利用者が減るという悪循環に陥るところも少なくありません。
長い間、地域の交通インフラとして人々の生活を支えてきた鉄道がなくなるのは残念なことです。なかには、バス専用道路など再利用される路線もありますが、一部に限られます。細長いだけの土地であり、山間部を通る区間など、再利用の難しい路線もたくさんあるでしょう。廃止され、朽ち果て、忘れ去られる運命です。
ところで、鉄道が廃止されるのは日本だけではありません。海外には、こうした廃線を有効活用している鉄道会社があります。“
Skunk Train”は、アメリカの歴史的な鉄道の、廃止されて使われなくなった路線の一部に、新たな命を吹き込んでいます。
鉄道のレールをそのまま流用し、レールバイクを使ったツアーを催行しているのです。例えば、北カリフォルニアの世界的に有名なレッドウッド国立公園地区を通る鉄道の廃線区間で、2人乗りのレールバイクを使ったガイド付きの冒険ツアーは、観光客から好評を博しています。電動アシスト付きレールバイクも選択できます。
一部、山の中や林間を通る鉄道路線です。途中の沿線には、手付かずの自然が広がり、レール以外の人工物はありません。レッドウッド国立公園は、セコイアなどの原生温帯雨林の森です。周辺には道路や民家もなく、人もいないので、まさに冒険気分が味わえます。
一般的には、レールを撤去して舗装し、サイクリングロードにする手もあるでしょう。平地ならそれも考えられますが、山間を通る区間には、渓谷を鉄橋で渡ったり、崖のすぐそばを通ったりする場所もあります。舗装してサイクリングロードにするには、柵を設置するなど安全面で多額の費用がかかってしまいます。
レールを残して、レールバイクにすれば、基本的にそのままでいけます。渓谷や断崖もそのままでいいですし、かえってスリル満点のビュースポットになるでしょう。軌道通りに走るしかないレールバイクですから、誤って道を踏み外して転落することも、道を間違えて迷ってしまうこともありません。
レールバイクは、ハンドル操作の必要がありません。ペダルだけこいでいれば、よそ見をしていてもルートを外れることがありません。逆に言うと、周囲の景色を存分に楽しみながら、自然の中のツアーを満喫できるわけです。もちろん、高齢者でも子どもでも、普通の自転車に乗れない人でも大丈夫です。
途中で下車できる場所もあり、そこから森のピクニックが楽しめるようになっています。ガイド付きツアーは、およそ2時間ほどですし、脚力に自信がなければ電動アシストも選べます。元々、鉄道は鉄橋やトンネルなどを使い、勾配は小さく出来ています。つまりアップダウンが小さく、徒歩のハイキングよりもキツくありません。
これは、日本でも参考になるのではないでしょうか。レッドウッド国立公園のような有名観光地でないとしても、山間部や田園地帯など、自然や景色を満喫できるところは少なくないでしょう。最近はアウトドアのアクティビティが人気ですし、オープンエアで密になることもありません。
廃線のレールさえ残っていれば、レールバイクを用意するだけ、大きな初期投資はいりません。レールの保守は必要になるにしても、鉄道会社が母体になるか提携すれば管理は可能でしょう。架線があったとしても、使いませんし、何より大きな費用のかかる、列車の維持管理、更新費用は不要です。
廃線として放置すれば、そのまま朽ちて忘れ去られるだけです。一方、レールバイクを導入するだけで、地域にとっても貴重な観光資源となる可能性があります。もちろん、地域によって、必ずしも可能でないかも知れませんが、これが出来るなら、やってみない手は無い、やらなければもったいないのではないでしょうか。
過疎化や人口減少、災害、交通手段の変化などで不要、不採算になって廃止となる路線・区間はかなりの数、距離になります。そしてコロナです。もはや交通インフラとしては用済みかも知れませんが、せっかくの地域の財産だった鉄道路線です。見限る前に、もう一度、その活用を考えてみてもいいのではないでしょうか。
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長引いた大統領選の開票は、バイデン候補に当選確実が出ました。大方の予想を超える善戦を見せたトランプ大統領ですが、負けを認めず今後は法廷闘争に持ち込む構えです。果たして受理されるのかが注目されます。
Posted by cycleroad at 13:00│
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