e-Bike 市場です。調査機関によって幅はありますが、2027年にはフル電動と電動アシスト自転車の市場は、合わせて700億ドル規模に達すると予測されています。コロナで乗る人が増えた一般の自転車市場も伸びていますが、その中でも、e-Bike 市場が大きく伸びています。
もはや一過性のブームではありません。e-Bike は自転車の種類の一つではなく、便利でエコでサスティナブルで実用的な乗り物として広く認知されていると言えるでしょう。自転車は疲れると敬遠していた人も、フル電動も含めた電動アシスト自転車に乗り始めています。
ラクで軽快と言うだけでなく、渋滞する都市ではクルマより速く移動でき、小回りが効きます。本体価格がクルマに比べて安いだけでなく、燃料や車庫や保険、その他のランニングコストも比較になりません。将来の交通の形と言われる、MaaS(Mobility as a Service)で各交通機関をつなぐ乗り物としての役割も期待されます。
各メーカーは、こぞって、e-Bike のラインナップを増やしており、その例は枚挙に暇がないわけですが、自転車メーカー以外もその市場に注目しています。例えば、オートバイメーカーとして世界的に有名で、コアなファン層を持つことで知られる、HARLEY-DAVIDSON もその一つです。
“
Serial 1 Cycle ”という電動アシスト自転車のブランドを立ち上げ、別会社として本体から分離独立させました。この“Serial 1”というのは、同社が1903年に製造した最も古いオートバイのニックネームです。それだけ特別な思い入れがあるのでしょう。
このプロトタイプは日本人には、あまりピンと来ないデザインですが、おそらくアメリカ人にとってはノスタルジックで、特にファンには大いにアピールするものなのでしょう。オートバイで確固たる地位を築いている同社ですが、わざわざ自転車を作って、この市場に参入しようとしているのです。
アメリカだけを見ても、昨年27万台もの電動自転車を輸入しています。今年はコロナの影響もあって、50万〜60万台になると見られ、無視できない動向なのでしょう。オートバイでも、量販を狙うメーカーではないと思いますが、電動自転車でも独自のファンを獲得したいと考えているようです。
クルマメーカーも動き始めています。BMWは電動自転車とオートバイを製造し、アウディは電動マウンテンバイク、メルセデスベンツは電動スクーターを発表し、フォードは電動スクーターのスタートアップであるスピンを買収し、ジープ、ゼネラルモーターズなども続いています。
クルマメーカーで、今一番注目されるのはテスラでしょう。今年、トヨタを抜いて世界で最も株式時価総額の大きいクルマメーカーとなりました。年間わずか36万台しか生産していないのに、生産台数1千万台を超えるトヨタを抜くのですから、株式市場はテスラ、あるいはEVの今後の成長性を高く評価していることになります。
そのテスラも、電動自転車を発売するのではという噂があります。実際に、イーロン・マスクCEOは、過去に電動自転車の販売の可能性について言及したこともあります。おそらく、世界での予約待ちに応えるためにも、クルマの生産拡大を優先するとは思いますが、全くありえない話ではありません。
こちらのコンセプトe-Bike 、“
Tesla Model B ”は工業デザイナー、KendallToerner さんの作品です。彼は現在テスラで働いているわけではないので、正式なコンセプトモデルではありませんが、テスラが開発すれば、こんな形になりそうな気がするスタイルなのは確かでしょう。
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既存の自転車メーカーの新製品は、それこそたくさんあって取り上げきれないので割愛しますが、新興メーカーやスタートアップ企業でも、電動アシスト自転車を開発するところが後を絶ちません。これもキリがないのですが、一例として、Biktrix 社の、“
Juggernaut HD Duo ”を挙げておきます。
電動アシストのマウンテンバイクです。最大の特徴は、その航続距離でしょう。フル充電で200マイル、およそ320キロです。おそらく、ロードバイクでも一日に320キロ走る人は多くないと思いますから、これは十分な航続距離と言えるでしょう。
これまで、バッテリーが切れてしまうと、ただの重い自転車になってしまうのが電動アシストの最大の弱点でした。これなら安心でしょう。特にアップタウンのある山道でバッテリーが切れたら悲惨なことになるでしょうから、これは大きなアドバンテージです。
日本では、あまり注目度の高くない分野だと思いますが、今後電動アシストMTBは、電動自転車市場でも大きな割合を占めるようになると予想されています。アメリカなどではオフロード走行の需要も大きいですが、頑丈なので、街中や普段使いにMTBという人も多く、電動シティサイクルを上回るとの予想もあります。
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変わったところでは、カナダの電動アシスト自転車メーカーが製造する“
Envo kit ”というのもあります。普通のマウンテンバイクを、雪上自転車に変えるキットです。ただのMTBでは雪の斜面を上るのも大変ですが、電動アシスト機構を使えば、簡易スノーモービルになるわけです。
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フランスの電動自転車ブランド、ecox 社は、
電動アシストの緊急車両 を制作しています。悪名高きパリの渋滞は、一般のドライバーを年間平均140時間も閉じ込めるだけではありません。緊急に輸送が必要な薬品などが渋滞に阻まれ、命を救えなくなる可能性があります。
最近はコロナで公共交通を敬遠しクルマに乗る人が増え、余計に渋滞しています。救急車を使う手もあると思いますが、酷い渋滞だと、一般車両は必ずしもすぐ道端に避けられません。救急車でも身動きがとれなくなってしまいます。自転車ならばクルマの間をすり抜けることが出来るため、救急車より、はるかに速いわけです。
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さまざまな電動アシスト自転車が開発され、いろいろな使い方も広がっています。もはや自転車のパワーの補助というだけでなく、多くの人が使う便利な乗り物としての地位を確立し、独自の進化や展開を広げています。電動アシストは今後も、さらにその活用が進むのは間違いなさそうです。
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イギリスでは来週からコロナのワクチン接種が始まり、抗体が長続きするとの研究も発表され期待が膨らみます。
Posted by cycleroad at 13:00│
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