December 09, 2020

EV以外にもやることがある

世界各国から温暖化対策が打ち出されています。


日本でも菅首相が、2050年に温室効果ガス実質ゼロを打ち出しました。こういう話になると、決まって矢面に立たされるのがガソリン車やディーゼル車です。イギリスは、これらのクルマの新車販売を2030年からは禁止する方針を打ち出しました。EVを普及させる政策です。

イギリスだけでなく、アメリカ・カリフォルニア州やカナダは35年に販売禁止、フランスは40年に販売禁止、中国は35年にEVなどの比率を5割にする目標を発表しています。東京都も独自に30年にゼロを発表しましたし、日本も2030年代の半ば以降にEVやHV(ハイブリッド車)とする目標を検討しています。

最近は、SDGs(持続可能な開発目標)が問われる中ですが、温暖化ガスを直接排出しないEVを普及させることこそが温暖化の解決策だと言わんばかりの姿勢です。たしかに、ガソリン車と違って、電動のEVは温暖化ガスを直接排出しないぶん、温暖化ガス対策にはなるでしょう。

脱ガソリン車脱ガソリン車

しかし、温暖化ガスの排出はエネルギー分野や、工場などの産業部門のほうがはるかに大きく、EV化による効果は相対的に小さく、限定的です。EVも直接排出はしないものの、石炭・石油、LNGによる電力を使うならば、間接的に温暖化ガスを排出していることになります。

工場でのEVの製造段階でも多くの温室効果ガスを排出します。発電所で発電された電力を消費地に運ぶ送電の段階でエネルギーの半分は無駄になると言います。そして充電するバッテリーが廃棄物になることの環境負荷が高いことも問題とされています。

温暖化ガスの削減を言うならば、クルマそのものの利用を減らすことも必要でしょう。しかし、その点には言及せずに、EV化すれば済むかのような表明は不誠実と言わざるを得ません。経済や雇用などの観点から、産業政策としてのEV化もあるのでしょうが、EV化すれば済む話ではありません。

Bastiaan Kokガソリン車販売禁止

クルマ1台には平均1.2人しか乗っていません。1.2人にあれだけ大きくて重いボディーを走らせるだけでエネルギーの無駄です。道路の占有面積的にも無駄ですし、渋滞を引き起こします。例えばクルマの使用を減らし、自転車で済む移動には自転車を使えば、はるかにエネルギー消費や渋滞は少なくて済みます。

結果的に温暖化ガスを減らすことにもなるでしょう。もちろん、クルマでしか出来ない移動や輸送等も多いですから、全てとは言いませんが、出来る範囲での自転車の活用は進めるべきでしょう。渋滞の緩和、事故死者の減少、市民の健康増進による医療・介護予算の低減などのメリットも期待出来ます。

実際に、欧米では多くの人が自転車で移動し始めています。人々は、EVにするより自転車にしたほうが、よりサスティナブルだと、当然ですが、わかっています。温暖化対策を言うなら、まずこうした流れを促進し、無駄なエネルギー消費を減らすことも目指すべきではないでしょうか。

Bastiaan KokBastiaan Kok

近い将来はクルマのEV化ではなく、むしろクルマの役割は後退していく、一歩後退させるべきではないかと考える人たちもいます。その一人がオランダの研究者で、アムステルダムやユトレヒト、ペンシルベニアなどの大学で教鞭をとり、ドイツの研究所の所長でもある、Peter van der Veer 教授です。

オランダと言えば、世界一とも言われる自転車王国です。1970年代以降、政府が自転車による移動を強力に推進してきました。国土が平坦で、自転車での移動に適していることもあって、オランダ人は近所に出かける時も、長期の旅行に行くときも自転車を使います。

De fiets van en in de toekomstDe fiets van en in de toekomst

オランダの全人口1千6百万人に対して1千8百万台の自転車が所有され、1万8千マイルもの自転車道があります。もちろんクルマも走っていますが、都市部へのクルマの乗り入れは制限されており、クルマのドライバーのほとんどがサイクリストでもあると言うお国柄です。

そんな国ですから、都市交通の未来の見方も、少し違います。Peter van der Veer 教授と、工業デザイナーである、Bastiaan Kok さんが見据える、将来の都市モビリティ予測は次のようなものです。少なくともオランダでは、もっと自転車の活用が進んでいくだろうと考えています。

De fiets van en in de toekomstDe fiets van en in de toekomst

すべての自転車はネットに接続され、盗まれた自転車はすぐに追跡できるようになると予測しています。自転車にはヘッドアップディスプレイが搭載されルートをナビケートします。サイクリストはルートや障害、混雑、天気などにに関する情報を受け取り、危険が通報されるようになります。

シニア向けには安定化システムの搭載された航続距離の長い、電動アシストやe-bike が開発されます。より安全に移動できます。道路には、高速充電器を備えた駐輪スペースが配置されるでしょう。駐輪するだけで、自動的にワイヤレスで高速充電されます。

De fiets van en in de toekomstDe fiets van en in de toekomst

住宅街から都市へは、自転車専用の高速道路で接続されます。通勤者はスピードの出る自転車や、カーゴバイクで行き来することになるでしょう。自転車レーンは多線化し、速さに応じてレーンを選べるようになります。利用者同士が通信し、危険を警告したり回避したりするようになるでしょう。

自転車の形も多様化し、2輪、3輪、4輪の屋根付きの電動アシストのカーゴバイクも、さらに一般的になります。荷物を積むかどうかに関わらず、屋根があって天候に左右されずに移動てぎるようになります。多くの親は、カーゴバイクに子どもを乗せて走行するようになるはずです。

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移動だけでなく、都市部の荷物の輸送にも使われます。宅配便業者もネット接続されたカーゴバイクで、より便利に配達が可能になります。電動アシストのエネルギーは水素化、すなわち燃料電池になるかも知れません。バッテリーを交換したり、その他のサービスを提供するハブ施設が自転車インフラとして登場するでしょう。

軽くて小さな車体を動かしたりアシストするための電力なら、EVよりはるかに小さくなります。自転車の道路への投影面積は小さく、駐輪スペースも含め場所をとらず、渋滞も減らします。もちろん直接温暖化ガスは排出しません。EVよりずっとリーズナブルな価格、ランニングコストなのも利点です。

De fiets van en in de toekomst

どこの国でもこのような自転車社会になっていくとは言いません。しかし、少なくともオランダでは、十分に実現しそうな未来図であり、オランダ国民もそれを選ぶに違いありません。国土が広いわけではないので、クルマがEVになっても渋滞はさけられません。自転車を便利にするほうが、よほどメリットがあります。

オランダでもクルマがなくなるわけではありません。排気ガスによる大気汚染などを考えれば、ガソリン車よりもEVでしょう。ただ、EVにするより自転車を活用したほうが賢明であり、環境にもいいのは明らかです。オランダが見据える将来のほうが、よほど誠実であり、サスティナブルなのではないでしょうか。




◇ ◇ ◇

コロナ発生から1年、ついにイギリスなどでワクチン接種が始まりました。是非これで終息に向かうことを祈ります。

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