自転車の販売台数は増加傾向にありますし、最近はコロナで自転車通勤をする人が増えたとの報告もあります。自転車通勤は一部ですし、自転車の所有と自転車の利用は必ずしもイコールではないと思いますが、国の社会生活基本調査などを見ると、年間にサイクリングをした人の割合も増えています。
自転車の利用実態を正確に把握するのは簡単ではないのですが、傾向として自転車に乗る人が増えているとは言えるでしょう。ただ、いろいろと統計を見ていると、自転車の使用者の平均年齢が、2012年に37.4歳だったのが、2018年には42.5歳となっているのが気になります。

短期間に自転車に乗る人の高齢化が見て取れます。もちろん日本全体の人口構成が高齢化していますし、比較的高齢の世代が自転車をよく利用するするようになっている傾向もあるのでしょう。しかし、これだけ短期間に平均年齢が上がっている背景には、比較的低年齢の世代が自転車に乗らなくなっていることもあるようです。
少子化も確かでしょうが、上述の比較した6年間で子どもが急減したわけではありません。個々のデータを見てみると、50代、60代以上は利用者が増えているのに対し、10代から40代では微減しています。そして9歳以下では利用者が半減するほどの減り方になっているのです。

つまり、子どもが自転車に乗らなくなっている傾向が見られるのです。今でもある程度の年齢になれば、自転車に乗りたがるでしょうし、練習もするでしょう。幼児はそれなりに乗っていると思われますが、その上、9歳以下までの子どもが乗らなくなっているようです。
近年は、子どもが屋外で遊ばなくなったと言われますし、公園に集まって外遊びをするのかと思えば、携帯型のゲームをやっていたりします。子どもの生活圏内で、自転車で移動するニーズもそれなりにあると思うのですが、実際には移動したり、乗って遊ぶことが少なくなっているようです。

ゲーム機に加えてスマホやタブレットなどの利用が低年齢化しているのもあるのでしょう。近隣の交通事情から、安心して自転車に乗れる場所が無いとか、危ないから禁止されているといった事情もあるのかも知れません。必ずしも子どもが自転車に乗る必要はないと言われればそうかも知れませんが、個人的には気になる傾向です。
スポーツをするという点でも、それが自転車である必要はありませんが、子どもの運動能力を発達させるだけでなく、交通ルールを学んだりする機会にもなります。将来的に自転車で通学したりすることもあるでしょうから、小さいうちに自転車に乗り慣れ、ルールを知っておくことは、事故防止にも寄与するはずです。


自転車に乗ることで生活圏が広がったり、社会規範を身につけたり、心身の成長にもつながると思われるのに残念なことです。近年は、昔と比べて野球をする子が減ったと言われ、将来の野球人口の減少が懸念されていますが、同じように将来の自転車スポーツ人口が減ることになるかも知れません。
自転車スポーツの未来はともかく、子供の頃に自転車に乗らないと、大人になっても関心が薄くなる可能性もありそうです。大人になって自転車に乗っても交通ルールを守らなかったり、メンテナンスをする気も無く、使い捨てのようにして駅前に放置するようになるのも自然な流れでしょう。


さて、個人的には日本の子どもに自転車離れがあるとしたら気になりますが、その点で、北米には示唆に富む団体があります。“
Trips For Kids”、子どもたちに自転車に乗る素晴らしい体験を提供する非営利法人です。アメリカでは最も大きく、最も古い青少年育成自転車組織でもあります。
子どもが自転車に乗って自由に探索をし、自然に親しみ、自転車に乗る喜びを知ってもらうことが目的です。子供たちを豊かな自然にあふれる国立公園や森林、丘陵などのトレイルライドに連れ出します。これは、子供たちにとって地平線を広げるものであり、健康的でアクティブなライフスタイルの基礎にもなりえます。


グループで行動するので、仲間と協調したり、コミュニケーション能力の向上にもなります。初めての体験を通して学んだり、笑ったり、時にはつらい思いをして成長にもつながるでしょう。これは、子どもたちの人生を変える経験になる可能性を秘めています。
この体験を通して、運動能力だけではなく、学業成績が向上することも多いと言います。グループとの交流や体験により、自分自身に自信を持つことにもつながります。自然への理解と認識を育み、大人になっても続く環境意識や価値観の形成にもなるでしょう。
自転車の交通ルールはもちろん、広く運動と栄養についての理解も深まります。マウンテンバイクによる未舗装のトレイルは、体幹が鍛えられたり、バランス感覚なども育むでしょう。こうした活動は、自転車だけでなく、さまざまなスポーツをする身体づくりにも役立つに違いありません。
子どもの肥満が大きな問題となっている北米で、運動をしない子どもたちを少しでも減らす活動でもあります。街で自転車に乗るのとは違い、豊かな自然の中での活動は、子どもたちに冒険心や挑戦する心を育て、独立心や達成感といった貴重な経験をもたらすことでしょう。


活動はトレイルライドだけではありません。学校やコミュニティごとに放課後に集まり、ボランティアの大人から、自転車の基本的なメンテナンスや安全のための知識、交通ルールを学んだりします。ライディングスキルの向上のための練習や、そのほかにもさまざまなプログラムが用意されています。
自分で自転車のメンテナンスをする技術を学ぶことは、自身の安全につながるだけでなく、機械の動作を学ぶなど学業への波及効果もあるそうです。いくつかのワークショップは、職業訓練や雇用に向けた最初のステップになることも少なくないと言います。


この“
Trips For Kids”、マウンテンバイクの殿堂入りを果たした選手であり、社会活動家、環境保護活動家でもある、Marilyn Price さんによって、1988年にカリフォルニア州マリン郡で設立されました。これまで北米全体で23万人超の青少年の生活を豊かにしてきました。
特にアメリカとカナダで最も困窮している青少年をはじめ、あらゆるコミュニティにプログラムが提供されています。シンプルでありながら強力なツールである自転車を使って、体験やスキルだけでなく、夢や希望、健康や生活への意欲、孤独やうつ病、貧困からの脱却など、たくさんのものを提供してきているのです。
素晴らしい活動だと思います。こうした団体のことを知ると、余計に日本で自転車の楽しさを知らない子どもたちが増えていることを残念に感じざるを得ません。たかが自転車と言うなかれ、単なる運動以上のものを子供たちに与えるものであることを、もっと多くの大人に知ってほしいと思います。
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感染抑制対策についても聞かれて困る質問には答えをはぐらかす菅総理。ビジネス客の入国禁止は頑なに拒否、特措法改正もせず、病床数はむしろ減り、政府は何もしてこなかったのに国民にお願いするだけというのも。
Posted by cycleroad at 13:00│
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