コロナ禍で、世界的に自転車に乗る人が大きく増えました。公共交通機関の利用による感染のリスクを回避して、通勤・通学、移動に使う人に加え、外出禁止や自粛下での運動不足やストレス解消に乗る人も増えました。トレーニングジムの感染リスクが高いと敬遠したり、休業したためということもあるでしょう。
世界的に空前の自転車ブームとなり、多くの自転車店の在庫は底をつき、自治体はこぞって臨時に自転車レーンを拡張するなどの対応をとりました。しかし、個人が移動や運動のために自転車に乗るようになっただけではありません。事業面での自転車の活用も広がっています。
コロナによる巣ごもり需要で、ネット通販などの商品配達が増えた運送会社では、カーゴバイクを使ったラストワンマイルの宅配を増やしています。渋滞にかからず、かえって速いですし、小回りが効き、駐車違反も無関係です。環境に配慮し、運転免許を持たない主婦などでも働けるため、人手不足対策にもなります。
フードデリバリーで配達を請け負う、いわゆるギグワーカーも急増しました。ウーバーは、ライドシェア事業がコロナで振るわないこともあって、需要が急増したイーツ事業に力を入れています。日本でも、ウーバイーツや出前館に加え、「Wolt(ウォルト)」、「foodpanda(フードパンダ)」といった事業者が続々と上陸しました。

新しい事業を起こす人たちもいます。ドイツのスタートアップ企業、“
Gorillas”もその一つです。配達員を見ると、フードデリバリーかと思いますが違います。こちらは、いわゆる「ダークストア」と呼ばれている事業を、自転車を使って展開している企業です。
ダークストアといのうは、ネットスーパーを運営する事業ですが、実店舗ではなくネット専用の物流センターから配達する形態です。物流センターには実店舗と同じように商品が並んでいますが、そこへ消費者が直接足を運ぶことはありません。このため、ダークストアと呼ばれるのです。

日本でも、既存の大手スーパーなどが、ネットで注文を受け、店舗からピックアップして配達するところがあります。ネットスーパーと言うと、これが一般的だと思いますが、ネットスーパー専業で店舗は持たず、物流センターから配達する形態です。配達員は直接雇用になります。
届けるものは、食料品や生鮮食品、牛乳などの飲料に加え、洗剤とか市販薬などの日用品です。価格は通常の小売価格ですが、驚くのはその速さです。なんと10分で届けるとうたっているのです。この速さを実現するためにも、自転車の活用は必須ということなのでしょう。


( ↑ これは宣伝画像で、ゴリラの着ぐるみを着て配達するわけではありません。)
午前中に注文して午後に届くのでも早いと思いますが、なんと10分です。これなら、夕食の支度を始めようと思ってから注文しても間に合います。何かのメニューを作ろうと思っていたのに、うっかり買い忘れていた材料とか、切れていることに気づいた調味料を頼むようなことも可能になるでしょう。
コロナ禍で外出したくない人、近所のスーパーへ行くのさえ面倒くさい人、仕事帰りに夕食の買い物をするのが煩わしい人、気分で何を食べたいかコロコロ変わる人などにも魅力的でしょう。10分で届く便利さを味わったら、以後は近所のスーパーへ行くのを止めてしまう人が出てくるかも知れません。
近くて便利なコンビニエンスストアをも凌駕する便利さと言ってもいいでしょう。新鮮な食料品がいつでも手に入りますし、より頻繁に買うようになるに違いありません。いうなれば、ハイパーローカルデリバリー市場に特化したサービスであり、十分に事業として成り立つと考えているようです。もちろんコロナが追い風です。

このコロナ禍で、食料品を自転車で運んでいるのはダークストアだけではありません。ロンドンを拠点として展開する慈善団体、“
Hubbub”が運営している“
Food Connect”も電動アシストのカーゴバイクで食料品を運んでいます。ただ、こちらは営利事業ではありません。
“
Food Connect”は、いわゆる“
Community Fridge”、共同冷蔵庫とか、コミュニティ冷蔵庫と呼ばれる活動です。公共の場などに設置された冷蔵庫で、困っている人は誰でも、その冷蔵庫から食料品を持って帰ることが出来ます。もちろん、代金を支払う必要はありません。


一般家庭の冷蔵庫の中の食品を、家族が勝手に取り出して食べるのと同じように、地域で共有する冷蔵庫を開けて、誰もが勝手に食料品を持って帰ることが可能なのです。当然ながら、冷蔵庫に食料品を入れる人が必要ですが、それは地域の人だったり、慈善団体などの職員だったりします。
ニューヨークの街角などでも、普通の家庭用の冷蔵庫が店の軒先とか道端に置かれていたりします。近所の人が食べ物を持ってきて入れる一方、困っている人が普通に持って帰ります。地域の人の「おすそ分け」感覚です。食料品を消費しきれずに余ってしまった場合に、捨てずに済むことにもなります。


もちろん、余った場合だけでなく、自分用の食料品を買う時に多めに買い、冷蔵庫に入れていく人や、そのために調理したものを入れる人もいます。欧米のキリスト教徒のコミュニティなどでは、地域でチャリティが普通に行われていますが、これもその一つ、助け合いの一種なのです。
“Food Connect”も“Community Fridge”ですが、もう少し規模が大きいものです。近所の住人だけでなく、企業などから余剰の食料、棚ズレ品、消費期限が近いものなどを集めています。提供する企業側もフードロスを防げ、廃棄する費用を減らすことにもなります。
“Food Connect”は、食料品製造企業や地域のスーパー、小売店、レストランなどを電動アシストのカーゴバイクで回って収集し、コミュニティ冷蔵庫に入れたり、あるいは必要な人の家に直接届けたりしているのです。稼働しているコミュニティ冷蔵庫は、約100もあります。
年間、1千トン近い余剰食料が配布され、77500人もの人が助かっています。このコロナ禍では、突然失業するなどして、本当に困っている人は少なくありません。日本にも似た団体がありますが、フードロスを減らす一方で、困っている人を助ける活動なのです。双方に利益があります。

“Food Connect”の場合は冷蔵庫を設置しておくだけでなく、積極的に余剰食品を回収し、必要な人に届けるスタイルをとっているわけです。廃棄をさけて資源を有効活用するのは温暖化ガス削減にもつながります。小回りが効くのもありますが、なるべく自転車を使うのはその理念に逆行しないためでもあります。
“Hubbub”は、そのほかにもさまざまな活動を行っています。例えば、案外家の中に眠っていることが多い、古いスマホを寄付してもらい、必要な人に届ける活動などもあります。もはや重要なライフラインであり、資源でもあるスマホを有効活用することで、ゴミを減らし、生産による温暖化ガスを減らすことになります。
“Food Connect”も、困っている人を助ける慈善活動だけでなく、サステナビリティ、持続可能な社会を実現する活動も広く行っています。その理念の中で、余剰食品の回収や配達にも、なるべく自転車を使いたいと考えるのは自然なことと言えるでしょう。
今回取り上げた、“Gorillas”と、“Food Connect”は、営利が非営利かの違いはあるものの、コロナ禍だからこそ、よりニーズが高まっている事業です。個人の移動や運動、そして宅配やフードデリバリーも含め、コロナで、より自転車が必要とされる場面が広がっているようです。
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菅総理は緊急事態宣言を拡大し国民に協力を求めていますが、特措法の改正、病院の集約と病床確保、2類指定変更、水際対策など、政府がやるべき事を何もやって来なかったことに、まず謝罪すべきではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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