February 07, 2021

社会を支える仕事をする人達

市民の生活を守るために働いている人たちがいます。


エッセンシャルワーカーです。このコロナ禍でよく聞くようになりました。社会を支えるために必要不可欠な仕事に従事している人たちです。警察や消防、医療、電力やガス、水道などのインフラ、公共交通や通信、宅配や物流、食料品や生活必需品の小売り、介護や保育、ゴミの収集など、幅広い業種にわたります。

日本の緊急事態宣言と違って、欧米のロックダウンは罰則を伴った厳しい措置がとられます。小売店などでも、厳密に必要最低限の店を除いて休業を命じられました。コロナ禍では、感染リスクを避けた人々の通勤や必要な移動を自転車が支えたため、自転車店が休業命令を免れたのは記憶に新しいところです。

地域によって多少扱いが違ったところもあったようですが、コロナ禍で人々が自転車で移動する以上、その修理やメンテナンスを担う自転車店の店員は、エッセンシャルワーカーとして捉えられたわけです。多くの店が感染対策を徹底しながら、修理などのニーズに応えました。

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ところで、近年自転車に乗るようになったのは、都市部の住人に限りません。郊外に住む人でも自転車に乗る人は増えています。健康やレクリエーション、エコ、コストなど理由はいろいろですが、このコロナ禍では公共交通機関での感染リスクを避けるため、一層自転車に乗るようになった人も多いでしょう。

そして、それはアメリカ合衆国の先住民、ネイティブアメリカンであるナバホ族の人々も同じです。アリゾナ州、ユタ州、ニューメキシコ州の3州にまたがる、ナバホネイションと呼ばれるナバホ族の準自治領、インディアン保留地に住む人々の中でも、自転車に乗る人が増えました。

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ナバホネイションは、約7万平方キロというアイルランドの国土にも匹敵するような広大な面積があります。しかし、その中に自転車ショップは一軒もありません。最近まで、住人が自転車を修理するためには、保留地外の町の自転車ショップまで、クルマで何時間もかけて行かなければなりませんでした。

時々、ニューヨークなどの都会ならともかく、アメリカの中西部などの都市で自転車なんて移動の役に立つの?と言う人がいます。広大な国土を持つアメリカでは、人々はクルマで移動するのが当たり前で、自転車でなんて移動していられないというイメージがあるのでしょう。

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たしかに中西部などに行けば、隣町へ行くのにクルマで何時間もかかるような町もあります。しかし、住人はいつも隣町と行き来して生活しているわけではありません。日本の町とは多少スケール感が違ったとしても、ふだんの生活圏の範囲、町の一部を移動するのに、自転車で困るわけではありません。

ナバホネイションは広大ですが、その中にナバホ族の人が均等に分散して住んでいるわけではありません。町や集落に集まっています。もちろん域内でも他の町へ行く時、域外へ行くにはクルマが必要ですが、日常での移動は自転車でも足ります。都市部と違って渋滞回避などはないとしても、自転車の利便性は十分にあります。

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ただ、人口は相対的に少ないですし、広大な保留地内の各町に自転車ショップまではありません。自転車ショップが成り立つだけのニーズがないのは否めないわけで、ナバホネイション全体でも、その中に一軒の自転車ショップも無いのは仕方ないところなのでしょう。

趣味のサイクリストならば、ある程度の修理やメンテナンスは出来ると思いますが、普通に自転車を使うだけの人には難しい場合もあります。パンクしただけで困ってしまう人も少なくないでしょう。自転車を使う上において、自転車ショップは必要不可欠なインフラなのです。

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それはナバホ族の人も同じです。これまでも、修理には遠くまで行く必要があって不便な環境にありました。さらに昨年からはコロナ禍で修理も予約が必要になったり、修理の依頼が増えて、なかなか予約がとれないなど、不便な状況になっていました。

そこで、この状態を解決すべく立ち上がった団体があります。“SILVER STALLION”、ニューメキシコ州を拠点に活動している、501(C)団体です。501(C)団体とは、アメリカ合衆国の内国歳入法第501条C項の規定によって、課税を免除されている非営利団体のことです。

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自転車の修理サービスを提供するショップで、コーヒーを出すカフェでもあります。自転車の修理というスキルを習得する機会を若者に提供し、育成することも行っています。昨年の秋から、数人のナバホ族の若者を雇用し、並行して400台以上の自転車を修理しました。

MOBILE RIDE CENTER”という移動式の自転車修理店を立ち上げ、各地で無料の自転車修理イベントを行うなど、人々のニーズに応えています。そのほかにも、寄付を集めて自転車修理スキル習得の奨学金の提供、リサイクル自転車の販売、キッズライドイベントなど、地域貢献のためのさまざまなプログラムを展開しています。

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一般的に、多くの先住民が恵まれた環境にあるとは言えません。自転車が貴重な移動手段という人もいるでしょう。自転車修理は、そうした人を支えるインフラです。今まで地域にいなかった自転車修理というエッセンシャルワーカーを提供したとも言えるでしょう。

移動式の自転車修理という形で人々の生活を支えるだけでなく、これまで地域に自転車ショップが1軒もなかった状態を、技術者の育成やショップ開設のための資材提供などを通して解消しようとしています。また、いろいろなプログラムを通じて、彼らに個人的な充実感や自己実現の機会を提供したいと考えています。

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“SILVER STALLION”のメカニックたちは、この1年のほとんどを道路端で過ごしましたが、充実していたと話します。“MOBILE RIDE CENTER”は、各地を転々としながら人々の自転車を修理し、地域の重要なニーズを満たすことが出来たと実感しているのです。

自転車修理は、人々の生活を支えます。しかし、アメリカに限らず、この分野の支え手がいない地域もあるでしょう。必ずしもNPOが活動できるとは限りません。でも、移動式で広域をカバーすることで、自転車修理というビジネスが成り立つ場合もあるはずです。不足するインフラを補う一つの方法かも知れません。




◇ ◇ ◇

感染者数は減少傾向にあります。一部で期限前でも緊急事態宣言の解除を望む声があるようですが、ここで我慢して十分に減らしたほうが、また増加に転じて再び宣言する事態を招かない為に得策ではないかと思います。

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