日本でも売り上げは増えていますが、世界的に電動アシスト自転車の市場は大きく成長しています。直近ではコロナで、公共交通のリスク回避や運動不足解消などで自転車に乗る人が増えたことも影響していますが、それとは別に、コロナの前から世界各地で大きく売り上げを伸ばしています。
スポーツバイクに乗る趣味のサイクリストには、あまり興味のない車種かも知れません。日本では、時速24キロ未満でしかアシストが認められていないので、スピードが出ずに面白くないとか、航続距離が短いためツーリングなどに向かないこともあるでしょう。

バッテリーが切れたら、ただの重い自転車になってしまうため、私も含めて、電動アシストなどいらないと考えるサイクリストは多いと思います。しかし、単純に移動手段として自転車を使う人にとって、電動アシストは普通の自転車よりもラク、疲れない、汗をかかずに済むなどの点で魅力的です。
乗ってみると確かにラクですし、そもそも自転車がクルマのように渋滞がなく、速くて便利な手段と気づく後押しになっています。車体価格もランニングコストもクルマより大幅に安いですし、駐車場の満車が多い都市部などで、とめるところを探し回らなくて済む、小回りがきいて便利、などと実感するようです。

日本では、電動アシストのママチャリが市場の大半を占めているため、スタイリッシュというイメージはありません。ただ、世界では変わりつつあります。有名な自転車メーカーだけでなく、自転車製造に新規参入するメーカーが続出しており、さまざまなタイプのモデルが登場しています。
国によっては電動アシストではなく、ペダルをこがなくても進む電動自転車、e-bike も自転車と同じように乗れるため人気が高まっています。
例えばこちらは
クラウドファンディングサイトで販売・資金調達していますが、目標額の28倍というような資金が集まっています。


電動アシスト自転車の折りたたみタイプもあります。電車やクルマに載せて移動した先でも使えます。
小径車や悪路に強いファットバイクの電動アシストもありますし、ロードバイクの電動アシストもあります。
HPS 社の電動アシスト・ロードバイクはなんと、重さわずか8.5キロです。
ボトルに見える部分が実はバッテリーなのですが、普通のロードバイクに見えます。言われなければ、電動アシストだとは気づかないでしょう。バッテリーが切れても苦にならない重さです。一般的な日本人の電動アシストのイメージを覆すようなスポーツバイクの電動アシストが続々登場しています。

従来からあるメーカーも黙ってはいません。あの有名な
イタリアのブランド、ビアンキまでもが電動アシスト自転車をラインナップしています。もともと、ロードだけではなく、MTBやクロスバイクなどもつくっていますが、電動アシストのモデルを加えています。
それも一種類ではありません。電動アシストのシティサイクルに加え、電動のロードバイク・E-ROAD、電動のマウンテンバイク・E-MTBなど、スポーツバイクを電動化しています。どれもスタイリッシュで、知らなければ電動アシストだとはわからないでしょう。


ヨーロッパなどでは、カーゴバイクの電動アシストも珍しくありません。むしろ、荷物を運ぶのに電動アシストは必須になっています。最近は新興国でも、地域にあった
電動カーゴバイクを開発する事例が出てきています。欧米では電動アシストを、
サブスクリプション方式でサービスとして提供する会社も登場しています。
電動アシストのモデルは、同等の非電動よりも単価が高くなるため、ビジネスとしても電動を売ろうとする部分があるのでしょう。ただ、単価が高いぶん、盗難に遭った時の被害額が大きくなります。そこで、
ニュージーランドのメーカーは面白い試みを行っています。

小売店や卸売業者に対し、充電器単体では簡単に売らないように促しているのです。自転車本体の所有の証明なしに、追加で充電器は売らないという策です。窃盗犯は、
電動自転車を盗んでも充電することが出来ないため、盗難の抑止になるというアイディアです。
基本的に、そのモデル専用の充電器がなければ充電できないわけですが、普通は充電器と自転車本体を一緒に置いておくことはありません。自転車を盗んでも充電器が手に入らなければ、意味がないわけです。なるほど、これは有効かも知れません。

イギリスには
自転車保険専門の保険会社がありますが、電動アシスト自転車のライダーは、普通の自転車に乗る人より、保険料を安くすると発表しました。調査したところ、アシストなしの人よりアシストありに乗る人のほうが、保険金を請求する可能性が38%も低いことがわかったからです。
アメリカでは、
通称「E-BIKE」法が成立しました。e-bike の購入に対し、30%の税額控除を認める法律です。最大1500ドルまで認められます。電動アシスト自転車の利用を奨励することで、クルマでの移動を減らし、気候変動問題に対しても資するというのが理由です。

このように、電動アシスト自転車も、それを取巻く環境もどんどん変化しています。自転車を使えば、環境負荷の軽減に貢献するのは明らかですが、普通の自転車だと疲れると敬遠していた人が、電動アシスト自転車が普及し始めたことで、積極的に乗るようになってきています。
今、クルマの電動化、EV化が盛んに言われていますが、同じ人間1人の移動をEVにするより、車重の軽い、e-bike にしたほうが桁違いにエネルギーの節約になり、そのぶん温暖化ガスの削減になるのは明らかです。少なくとも都市部などの近距離の移動ならば自転車でも代替出来ます。

非アシストも含め、いま自転車に乗る人がかつてないほど拡大しています。電動ならば自転車にしてもいい、クルマをEVにするより電動アシスト自転車に乗り換えたほうがサスティナブルと考える人が増えています。この伸び、勢いは、EV市場を浸食し、かえって温暖化ガス排出削減に貢献しているとも言えそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
Goto再開という声もあるようですが、また感染拡大に逆戻りしないよう徹底的に減らすべきではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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