スポーツバイクに乗る人は増えていますが、日本ではロードバイクをはじめ、クロスバイクなどオンロード系の自転車の人気が高くなっています。ただ世界的には、マウンテンバイクの人気も高いものがあります。アメリカなどではMTBのほうが売れているくらいです。
走る場所や使い方も違うので、どちらがいいという話ではありませんが、日本の場合、あまりオフロード走行を楽しめる場所が多くないことも影響しているのでしょう。前々回は、オフシーズンのスキー場など、もっとMTBのコースがあってもいいという話を書きました。

コロラド州でマウンテンバイク・パークを個人で開発してしまおうと目論む2人組のことを取り上げ、工夫すれば、意外と少ない金額でも設置できるという話でした。日本では、一般社団法人自転車協会が募集する、「
マウンテンバイクフィールド助成金制度」を使う手もあります。
里山などで、農場や牧畜などに使えないような場所、雑木林の中などでもコースをとることが出来ます。日本の国土は山がちですし、探せば未利用地は見つかるでしょう。でも、マウンテンバイク用のコースをつくるのに向いた場所は、里山やオフシーズンのスキー場などに限りません。

話は飛びますが、先般のアメリカ大統領選ではラストベルトの攻防が勝敗を分けました。ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン、アイオワ、ミネソタといった州が、どちらの支持に傾くかがカギになることは、選挙の前から指摘されていました。
ちなみに、このラストベルトのラストは、“Rust” です。錆という意味で、“Rust Belt” は錆びついた地帯という意味になります。アメリカの製造業が集積する地域ですが、グローバル化で工場が海外へ移転するなどして雇用が失われ、失業者の増加で不況に見舞われた地区なので、両候補の経済政策が注目されました。
オハイオ州の北部に位置するクリーブランドは、まさにこのラストベルトの中央に位置するような街です。企業が撤退して使われなくなった工場が点在しています。中の機械は運び出され、建屋だけが残っている状態です。以前は、別の会社が入居して違う工場になることもありましたが、今はそんな会社は滅多にありません。
工場ではなく、何か違う施設で使うあてでもあるならば、建屋を解体してサラ地にしたりもするでしょうが、そんな計画もありません。工場の大きな建屋だけが残され、打ち捨てられたような状況ですが、ここに目をつけた人がいます。Ray Petro さんという人です。
彼は、この使われなくなった工場の建屋を利用して、マウンテンバイク用のトレイルコースをつくることを思い立ちました。“
Ray's Indoor Mountain Bike Park”と名付けられた、屋内のマウンテンバイク・パークです。1996年に構想され、2004年に実現しました。
広さは16万平方フィート、世界最長の約1マイルのコースを擁する大規模な施設です。屋根と壁と柱だけがあって、がらんどうの広い空間が広がる元工場の建屋は、まさに打って付けの場所だったわけです。廃墟になる運命だった工場が、マウンテンバイカーにとって、夢のような楽園に生まれ変わりました。
屋根も壁もあるので、雨でも濡れることはなく、風に悩まされることもありません。トレイルコースには、さまざまな仕掛けが施され、誰でもライドが楽しめるようになっています。クリーブランドや近隣の住人ならば、郊外に出かけなくても、市内でライドを楽しめるわけです。
初心者からエキスパートまで、あらゆるレベルのライダーが楽しめるようになっており、MTBやBMXも貸してくれます。BMX用のスケートパーク施設も併設されており、パーク競技の練習も出来ます。これは確かに行ってみたくなるような楽しい施設です。



私も屋外で、もっと小規模ですが、このような木でつくられたコースを走ったことがあります。もちろん難しいコースは練習が必要ですし、初心者はおっかなびっくりということになりますが、初めてでも案外走れるものです。ふだんロードばかり走っている場合、新しい感覚が味わえて新鮮だと思います。
常に先を見て、どのように走るか、どうコースどりをするかイメージする必要がありますし、平らな道路を走るのと違って緊張感があり、平衡感覚など脳が受ける刺激も違います。自然のオフロードを走行するのとも、また違った面白さがあります。走ってみると、その楽しさが実感できるのではないかと思います。( ↓ 下の動画参照。)



日本国内でも、BMX用のスケートパークは各地に出来ていると思いますが、このような屋内のマウンテンバイク用のトレイルコースというのは聞きません。あまり詳しくないので、あるかも知れませんが、少なくともこれほど大規模なものはないでしょう。
前々回取り上げた、屋外のマウンテンバイクフィールドの場合、未利用地などを借用し、自然の地形を利用して設置すれば、大きな投資は必要ないと思います。こちらの屋内施設の場合も、木造のコース部分の製作費用はかかりますが、使われなくなった工場が利用できれば、意外に低予算で出来るかも知れません。
確かめたわけではありませんが、先日取り上げた、一般社団法人自転車協会が募集する、「
マウンテンバイクフィールド助成金制度」も利用できる可能性がありそうです。木造のコースも、家屋を解体した廃材とか、古くなったパレットの払い下げを利用するなど工夫すれば、材料費は安く上がるでしょう。
日本でも地域の雇用を創出するため、工業団地などを整備して製造業を誘致しようとする自治体は少なくありませんでした。しかし、やはり人件費の差が大きく海外に移転するなど、企業が撤退してしまったところも多いと思います。建屋だけ残して放置された工場も、探せばあるに違いありません。
そのような物件を安く利用できるとしたら、屋内マウンテンバイクパークも面白いのではないでしょうか。日本ではロードの人気が高いですが、少なくとも他の地域との差別化にはなります。自転車で地域振興しようという自治体も、検討の余地があると思います。
今は感染症対策の問題がありますが、アウトドアではないにせよ、前の人と間隔を空ければ、密にはならないでしょう。空間も大きいですし、換気をすればリスクも下がります。何より、一人で走行するわけですし、手指消毒などを徹底すれば、それほど問題にはならないと思われます。



雨でも運動できる施設という点は、大きなアドバンテージです。雨で他のスポーツをする予定が中止になった人の来場も期待できそうです。今はレジャー施設の集客は厳しいと思いますが、今後収束に向けて人気が出る可能性はあります。ロード系以外の自転車、MTBやBMXのレジャーとして関心が高まるかも知れません。
工場の立地ですから、市街地というわけにはいかないでしょうが、都市の近郊に設置できるなら集客にも有利です。木造の工作物は、イザとなれば移設も出来ると思います。工場が空いている間だけの利用も考えられます。日本でも、こんな施設が出来ることを期待したいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
まだまだワクチンの入荷ペースは遅いようです。他の地域の人は怒るかも知れませんが、公平に広く薄く配って打つより、首都圏など感染者が多い場所を優先し集中的に打つ方が、結果として全国を早く収束させると思います。
Posted by cycleroad at 13:00│
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