April 02, 2021

憎悪ではなく融和をもたらす

ヘイトクライムは世界中で起きています。


いま注目が高まっているのは、アメリカで起きているアジア系住人に対するヘイトクライム、暴行・憎悪犯罪です。トランプ前大統領がことあるごとに、コロナは中国のせいだ、チャイナウイルスだと言っていたことが影響していると言われています。非アジア系のアメリカ人には中国人も、それ以外のアジア人も見分けがつきません。

中国武漢のウイルス研究所からの流出が起源かはともかくとして、発生当初に中国政府が隠ぺいしたことが責められるのは確かでしょう。パンデミックの責任の一部が中国政府にあることは否めないとしても、当然ながらアメリカ在住の中国人に罪はありません。ましてや他のアジア人にはとばっちりでしかありません。

バイデン大統領も事態を憂慮し、悪質なヘイトクライムは間違っている、ヘイトの居場所はないと言明しています。コロナによるストレスも背景にあるとされていますが、ブラック・ライブズ・マターに続いて、アメリカ国民の分断を広げかねない事態です。

移民国家であるアメリカならではの問題かと言えば、そうではありません。移民や難民との軋轢を含めた広い意味でのヘイトクライムや暴力事件は世界各国で多かれ少なかれ起きています。日本でも在日韓国人に対するヘイトスピーチなどが問題になっています。

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ヨーロッパ各国でも、最近ではシリア難民が大量に押し寄せ、イスラム系の移民などがテロを起こしたりしたこともあり、各国で移民や外国人を排斥しようとする動きが起きています。自国民と移民や難民との軋轢は、程度の差はあっても、世界中で起きていると言えるでしょう。

移民国家と言うとアメリカというイメージがありますが、実はドイツも移民の占める割合の多い国です。ドイツの人口の5人に1人は、移民かその子孫などの背景を持つと言われています。ドイツは、ヨーロッパでも有数の移民国家として発展してきた国なのです。

その背景には、第2次世界大戦中にナチスによって追放された住民を帰国させたり、労働力として連行された捕虜や戦争難民などを受け入れてきたことがあります。そうした経緯もあり、ドイツは憲法に政治的迫害を受けた難民を保護する義務を規定している世界でも稀にみる難民受け入れに積極的な国です。

もちろん、ドイツ人の高齢化とそれに伴う労働人口の減少を補うために、政策として移民を受け入れてきたこともあります。近年のシリアやアフリカ北部からの難民も、ドイツは100万人以上を受け入れました。しかし、同時に自国民と移民・難民の間に断絶が起きているのも確かです。

民族も言語も文化も宗教も習慣も、何から何まで違うのですから、なかなか融合が困難なのは想像に難くありません。ドイツ国内でも、同じ国からの難民が集まってコミュニティを作りますし、そうなるとドイツ人との間には壁が出来てしまい、何世代経っても融和しないことも一般的と言います。

ドイツ人の中にも、移民政策に反発する人は少なくありません。なかにはネオナチと呼ばれるような極右のグループなども活動しており、外国人排斥を掲げて過激な事件を起こしています。当然ながらドイツ政府は、移民や難民と自国民の融合を図ろうとさまざまな施策をとっていますが、なかなか容易ではないようです。

もちろん、ドイツ人全てが排他的ではありません。歴史的な経緯も、労働者の不足も、自国の移民政策も理解しています。ドイツ語には、“Willkommenskultur”という言葉があり、歓迎文化と訳されますが、ドイツ人やその各種団体や組織などが外国人、特に移民に対して前向きに歓迎することを表し、またその願いを込めています。

ドイツ人の中にも、なんとか移民・難民と仲良く暮らしたいと考える人は少なくありません。ただ、市民レベルで、言語も文化も宗教も習慣も違うとなると、そう簡単なことではありません。意思疎通をとるだけでも難しいことがあります。知り合いになるきっかけを作るのも難しいでしょう。

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そこで、ベルリンを拠点に活動する“BIKEYGEES”という非営利団体は、女性を自転車に乗れるようにするトレーニングを提供しています。当然、一般的なドイツ人は女の子でも、子供の頃に練習をしているので自転車に乗れます。実はこの組織、主に難民の女性を対象に自転車の乗り方を教えているのです。

ドイツでは自転車は普及していますが、中東やアフリカ北部などから来る難民は、自転車に乗れない女性が少なくありません。内乱に加え、貧困、宗教的な制約などで、特に女性の場合、故国では自転車に触れる機会もなかったという人が多いのです。

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一方で、難民の女性にとって自転車は、非常に貴重な移動手段となりえます。多くはクルマの運転も出来ませんし、クルマを所有することも困難です。自転車に乗れれば、移動や輸送、仕事の獲得など、難民生活で大きな力となりますが、自転車に乗ったことがないわけです。

ドイツ人からすれば、たかが自転車ですが、難民の特に女性にとっては大きな課題なのです。難民キャンプから自立し、仕事を得てドイツ社会に融和し、貧困を抜け出す有力な助けともなるでしょう。このような事実に着目し、難民の女性に自転車のトレーニングという形で支援を行っているのです。( ↓ 動画参照)



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多言語に対応し、交通ルールのレッスンや、自転車の修理も教えています。出身国や宗教、民族や習慣などは問いません。今どこにいるのか、合法的な入国なのかも一切尋ねません。目的は女性が自転車に乗れるようになり、生活に活かせるようにするだけです。主に寄付やボランティアの協力によって活動を展開しています。

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自転車の練習をきっかけにして、難民の女性と地元の住民が仲良くなるチャンスにもなります。場合によっては言葉が通じないかも知れませんが、自転車の練習だけだったら、カタコトでも用は足ります。自転車の練習という実用を提供するだけでなく、難民との融和も期待できる事業なのです。数々の表彰も受けています。

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自転車のトレーニングが無料で受けられることは、難民の女性にとってメリットです。一方、自転車の練習をしていると、すぐに仲良くなれることが多いのも、この組織のスタッフにとっての利点です。必要でも自転車が買えない人には、自転車を提供することもしています。

最初は警戒している難民女性もいます。ドイツに来ても虐げられてきた境遇を考えれば無理もありません。しかし、自転車の練習をするうちに、その瞳に楽しさや喜びの色が出てくるのは見逃せません。自転車に乗れるようになって喜びにあふれる表情を見るのは、スタッフにとっても喜びなのです。

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これは単なる自転車を通したボランティアにとどまらず、排外主義や暴力を否定し、人々の融和やドイツの寛容を広げていく活動と言えるでしょう。実は、“BIKEYGEES”のような活動をする団体は、各国にあります。アメリカにも、難民向けの活動だけではありませんが、同種の活動を展開する組織があります。

世界中でヘイトクライムが起きていますが、今始まったことではありません。国によって戦乱や弾圧、独裁などで難民にならざるを得ない人、移民を目指す人も後を絶ちません。移民と住人との民族的な軋轢や暴力もなくならないでしょう。しかし、それを無くそうと努力している人たちがいるのも事実です。




◇ 日々の雑感 ◇

日本は圧倒的にワクチン接種が遅れています。欧米で承認されて日本で無効は考えづらいので、アストラゼネカやモデルナも国内の治験などと言わずに、緊急承認し輸入して接種するという判断がなぜ出来ないのでしょうか。


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