最近は一人で行くソロキャンプが流行っているようですし、クルマにキャンプ用品一式を積んで出かけるオートキャンプをする人も多いでしょう。グランピングと呼ばれる、快適で至れり尽くせりのキャンプもあれば、ナイフ一本と火打石などで、何も施設が無い場所で野宿するようなキャンプもあります。
学校行事としての林間学校、教育の一環どしてのキャンプもあります。呼び方はいろいろだと思いますが、テントを張ったり飯盒炊爨をしたり、自然の中で過ごすことは、特に都会の子どもにとって貴重な経験になるでしょう。思った以上に、いろいろなことを学べるはずです。

どのようなキャンプを選択するかは人それぞれですが、子どもの教育を考えたキャンプならば、快適さではなく、やはりある程度の不便さが必要でしょう。炊飯器どころか、お米を炊かずにコンビニ弁当や料理宅配で済ます家もあるようですから、子どもにとって飯盒炊爨で焦げたご飯を食べる経験は強烈に違いありません。
電子レンジやIHヒーターしか使ったことのない子どもが火を起こし、直火で炊くのは、オートキャンプで炊飯器を持参しコンセントにつなぐのとは訳が違います。水道ではなく川から水を汲んできて、食洗器ではなく手で食器を洗うのも含め、自分で一からつくった食事の味は格別でしょう。

現代文明にどっぷり浸かり、デジタルネイティブな今の子どもは、スマホをタップすれば何でも手に入ると思っていたりします。キャッシュレスでお金の感覚がないため、何でもまた注文すればいいと思っていて、もったいない、ありがたいという感覚に乏しい子どももいると言います。
親も料理をしないので家に包丁が1本も無く、弁当やお惣菜ばかりなので、野菜にしろ肉や魚にしろ、元の形を知らない子供もいたりします。当然ながら農作物を育てたり、魚をとったり、食べ物をつくる手間も知らなければ、どれほどの労力がかかっいるか想像がつかない子どもは多いはずです。
キャンプは、食事を1食分用意するだけでも、どれほど手間がかかるかを体験できます。不便さを経験して、文明的な生活のありがたさを知ることも貴重でしょう。子供向けのキャンプには、ある程度の不便さ、当たり前にあるものが無いという環境が求められることになります。


さて、アメリカ、ニューハンプシャー州ストラットフォードに、BeamCamp というキャンプ場があります。ニューイングランドの森の中にある自然あふれるキャンプ場です。ここで、子どものキャンプ用に、パンをつくる施設を建てることになりました。
日本でならお米で飯盒炊爨ということになるでしょうが、アメリカの子ども達なのでパンを自分たちでつくるところから経験させようというわけです。アメリカでもパンは買ってくるものです。趣味でパン作りをする家庭は別として、昔のように小麦から自分の家でパンをつくったりしません。


小麦からつくらせるわけですが、当然ながらキャンプ場では、電気もガスも利用できません。燃料は薪だけ、動力は人の力だけです。ただ、臼や杵を使って、文字通り手作業で小麦を粉にするところから子どもたちにやらせるのは大変です。手間も時間もかかりすぎて、キャンプ向けには実用的ではありません。
しかし、せめて粉を挽くところから経験させないと、その労力や大変さが実感できません。そこで、
StudioMicat というデザインスタジオに依頼して、“
Brawn&Bread”というパン焼き施設を設計してもらいました。電気もガスも使わず、粉を挽くのは人力です。


でも、手作業では大変すぎるので、ペダルを取り付けて足で漕ぐようにしました。自転車に乗るスタイルです。手より足のほうが力が出ますし、機械仕掛けなので臼での粉挽きのコツも不要、子供たちもペダルをこぐのなら馴染みがあります。それでも、粉を挽くためには相応の労力がかかります。
出来た小麦粉を練ってパン生地をつくり、かまどで焼きます。小麦を1斤のパンにするまでのプロセスが自分たちだけで出来ます。パンという毎日の必需品を手に入れる労力が実感できるわけです。キャンプ場に常設されており、最大150人のキャンパーとスタッフに毎日焼きたてのパンを提供出来ます。


ちなみに、この製パン施設自体も、大人の指導を受けながら11歳から17歳のキャンプに来ている子供たちによって建てられました。ふだんはゲームなどにしか熱中しない子供たちにとって、全く初めての体験ですが楽しい作業だったようです。( ↓ 動画参照。)
クルマを使えば、遠い距離でもラクに早く着けます。しかし、それでは道中の移動の労力は実感出来ません。一方、徒歩では時間がかかり過ぎて現実的ではありません。自転車ならば自分の力で走破できて、徒歩より速く現実的です。一からのパンづくりも、自転車くらいがちょうどよかったようです。
◇ 日々の雑感 ◇
白血病を克服した池江璃花子選手が日本選手権100mバタで優勝、リレー五輪代表入り決定には感動しました。
Posted by cycleroad at 13:00│
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