April 14, 2021

自転車盗防止へのアプローチ

自転車盗はサイクリストの敵です。


このことは世界共通と言えるでしょう。自転車の利用度にもよりますが、どこの国、どこの都市でも多かれ少なかれ自転車を盗む犯罪者がいて、盗まれる被害者がいます。屋外などに置かれた自転車を盗むのは、建物への侵入の必要もなく、カッターなどの道具があれば容易で敷居の低い犯罪なのも確かでしょう。

今般のコロナウイルスのパンデミックでは、世界的な自転車ブームとなりました。公共交通機関での感染リスクを避けたり、ロックダウンによる運動不足解消のため、多くの人が自転車に乗るようになりました。各都市には急ごしらえの臨時の自転車レーンが多数設置され、恒久的なレーンも続々と整備されました。

自転車は記録的な売り上げを記録したため、新品の在庫が払底し、いまだに多くの国、都市で品不足の状態が続いています。新品の自転車が買えないため、中古自転車のニーズも急増しました。このことが、自転車盗を増やした面もあると指摘されています。

飲食店など中心としたサービス業では、多くの人が職を失ったことも犯罪増加の背景にあるのかも知れません。アルバイトが出来なくなり、困窮する学生も増えました。自転車不足の状況で売りさばけるため、手っ取り早く自転車盗で現金を都合しようとした人も増えたものと思われます。

PentaLockPentaLock

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自転車に乗る人が大幅に増えたことが、自転車盗の件数も増やした面があるわけですが、この状況を打開できないか模索する人たちもいます。デンマークのスタートアップ、PentaLock社もその一つです。2016年に創業した2人のエンジニアが、4年間製品開発を続けてきました。

出来上がったのが“PentaLock”です。これまでのようなロックとは違います。BB、ボトムブラケットがロックになっています。BBとロックが完全に統合されており、泥棒はこのBBを壊すことなく自転車を盗むことは出来ません。盗んだとしても、乗ることも出来なければ売ることも出来ないということになります。

PentaLockPentaLock

PentaLock

この“PentaLock”をロックすると、ペダルを回す事ができなくなります。普通の自転車用と電動アシスト自転車用のものがあり、後者はすべての、e-bike機能(ディスプレイ、モーター、コントローラー、ライトなど)をオフにして動かなくしてしまいます。ロックを解除すれば元通り、とてもスマートで便利なロックです。

さらに警報システムが搭載されており、自転車が盗まれそうになると自動的に検出し、100デシベルの大音量のアラームが鳴ります。キーは、Bluetoothを利用したワイヤレスで操作します。基本的にどんなタイプの自転車にも適合します。なるほど新しい発想です。

( ← 動画参照。)

この開発には、自転車メーカーや警察、保険会社、元プロの自転車泥棒まで、多くの関係者が参加しました。狙ったわけではないのですが、ちょうど、コロナのパンデミックで盗難防止ニーズが拡大するこの時期に開発が完了し、発表することが出来ました。、新たな自転車盗難防止ソリューションだとアピールしています。

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イギリスはロンドンを中心に展開する、自転車駐輪サービスの、“Bike-Drop”も、このコロナ禍をチャンスにしようと考えています。主な客層は、ロンドンに自転車で通勤するビジネスマンです。彼らの自転車を店舗で預かり、仕事をしている間、安全に保管するサービスです。日ごと、週ごと、月ごとの契約があります。

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必要に応じて、実費でパンク修理やメンテナンスなども行います。電動アシストであれば無料で充電もします。ロンドン中心街では公共の駐輪施設が十分でなく、会社の専用の駐輪場がなく、オフィスの中にも持ち込めないビジネスマンが大勢います。ニーズは十分にあります。

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コロナで自転車通勤が急増していた2020年の9月、市内の3か所からサービスを始めました。自転車盗の増加が自転車通勤者を悩ませている中で、まさに時宜を得た事業と言えるでしょう。さらに、飲食業などの閉店、撤退が相次いでおり、市内の一等地に新たな店舗をオープンさせるチャンスでもありました。

オーストラリアには各地に“Police Citizens Youth Club”、警察と地元市民のコミュニティによるユースクラブという非営利の組織があります。クイーンズランド州ローガンの“PCYC” は、青少年の更生プログラムとして、自転車メンテナンスを取り入れました。

PCYC LoganPCYC Logan

自転車盗は少年の非行の入り口と言われています。自転車盗だけではありませんが、罪を犯した青少年たちの更生を助けるプログラムです。8週間にわたり、4〜5人の青少年グループと警察官が組んで、ローガン警察に押収され、引き取り手のいない自転車を修復するのが仕事です。10歳から15歳が対象です。

こうしたプログラムを通して、再び罪を犯し、少年院などに戻ることがないようにするわけです。じっくりと手仕事に取り組むことで、多くの子供たちは精神的な落ち着きを取り戻します。作業を通して、自転車のメンテナンスの技術も身につきます。ニーズが拡大しているので、将来の就職に役立つこともあるでしょう。

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罪を犯すような青少年の多くは、警察を毛嫌いしています。しかし、警察官と一緒に仕事に取り組む中で、警察に対する見方が変わる子どもも多いと言います。敬意や信頼感を持つようになることもあります。警察の権威を高めるのが目的ではありませんが、今までの間違った先入観や犯罪に対する意識を変えることが重要です。

一つの目的に向かって共同で作業を進める中で、個人的な信頼が形成されます。少年たちの個人的に抱える問題を理解し、その解決に導く糸口を掴むこともあります。日常的な生活態度が改まったり、親への感謝や他人への思いやり、親切にすることなどに目覚める子どももいます。

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このプログラムの発案者であり、熱心なサイクリストでもある、Mick Newell 巡査部長は、この手の作業に自転車のメンテナンスは絶好だと言います。木工や金属加工でもいいのでしょうが、身近な自転車の修理や組立のほうが、実用的で興味もわきやすい面はあるでしょう。修理後は、本当に困っている人に贈呈されます。

自転車を自分の手で修復すれば、自転車に対する理解も進み、愛着もわくでしょう。盗んで売りさばく対象という見方が変わったり、愛車を盗まれた人の気持ちがわかるようになるかも知れません。盗難防止への効果は限られますが、少なくとも自転車盗という行為を繰り返す非行少年を減らしたいと考えています。

( ← 動画参照。)

コロナによって、これまでにもまして自転車盗が増えています。一方、そのことがまた各地で自転車盗を防いだり、犯行の機会を減らす取り組みを促してもいます。アプローチはいろいろですが、人々の地道な取り組みが少しずつでも実を結び、犯罪減少につながることを期待したいものです。




◇ 日々の雑感 ◇

諸外国と桁違いに感染者が少ないのに医療ひっ迫、もう1年以上経つのにコロナ病床が少なすぎです。国や自治体が主導して病院の役割分担をするなど大幅拡大すべきです。国民に自粛要請するしか能がないのでしょうか。

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