自転車にはクルマのような反則金、いわゆる青キップのような制度がないため、摘発されるといきなり赤キップで犯罪としての前科が残ります。このため、実際に起訴されることが少なく、実質的な抑止力となっていないのが問題でした。クルマとの不公平さも指摘されるところでしたが、新しい制度の創設が検討されています。
自転車に少額違反金 取り締まりの新制度創設へ 14歳以上検討
警察庁の有識者検討会は15日、自転車運転の取り締まりについて、新たな違反金制度の創設を求める中間報告書をまとめた。自転車運転が摘発されても起訴される割合が極めて低い現状を踏まえ、少額の違反金を支払わせる枠組みを作ることで、多くの違反者の責任を問うことを求めた。
警察庁は新制度の創設に向け、道路交通法の改正を視野に検討を始める。検討会は立ち乗り二輪車「電動キックスケーター」などの普及で交通環境が複雑になることを見据え、自転車の違反者に対する取り締まり強化の必要性を指摘した。
新制度では交通違反をした自転車の運転者に違反金の支払いを求める。刑事罰とはせず、前科はつかない。対象は14歳以上を目安に検討し、運転免許証やマイナンバーカード、学生証といった身分証明書などで本人確認する見込みだ。自転車には運転免許制度がないため、車やバイクのような点数制度は作らない。
警察は2006年以降、信号無視など悪質な自転車運転の摘発を強化しており、20年の摘発は2万5465件で06年と比べて40倍超に増えた。摘発の際は大半のケースで刑事手続きに入ることを示す「交通切符」(赤切符)を交付。検察が略式起訴すれば裁判所が罰金などを科している。しかし、道交法違反罪で実際に起訴されるのは1〜2%にとどまる。
罰金となれば前科として残るため、検察側は極めて悪質な違反以外は他の犯罪とのバランスを考慮し、起訴することに消極的になっているとみられる。
車やバイクと異なり、自転車には「交通反則切符」(青切符)の制度がない。車やバイクの場合、一時停止をしないなど比較的軽い違反をすれば、青切符を切られて反則金の納付を求められる。しかし、刑事罰ではないため納付すれば前科はつかない仕組みになっている。
報告書は赤切符の制度による自転車の取り締まりについて「刑罰的な責任追及が著しく不十分なものにとどまっている」と指摘。現在の制度に代わるものとして「少額の違反金など、違反の抑止のために実効性のある方法を検討すべきだ」と訴えている。(2021/4/15 毎日新聞)
自転車利用者のマナーの悪さ、交通ルール違反の多さの問題は、たびたび指摘されるところです。危険でもあり、クルマのドライバーや歩行者として、苦々しく思っている人は多いでしょう。この状態を改めるため、少額の違反金制度を導入しようということのようです。
おそらく、趣旨には多くの人が賛成するのではないでしょうか。危険という点では、交通ルールを遵守しているサイクリストにとっても脅威であり、自転車乗りの中でも賛同する人は多いかも知れません。もし、危険な違法自転車が減るならば、多くのサイクリストにとってもメリットがあります。
しかし、異論もあるでしょう。まず、実効性が伴うのかという疑問があります。どうやって本人確認するのかという点です。記事には「運転免許証やマイナンバーカード、学生証といった身分証明書などで本人確認する」とありますが、携行していない場合はどうするのでしょうか。
反則金を払いたくないと、身分証明書を持っていないと主張する人も出てくるでしょう。住所氏名を尋ねられて虚偽の申告をしても、確認のしようがありません。もしくは確認に相当な手間がかかります。この点をクリアするため、免許証や許可証のようなものを発行し、携行を義務付けるようになる可能性があります。
これは膨大な行政の手間を発生させます。どういう形になるにせよ、発行・照会機関などが必要になるでしょう。そして大きな利権を生みます。わざわざ警察官僚の天下り先を作るようなものです。違反金制度に実効性をもたらすためとは言え、大きな経費がかかり、私たちが余計な負担をすることになります。この点が問題です。
すでに実例があります。クルマの運転免許関係は利権だらけです。例えば交通安全協会、全国組織もあれば各都道府県ごとにもあります。その職員の多くは退職した警察官や警察官僚の天下りです。免許をお持ちの方なら免許更新の際に、あたかも義務かのように加入を求められ、お金を支払ったことがあるのではないでしょうか。
実は任意で、まったく入会する必要はありません。入会しても何の意味もない証拠に、警察官で加入している人は皆無だと言います。さらに、こうした組織が運転免許講習などを独占受注しています。そして、5年ほど在職するだけで数千万の退職金ほかが支払われます。過去には横領などの不祥事も起きています。
交通違反の取締りの問題もあります。俗に「ネズミ捕り」と呼ばれる、ワナのようなスピード違反の取締りに疑問を感じている人は多いでしょう。それ以外の違反についても、警察は否定しますが、警察官にノルマが課されていたことが明らかになった事例もあります。恣意的な取締りがあると指摘されています。
交通反則金はいったん国庫に入りますが、それが交付金として各公安委員会に配分されることになっています。道路の設備などに使われ、人件費として使われることはないと言いますが、お金に色はついていません。この交付金の歳入予定額は予算に計上されており、予定通り集めるためにノルマが必要なのは明らかでしょう。
自転車に違反金制度が導入されれば、交通違反の一定の抑止効果が得られるのは確かだと思います。しかし、国民から吸い上げられた違反金が、天下りした警察官僚の懐を肥やすことになるのも容易に推察されます。こうした利権を増やすことになるのが問題です。
違反金徴収のためには、免許証のようなものが必要になる可能性がありますが、自転車に免許証がある国というのは聞いたことがありません。全ての国の事情を知っているわけではありませんが、日本と同じような赤キップに当たる制度はどこでもあるものの、免許があって反則金制度がある国というのは無いのではないでしょうか。
ちなみに、中国は除きます。中国には至るところに監視カメラが設置されており、顔認証で個人が特定されます。歩行者が信号無視しただけでも、場合によっては街頭のモニターで顔が暴露されたり、罰金が科されたりします。中国では自転車の違反金も容易に徴収できるでしょう。監視国家と言われる所以です。
違反金を導入する前に、交通ルールの教育を徹底すべきとの意見もあるでしょう。自転車の法規を正確に知らない人は多く、知らずに違反してもめることもありそうです。14歳以上にするという区切りの根拠も不明です。子どもから金を取れとは言いませんが、小中学生でも危険な違反者はたくさんいます。
個人的に思うのは、違反金制度の導入の前に、自転車の車道走行を徹底すべきではないか、ということです。例えば、車道を逆走すれば違反ですが、歩道ならば違反になりません。違反キップを切られるのはイヤだからと、歩道走行する人を増やす可能性もあります。
これだけ自転車の違反が多く危険な状態なのは、そもそも、自転車を歩道走行にしたのが原因だと思います。自転車を歩道走行させているのは日本だけです。日本以外は当然のこととして車道走行で、車両の一種として走行します。一定の秩序が出来ており、わざわざ危険な違法行為をする人は多くありません。
日本でも、もともと自転車は車道走行でした。それが、高度経済成長期にクルマとの事故の増加が問題とされ、道路整備が追い付かないことを理由に、緊急避難措置として自転車を歩道走行させたのです。そして交通行政の怠慢で、実質的には50年にわたって、そのままにしてしまいました。
50年以上も続けていれば、歩道走行が当たり前になってしまいます。歩道だったら右側だろうが駅前広場だろうが関係ありません。歩いているのと同じ感覚で、特に交通ルールを意識することなく走っているのです。これが、自転車のルールが守られない状況を形成したのは明らかでしょう。
日本の交通行政の痛恨の失敗です。近年になって、警察も方針を大転換させましたが、まだまだ歩道走行が当たり前のようになっています。この点を正さずに、秩序を形成するのには無理があります。ルールを守らせるためとは言え、このままの状態で違反金をとろうというのは間違っているのではないでしょうか。
そもそも、自転車のルールが守られないような状態にしたのは警察であり、いわば無法状態にしておいて、今度はそれを理由に違反金をとるのは、理不尽だと思うのです。マッチポンプと言われても仕方ありません。それに、自転車が歩道も車道も走行できる状態では、取締りも徹底できないのではないでしょうか。
もちろん、50年以上にわたって歩道走行にしてきたため、いきなり車道走行は怖いという人も多いでしょう。道路の整備も自転車の歩道走行を前提に進められてきたため、車道走行が危険な場所もあります。ドライバーも自転車は歩道を走るものと思っている人が大多数という調査もあります。
ですから、まず自転車の走行空間の整備を行うべきです。自転車レーンです。全国の主要道の8割には、すぐにでも設置できる余地があるという報告もあります。警察や国交省なども、今までのような歩道の通行帯ではなく、今後は車道への自転車レーンを設置していくとしていますが遅々として進んでいません。
一定程度、自転車の走行空間が整備され、自転車の利用者が車両としての自覚を持って車道走行をすれば、諸外国のように自転車の走行に秩序が形成されていくでしょう。そうなれば諸外国と同じように、違反金制度など不要になります。秩序を形成するのに、違反金だけが方法とは限りません。
違反金制度を創設しても、違反をとられるのがイヤだからと歩道走行されたら、歩道のカオス状態は変わりません。取締りも難しいのではないでしょうか。自転車が歩道走行して、中には暴走する人がいる限り、歩行者が危険な状態も解消されません。
私は、海外でもあちこちの国で自転車に乗ったことがありますが、少なくとも先進国では、自転車の走行に一定の秩序やモラルが出来ています。もちろん違反者がいないとは言いませんが、わざわざ危険なのに違反をする人は多くないと思います。当たり前の車道走行だからです。日本のように歩行者感覚で乗っていないからでしょう。
つまり、きちんと車道に自転車の走行空間を確保し、全世界の常識である車道走行を徹底させれば、自ずと秩序が出来て、違反金制度などいらなくなると思います。事実、自転車の反則金を制度化している国は、私の知る限りありません(中国を除く)。
前半で述べたように、違反金を導入しようとすると免許や許可、照会などの制度が必要となり、いろいろと無理や無駄が出ます。せっかく自由な乗り物なのに、自転車に免許なんて世界の笑いものです。自転車の歩道走行から始まって、どんどん世界の当たり前からズレていくだけです。
警察庁の有識者検討会なるものが、どのような意図、あるいは目論見で違反金を導入しようとしているのかは知りません。しかし、あまり無理筋の方策を探るのではなく、まず本来あるべき姿に戻して秩序の確立を目指し、世界的な常識に沿った、ごく自然で当たり前の状態に持って行くのが正しい道なのではないでしょうか。
◇ 日々の雑感 ◇
水面下で交渉が進んでいたようで9月までにワクチン全員分が供給されそうです。後は、一刻も早く摂取が進むよう自治体に供給スケジュールを伝え、接種者の確保を支援するなど万全の体制・準備を整えてほしいものです。
いつもの内容と違って、かなり感情的になられていませんか。警察に関する説明は真実ですか?。根拠のない憶測ではありませんか?さも事実の様に記載するのはいかがなものかと思いますよ。責任問題になりかねませんからね。