May 02, 2021

憂鬱やイライラした心を癒す

新型コロナウイルスの感染がまた拡大しています。


東京や大阪など4都府県に3度めの緊急事態宣言、ほか7県にまん延防止等重点措置が出されており、不要不急の外出や、他の都道府県への移動や旅行を控えること、観光地を抱える県では遊びに来ないようにとの呼びかけがされています。昨年に続いて我慢のゴールデンウイークとなっています。

大阪などでは医療が逼迫しています。一方で人々には自粛疲れが広がり、路上や公園などで飲んだりマスクを外して騒ぐ人も出てきています。要請に応じず深夜まで営業を続ける店があったり、認証制度の実施状況を覆面調査をする自治体が出るなど、一部では反感や不信感も広がっています。

緊急事態宣言認証制度

もちろん、日本に限ったことではありません。一時減少傾向にあった世界の新規感染者数は、再び増加に転じて過去一番多かった時期を超えました。海外ではロックダウンなど強制力のある措置がとられて、人々のストレスも、より大きいでしょう。デモや暴動が起こっている国、都市もあります。

イギリスやイスラエル、ニュージーランドといった蔓延阻止に成功して、従前の暮らしを取り戻しつつある国がある一方で、インドなど苦しい状況に陥っている国もあります。EU諸国の中でも、ドイツやオランダなどでは、なかなか感染者が減らず、規制措置が断続的に続いている国があります。

夜間外出禁止に抗議夜間外出禁止に抗議

オランダはまだピーク時の7割近くで、夜間外出禁止に反発した抗議デモが広がり、警官隊との衝突が起きた1月以来の水準です。長期間続いて大きな反発をもたらした夜間外出禁止令は4月末で解除されましたが、時期尚早との声も多く、国民の反発や経済とのバランスを考えたルッテ首相のリスク覚悟の苦渋の決断だったようです。

オランダの人々にもストレスがたまっています。もちろん、市民同士がいがみ合っても仕方ないことですし、イライラしても始まりません。しかし、抑圧された期間が長引き、我慢を強いられる状態が続いて、人々は精神的な余裕を失い、ギスギスしているのは否めないようです。

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さて、そんな中で首都アムステルダムには、街角に人々が癒されている光景があります。写真のような、花で飾られた自転車です。ご存知の通り、自転車大国のオランダでは、街にたくさんの自転車がとめられているのは見慣れた光景ですが、その中で花が満載の自転車はひときわ目立っています。

たくさんの花を見て、ふと和む人は少なくないでしょう。自然と顔がほころび、自分が険しい表情をして、肩に力が入っていたことに気づいたりします。ストレスで余裕のなくなっていた自分の気持ちに気づき、他人に優しく接することが出来たりもするでしょう。こういうご時世だけに、余計に貴重な癒しかも知れません。

この自転車を置いているのは、Warren Gregory さんです。地元では、“Flower Bike Man”と呼ばれています。このパンデミックで10人に1人以上が感染し、失業率は全国平均の3倍となり、観光客も激減して苦しんでいるアムステルダム市民に、忘れていた笑顔を思い出させています。

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1台や2台ではありません。あちこちの街角に、ときに10台以上のフラワーバイクが展開されます。彼は自分の自転車が、街を行く人たちに笑顔をもたらすことに喜びを感じ、多くの自転車を花で飾って置いているのです。この自転車を見た人は自然と笑顔になり、それは伝染すると言います。

コロナで荒んだ日々の中、この花自転車を見て、和んだり癒されたりする人は少なくないでしょう。しかし、実はこのコロナ禍で始めたものではありません。パンデミックの前から彼はフラワーバイクを制作しており、街のアーティスト、フラワーバイクマンとして、一部では知られていました。

一番最初は17年ほど前でした。元はアートでなく目印だったのです。Warren Gregory さんの妻、Michelle さんは、てんかんに苦しんでいました。その症状で記憶の一部が飛ぶことがあったのです。アムステルダム中央駅近くに置いた自分の自転車の場所を忘れてしまい、探せないことがありました。

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そこで、Warren さんは遠くからでも一目でわかるように、花をいっぱい飾り付けました。これで彼女は二度と自分の自転車を見失うことはなくなりました。その後、Michelle さんの治療のため夫婦は、Warren さんの出身地、アメリカのフロリダ州ターポン・スプリングスに渡りました。

フロリダでは、古い自転車を購入して装飾を施し、何台も置いたことがありました。Michelle さんが自転車に乗って家に帰る道を思い出すのを助ける目印です。ルート上に混乱しやすい場所があったからです。元のフラワーバイクは、全て奥さんへの愛情だったのです。そして、夫婦はアムステルダムに戻ってきました。

もともとオランダからの移民の曽孫だった、Warren さんがオランダへ移住するのは帰郷のようなものです。フロリダのように暑くなく、四季があるところも気に入っています。医療費の高いアメリカと違い、Michelle さんが服用する薬がフロリダの70分の1という安さなのも理由の一つです。

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Warren さん自身も腰を手術したため歩くのは苦手ですが、サイクリングだと痛みはほとんどありません。オランダの自転車文化も気に入っている理由の一つです。病気で眠気を催すことが多くなり、残念ながら、Michelle さんが自転車に乗る回数は減っていますが、Warren さんは街に置くフラワーバイクをつくり続けています。

市内の病院の前に置いたこともあります。それは、Michelle さんの心臓が止まった時に、2度も命を救ってくれた医師に対する感謝でした。アムステルダムでの生活でもいろいろなことがあったので、一台一台の作品には、それぞれにメッセージが込められているものもあります。

そしてパンデミックが始まってからは、人々が落ち込んだり、イライラしたり、苦しんでいる中で、希望の象徴として置くことにしました。パンデミックの最前線で闘う医療従事者への感謝と応援の気持ちを表すために置いたものもあります。自転車の回りにメッセージを書いた紙を貼る時もあります。

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このフラワーバイクに癒しをもらって、支持する市民がいる一方で、自転車を盗んだり、花を抜いたり壊す人もいます。なぜそういうことをする人がいるのか、彼にはわかりません。でも、フラワーバイクを置くのを止める気はありません。もっと置いてやろうという気になります。

フラワーバイクは、彼が自費で制作しています。市民の中にはその費用を支援しようとクラウドファンディングなどを使って募金を集め、Warren さんに届けてくれる人も出てきました。彼は障害年金で暮らしており、治療費などもかかるため、決して裕福なわけではありません。

彼はオランダでよく見られる、運河に浮かんだ小さなキャビンボートに住んでいます。オランダ滞在に必要なビザ取得のためには、銀行口座に残高が必要なのですが、支援してもらったお金を、自分たちより苦しんでいるホームレスの人のために使ってしまうこともあります。

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市民の多くは、当然ながらフラワーバイクマンの身の上など知りません。Warren さんは、自分の悩みで人々を煩わせたくありません。支援を自分から求めることもしません。ですが、この素晴らしい活動に共感するとともに、彼の置かれている状況を知った有志が、自主的に募金活動を展開しているのです。

彼は、街を行く人が彼の自転車を見て笑顔になるのが好きです。そして、それが伝染するかのように広がっていくのが喜びです。人々の笑顔が激減している今こそ、人々を笑顔にするものが必要だと感じています。そして、人々が笑顔になるのを見て、自分も喜びをもらっているのです。( ↓ 動画参照。)



日本は、海外に比べて相対的に緩い措置ですが、国民の間に同調圧力が強いこともあり、人々が苛立つ面もあるのでしょう。いわゆる自粛警察と呼ばれるような行為や、感染した人に対する嫌がらせなども起きているようです。中には、感染もしていないのに医療従事者の子どもというだけで受け入れ拒否する施設もあると聞きます。

悪いのはコロナであり、人間同士がいがみ合っても仕方ありません。この状況下では誰がいつ感染してしもおかしくないわけで、お互いにいたわり、ともに励ましあうべきでしょう。たしかにストレスがたまるのは否めませんが、それで疲れて感染対策を疎かにしたり、マスクを外して騒いだりすれば、ウイルスの思うつぼです。

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いや、ウイルスは考えないとしても、感染経路を広げるような行動をしてしまっては、結果としてウイルスの生存戦略に合致してしまいます。人間同士が助け合わなければ、病気そのもの以外でも傷ついたり、苦しむ人を増やし、社会全体のダメージを大きくし、禍根を残すことにもなるでしょう。

あまり数字には現れてきませんが、うつ病のような症状になったり、メンタル的に苦しむ人もかなりの割合になっているとも指摘されています。イライラしたり、鬱屈する気持ちをふと和らげ、周りの人に対しても優しくなれるフラワーバイクのようなものは、日本でも必要とされているのかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

現地の報道とほぼ同時に日本国内でもインド型変異種が発見されています。日本の検疫は強制でなく自主隔離要請であるなどの不備が指摘されています。政府の水際対策が緩ければ国民の我慢も無駄になりかねません。

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