このたび、電動アシスト3輪、「
noslisu(ノスリス)」という自転車が、日本のクラウドファンディングサイト、「
Makuake」で限定販売されました。オートバイも製造している川崎重工が開発した、前が2輪のトライクです。トライク自体は新しいものではありませんが、気軽な移動サービスを目指すプロジェクトとあります。
仕様として、電動アシスト自転車タイプとフル電動タイプがあります。日本ではフル電動は自転車として認められないので、原動機付き自転車扱いでナンバーなどが必要となります。さらに、道路交通法上の区分はクルマとなるので普通免許が必要ですが、EVの扱いなのでヘルメット着用の義務はありません。
前の2輪が車体と連動して傾くチルト機構を搭載しているので、普通の自転車の感覚で乗れます。3輪ですから悪路などでも安定して走行でき、2輪と違ってスタンドなしで自立できるのも特徴です。女性や高齢者にも扱いやすく、積載能力も高い新しいスタイルの3輪電動ビークルとしています。
川崎重工業社内の公募制度から生まれました。今後ユーザーへの聞き取りなどをした上で、2022年度の一般販売を目指すとしています。ノスリスというネーミングは、「私たちは自由だ」という意味のラテン語の頭文字をつなげたものだそうです。
今後の移動の形態は、SaaS になっていくとされる中、さまざまなマイクロモビリティが提案され、シームレスにつながっていくと目されます。こうした流れの中での提案なのでしょう。このコンセプトにケチをつけるつもりは全くありませんが、個人的には積載能力をもっと前面に押し出したほうがいい気がします。
つまり、荷物が運べる自転車、カーゴバイクとしてです。欧米などでは珍しくありませんが、日本では一般的ではありません。これまでにも、荷物運搬の利便性が考えられた三輪車もないことはなかったですが、欧米で一般的なカーゴバイクとは違い、ママチャリの亜種としての位置付けで、あまり普及もしませんでした。
公式にうたってはいませんが、前輪の間に荷台を持つカーゴバイクと見ることもできるでしょう。日常生活の中で、自転車を使う人は多いですが、あまり多くの荷物を運べないところに不便さを感じる場面もあるでしょう。今までの自転車よりも荷物が運べるというのは、大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
サイズは、欧米のカーゴバイクと比べてコンパクトです。道交法上の普通自転車のサイズに収めてあるからです。つまり、アシストタイプのほうであれば、歩道走行も可能です。欧米サイズだと取り回しや駐輪、保管にも大きすぎと感じる人が多いと思いますが、このサイズなら歩道走行も含めて日本人に受け入れられやすいでしょう。
最大積載量は20キロ、フル充電での航続距離は約50キロです。ママチャリでは運べないような大きな荷物、重い荷物も安定して運べるので、これまでにない自転車の使い方が出来るでしょう。日常の買い物でも、ママチャリの前カゴと比べて、大幅に便利になると思います。
先週開始されたクラウドファンディングでは、すでに応援購入金額の目標、300万円を大きく超える2800万円超となっており、96人が購入済です。限定100台は完売となっており、少なくとも一部の人からは支持が寄せられた、ニーズがあったということでしょう。
これまで、このブログではたびたびカーゴバイクを取り上げてきました。個人的には日本でも多少は普及してもいいのではと考えてきましたので、今後の動向が注目されます。限定100台は即完売で、開発者の人たちは少なからず手応えを感じたのではないでしょうか。ただ、これが一般的な普及につながるかは未知数です。
まず、値段です。アシストタイプは27万円、フル電動は32万円です。欧米のカーゴバイクと比べて、特に高いとは思いませんが、日本の市場を席捲するママチャリの価格帯ではありません。日本人の大多数は、自転車と言えばママチャリだと思ってますから、この価格は購入者層をかなり限定すると思われます。
もう一つは用途です。ママチャリと同じような前カゴでは、せっかくのアドバンテージが活かせません。前輪の間の低い荷台も、もう少し大きいほうが運べる荷物の種類が広がります。同じ荷物の量でも、ママチャリのような前カゴに乗せるとハンドルが不安定になりますが、前輪の間の荷台なら安定します。
そして、荷物だけでなく子どもが乗せられるようになると、さらにニーズは広がると思います。子供乗せ自転車の子どもの怪我の多くは停止時の自転車転倒による落下事故です。幼児にとって1メートル程度でも致命的になりかねません。乗車位置が低く安定していることは、使いやすさに加え安全性にメリットがあります。
カーゴバイクとはどこにも書いておらず、トライクを前面に打ち出しているようですが、似たトライクはこれまでもありました。3輪で安定して自立することもウリだとは思いますが、もっとカーゴバイクを打ち出したほうが、よりアピールするような気がします。
量産出来れば値段も下がるでしょうし、子供用のシートなども開発可能でしょう。これまで、日本にはカーゴバイク市場がほとんど存在していなかったので、その利便性を含めた認知度がどれほど高まるかという課題はあるとしても、潜在的なニーズはあると思います。
普通自転車サイズとは言え、日本の商業施設などにある駐輪機には駐輪できないでしょう。2輪よりは場所をとるので、保管などでも普及に向けたハードルがあるとは思いますが、日本で普及していないカーゴバイク市場を開拓するチャレンジと見るならば、期待も大きくなります。
前回、ドイツのカーゴバイクのレンタルの話題を取り上げました。必要な時にカーゴバイクが使えることで、都市部などではクルマの所有が不要になる人も出てきます。このことが温暖化ガスの排出削減、カーボンニュートラルに貢献する点でも評価されていると書きました。
日本でも、クルマの所有をやめたいというニーズはあるでしょう。ドイツと比べて日本の市民の環境への意識が高いかは別として、気候変動対策になる点が注目される可能性はあります。日本では自転車の活用が欧米と比べて評価されていませんが、自家用車をEVにするより、よほど効果が見込めます。( ↓ 動画も参照)
ドイツの試みを参考にするならば、これをレンタルで使うという手も考えられるでしょう。ドイツほどカーゴバイクの利便性が理解されていないのが不利ですが、例えばショッピングモールとかホームセンターで貸し出せば、自転車で来て、思わず大きな買い物をしてしまった人に使ってもらえる可能性がありそうです。
日本でカーゴバイクの市場がどのくらい見込めるのか、果たしてこの「noslisu(ノスリス)が独自の市場を開拓していけるのかはわかりません。日本の自転車の走行環境が貧弱なのも不利だと思いますが、これまでにないタイプの自転車を売ろうという意気込みは評価できますし、期待したいと思います。
◇ 日々の雑感 ◇
一部、要請に従わず酒を出したり時間短縮しない店があるようですが、緊急宣言や防止措置が出されている間にも山梨のような感染対策を充実させる指導、再び感染を広げない為の対策を進めておくべきではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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