サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
May 26, 2021
自信と移動と希望を取り戻す
自転車に希望を与えられることがあります。
アメリカに住む、Katie Savage さんもその一人です。彼女が14歳の時、全く無関係の手術の後の合併症で左足を切断することになりました。多感な時期に突然、思いもよらぬ困難を抱えることになった彼女は、なかなかこの事実を受け入れることが出来ませんでした。
友だちが学校生活を楽しんでいるのに、Katie さんはまず歩き方から再学習せざるを得ませんでした。恐れや恥ずかしさ、悔しさ、孤立、焦燥感などさまざまな気持ちに苛まれ、人生を呪い、この世に存在したくなくなったこともありました。障害を隠そうとし、そのことがまた歩行を困難にしました。
(下の写真は、Melissa Stockwell さん。)
うつ病や不安症にも苦しむ生活は、実に20年に及びました。20年間、恐怖と孤独の中で暮らしてきたのです。同時に移動の困難さに不満は募る一方でした。そんな、どん底にいた、Katie さんが変わったのは、テレビで偶然、パラトライアスリート、
Melissa Stockwell
さんを見た時でした。
Melissa Stockwell
さんは、アメリカの著名なパラリンピアン、トライアスリート、スイマー、そしてメダリストです。2008年の北京パラリンピックの閉会式では、アメリカ選手団の旗手を務めました。元アメリカ陸軍士官、中尉で、イラク戦争で手足を失った最初の女性兵士です。
その、Melissa Stockwell さんがトライアスロンのレースに出ているのを偶然見たのです。テレビで切断者を見ることは滅多にありません。Melissa Stockwell さんの強さや才能にだけでなく、その優雅さと美しさに圧倒されました。誇らしげに義足を見せるビキニのウェアを着ていました。
Katie さんは彼女に夢中になり、自分も自転車に乗りたいと思いました。義肢を隠すのではなく、見せることで、美しくセクシーな切断者になることを決意しました。自転車に乗ろうとしても数秒で転倒してしまう、Katie さんにとって、それまで思いもよらぬことでした。( ↓ 動画参照)
バイクショップの店員、Chris Baker さんと、Brenda Ruby さんと出会ったことも、Katie さんの人生を変えました。二人は、彼女に絶対乗れると励まし、乗る練習を手助けしてくれたのです。こうした経緯もあり、Katie さんは自転車に夢中になり、実に20年ぶりに将来への希望を感じられるようになりました。
自転車に乗ることで、移動ははるかにラクになり、世界が広がりました。義足を見せびらかすようなサイクリングショーツを着ることも平気になり、自分に対する自信が持てるようになりました。そして、サポートしてくれた人や仲間、サイクリングコミュニティのありがたさも痛感しました。
( ↓ Katie Savage さん。)
周囲の人たちは、彼女自身が信じられなかった自分の可能性を信じてくれました。人々の優しさを感じると共に、失意の底にいて、Katie さんが持っていた人間不信を溶かしてくれたのです。彼女は、将来に希望が持てるまでに20年かかりましたが、他の人にはもっと短くしてあげたいと強く思いました。
つまり、絶望感の中にいる他の四肢切断者を励まし、必要な義肢装具を手に入れたり、自転車で移動することを手助けしたいと思ったのです。非営利リーダシップやソーシャルワークの修士号を取得し、501(c)3非営利団体である、
Give-A-Limb, Inc.,
を設立しました。
各地で、Amputee Cycling Clinic を開催し、よもや自転車に乗るなどとは考えてもいなかった切断者も含め、サポートを始めました。手や足を失った人が自転車に乗ることを学ぶ、または再習得するのを助けます。これは単に移動のためだけでなく、自分に自信を取り戻してもらうことでもあります。
会場には切断者以外に、百人規模のボランティアが集まります。義肢をつくる人、医師、医学生、自転車ショップの人などさまざまです。一人ひとり切断の状況は違うので、それぞれ別々に対応する必要があります。手術を繰り返していて、義肢を装着できない人もいます。
スポーツをするのに適した義肢は、保険でカバーされない場合もあります。リカンベントやトライクでないと乗れない人もいます。こうした人に対し資金援助をするのも活動のうちです。寄付を募ったり、趣旨に賛同する企業と連携するなどして資金を集めています。
サイクリングは四肢切断者が、そうでない人と一緒に楽しめるスポーツの一つです。そして、Katie さんがそうだったように、手足の喪失に苦しみ、失意のどん底にあって、うつ病を患ったり、孤立感を深める人たちにとって、このコミュニティは、その後の人生を一変させるものでもあると考えています。
Katie さんも、足を失う前にも自転車には乗ったことはありました。しかし、歩くのも困難になる中で、また乗ることなど考えてもいませんでした。Melissa Stockwell さんの姿を通して再び自転車と出会ったことで、文字通り人生に希望を与えてくれたと感じています。
Katie さんは、20年もの間、人生に絶望していました。その間、これほど劇的に人生が変わろうとは思いもよりませんでした。ですから、諦らめかけている人に、ちょっと待って欲しいと言いたいのです。人生は驚きに満ちており、思いもよらないところから希望やコミュニティを発見することができると思うからです。
彼女の場合は、それが自転車でした。自転車は移動の効率も上げますし、一緒に楽しめるスポーツであり、受け入れてくれるコミュニティがあり、四肢切断者に希望を与えると実感してます。辛い気持ちでいる人たちも、必ず変われると確信しており、それまで何とか持ちこたえてほしいと願って活動しています。
素晴らしい取り組みです。自身も足を切断し、20年ものあいだ希望の光を失っていた、Katie さんだからこそ出来た、やりたいと思った活動なのでしょう。彼女のように、人の痛みを取り除いてあげられる人になりたいものです。そして、自分が困難に見舞われた時、きっと希望は見いだせることを忘れずにいたいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
緊急事態宣言の延長も仕方ない面はありますが不満も高まっています。劇場はよくて映画館がダメとか、要請に従わない飲食店が平年の数倍の売り上げといった不合理な要請は改め、皆が容認できるものにすべきでしょう。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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