June 01, 2021

健康は社会的にも良好なこと

世界保健機関という国際組織があります。


ご存じの通り、WHOです。国連の専門機関の中ではユネスコやIMFなど、国連以外でも、WTOやIAEAなどの国際機関と並んで、よく耳にする組織でしょう。特に最近は新型コロナウイルスのパンデミックの最中ということもあって、頻繁に名前を聞きます。

WHOについては、コロナの発生当初、パンデミック宣言が遅れたり、発生源とされる中国を擁護し、その対応を称賛するテドロス事務局長の発信が世界的に批難されました。調査でも中国への忖度が指摘され、不信感が世界中に広がりました。同氏がエチオピア出身であり、同国の最大援助国の中国に逆らえないと言われています。

テドロスPhoto by Thorkild Tylleskar,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

テドロス事務局長の言動が、その信頼性に傷をつけたきらいはありますが、WHOは依然として感染症対策を統括する国際機関であり、世界的な役割を担う組織なのは間違いありません。日本政府も、WHOの変異種やワクチン、治療薬などについての情報に基づいて政策判断を行っています。

WHO、世界保健機関は、“World Health Organization”ですから、保健衛生や医療、病気や医薬品などが専門のように思いますが、実はもっと幅広い分野について活動しています。“Health”は単に健康というだけでなく、精神的、また社会的にも良好なことを表すとWHOは独自に定義し、広範な目標を掲げているのです。

Streets for life: #love30Streets for life: #love30

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いろいろありますが、例えば今年、制限時速30kmの道路を世界中の都市の標準にするキャンペーンを展開しました。なぜWHOが道路交通なのかと戸惑いますが、交通死亡事故死を減らすことが目的です。世界で多くの人が交通事故で命を落としていることについて調査報告も公表しています。

世界では年間135万人(2016年)が交通事故で命を落としています。24秒に1人が交通事故死している計算です。世界での死因としては全体で8位、5〜29歳の子どもや若者の死因では1位となっています。テドロス氏も、交通の代価としては容認できない犠牲だとしています。

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5月17日から23日までは、第6回の国連世界交通安全週間でした。“Streets for life;#love30”というキャンペーンを国連として展開したのがWHOです。人々が住み、遊び、歩いたり自転車に乗り、歩行者や自転車とクルマが混ざり合う都市部の道路では、時速30キロの速度制限をすべきだと主張しています。( ↓ 動画参照)

都市の中の道路を走るクルマを低速にすれば、人々の命を救うのに大きく貢献します。このことを人々に呼び掛け、各国や各都市の政策立案者に促すことで、交通事故死を減らそうとしています。実際にクルマの速度が30キロ以下になると、交通事故死や怪我が大幅に削減されることは世界各地で証明されています。



道路を使用するすべての人、特に歩行者、サイクリスト、子供、高齢者、障害を持つ人々など、最も脆弱な人々を保護します。このことは、健康と福祉の推進、貧困と人や国の不平等の撲滅、住み続けられる街をつくることにもつながり、SDGs、(Sustainable Development Goals)、持続可能な開発目標にも合致します。

30キロなんて遅くて不満というドライバーもいるでしょう。しかし、都市部では渋滞することが多く、時速30キロと50キロにした場合を比較しても、結局移動時間の差はわずかだと報告されています。一方で、公害は低減され、都市の居住環境の向上にも寄与します。

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時速30キロ制限にすることは、人々が自転車という移動手段を選ぶことも後押しします。これが温暖化対策にもつながるとしています。国連総会でも、2021年から2030年まで、交通安全のための行動の10年を宣言し、2030年までに交通事故による死傷者を少なくとも50%削減するという野心的な目標を掲げています。

国連のグローバル交通安全週間の第6回のテーマは、“Streets for life;#love30”でしたが、都市部での制限速度を時速30キロにしようという考え方は、今始まったものではありません。ヨーロッパでは、このことを以前から実践している国、都市も少なくありません。

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私はヨーロッパでもクルマを運転することがありますが、都市間の道路ではスイスイ走っていても、都市に入った途端、前のクルマが急にスピードを落とすことに気づきます。いわゆる、ゾーン30です。都市部ての時速30キロ制限が徹底されているのです。国によっても多少違いますが、多くの人が守っています。

ヨーロッパの都市で自転車に乗ったことがある人なら、経験があるかも知れませんが、クルマのドライバーが親切で、サイクリストに配慮してくれると感じることが少なくありません。これは、どうせ時速30キロで急いでも仕方ないため、歩行者や自転車に対して、優しくなる効果があるのではないかと個人的には感じています。

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日本も含め、世界では時速30キロでない都市はたくさんあります。渋滞していない時くらいスピードを出したくなりますが、信号にかかったり、断続的に混雑していて、結局は平均速度30キロくらいという経験も多いのではないでしょうか。ならば、最初から30キロで走ってもいいでしょう。

万一、事故を起こしても時速30キロなら被害は断然小さくなります。スピードを出した時に限って事故になりがちですが、スピードを出せばリスクは大きくなるのですから、当然といえば当然です。低速で走行することはドライバーにもメリットがあります。

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ドイツなどでは、都市部でのスピード違反の取締りがけっこう厳しいと聞いたことがあります。それで守るのもあるでしょうが、習慣になってしまえば、そう不満ではなくなるのでしょう。事故のリスクも減りますし、運転中も余裕が出来て、優しい気持ちになれ、イライラすることもかえって減るような気がします。

実際に、低速で走ってみると実感するのではないかと思います。横断歩道に歩行者がいれば、すぐ止まれます。止まるのが苦にならなくなるでしょう。仮に自転車を追い抜けなかったとしても、どうせスピードは出せないのですから、無理に追い越さず、優先してあげる余裕も出てくるのではないでしょうか。

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WHOは、自転車の安全に関するガイドも発行しています。事故に関する現在のデータも示されています。それによれば、世界の交通事故で毎年4万1千人のサイクリストが死亡し、数百万人が負傷していると言います。この数字を減らすため、緊急な努力が求められるとも主張しています。

日本でも、細い道や通学路など、時速30キロ制限の道路はあります。でも、都市部を丸ごと30キロ制限にしてしまう手もあるのではないでしょうか。意外とスムースに走行できる可能性がありそうです。そして何より安全性が向上し、事故のリスクは大きく減ります。

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今はコロナ禍で、コロナに関する情報に関心が集まるのは当然です。WHOの変異種やワクチンの副反応の情報には注意を払うでしょう。しかし、同じWHOでも、“Streets for life;#love30”、時速30キロ制限の呼びかけには、残念ながら注意が払われません。

ただ、依然として世界で年間135万人が交通事故死し、5〜29歳の世代では死因の1位です。コロナも警戒すべきですが、交通事故も相変わらず大きな脅威です。健康や病気だけでなく、交通事故についてのWHOのメッセージについて、もう少し注目してもいいような気がします。




◇ 日々の雑感 ◇

世論調査では五輪を中止や延期という人が過半のようです。都知事は1年先だと選手も変わってしまうので延期は困難と言っています。前にも書きましたが、1年でなく2〜3ヶ月延期するだけでも、ワクチン接種が進み、感染は落ち着き、猛暑も回避でき、国民の賛成も増えるのではないでしょうか。1964年の東京五輪も10月開催でしたし。

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