サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
August 03, 2021
自由で大胆で創造的な自転車
自転車には多くの種類があります。
誰でも知っているようなメジャーなものから、愛好者の少ないマイナーなもの、ニッチなものまで、いろいろあります。多くはメーカーが製造し、それぞれの台数は大きく違いますが、商品として流通しています。でも、いまだに商業化されておらず、自由で制約を受けず、大胆でクリエイティブなカテゴリーが残っています。
バンクーバーを拠点として活動する6人兄弟、“
Zenga Bros
”によれば、それは背の高い自転車、トールバイクです。少ないですが、世界にトールバイクに乗る人がいます。このブログでも取り上げましたし、画像では見たことのある人もいるでしょう。どれも手作りであり、たしかに市販されていません。
決まった形はなく、そのフォルムは時として大胆で創造的です。常識的に考えれば、愚かな人々にしか受け入れられにくい、一種のサブカルチャーと言ってもいいかも知れません。見るからに乗りづらく、止まりにくく、およそ実用的とは思えません。そして乗りたいと思えば、自分でつくるしかありません。
一般的に、自転車に乗るのは素晴らしいライフスタイルで、個人の楽しみで、健康的な習慣です。でも、世界を変える力を持っているのはトールバイクだと、Benny Zenga さんは言います。
トールバイクは世界を救う
と主張しています。少なくとも、彼らがトールバイクに魅せられているのは間違いありません。
たしかに、扱いにくく、乗りにくいように見えるかも知れません。しかし、多くの人が考えるほど、乗りにくかったり、扱いにくいわけではないと主張しています。そして、一度高い位置のサドルにまたがると、それはとても自然な感じがすると言います。
一般的な自転車とは勝手が違います。普通の自転車がポルシェだとしたら、キャデラックのようなものだと話しています。私は実際に乗った経験がないので、この比喩に実感はわきませんが、要するにそれぐらいの違いしかないということなのでしょう。
考えてみると、初期の自転車にペニー・ファージング( ↑ 上の写真)という種類があります。まだチェーンやギヤのなかった時代で、車輪に直接ペダルがついていました。速度を上げるためには車輪を大きくするしかなかったのです。そのため、足が地面につかず、非常に乗りにくかったと想像されます。
でも、当時はそれが当たり前だったので、普通にペニーファージングに乗っていたわけです。それを考えれば、トールバイクも一見、乗りにくそうに思えますが、慣れの問題ということなのかも知れません。一方、自分の身長以下の日常の視点である普通の自転車に対し、全く視点の高さが違ってきます。
想像するに、空を飛ぶかのような感覚が味わえるのかも知れません。場合によっては、街路樹に頭をぶつけそうになったり、不便なこともありそうですが、普通の自転車とは全く違う景色なのでしょう。たかだか1mか2mくらいの違いだったとしても、その差は大きそうです。
さらに、このトールバイクでの旅行は最高だと話します。自転車での旅行を経験した人なら、その素晴らしさを理解するでしょうが、それとはまた違う次元の経験のようです。彼らは実際に、トールバイクでアフリカをはじめ、世界各地を旅行しています。
自転車で旅行するには、多くの荷物を運ぶ必要がありますが、トールバイクは積載能力も優れています。彼らの制作するトールバイクは、高さだけでなくホイールベースも長いので安定していることに加え、荷物が多く載せられます。相対的に低い位置に積載することになるので、重心が低くなり安定することもあるのでしょう。
そして、トールバイクは自分で作ります。
Zenga 兄弟
は、トロント郊外の小さな田舎町で、畑と牛と馬に囲まれて育ちました。家にMIG溶接機があったので、廃棄された自転車の部品を拾ってきて、オリジナルの乗り物を作って遊ぶようになったのは自然なことでした。
ローライダーやチョッパー型バイク、タンデムバイク、たくさんの車輪がついた自転車、ハンドバイクなど、さまざまな自転車を作ってきました。でも、その中でもトールバイクは特別でした。究極の二輪という気がしました。まさに、トールバイクに行きついたのでしょう。
トールバイクを製作するのに、決まった方法はありません。創意工夫でいろいろなバイクが出来ます。毎回、新しいアイディアやテクニックを考え出しても、それに縛られることはありません。つくるたび、新しい発見や気づきがあり、毎回自分で自分を驚かせるのが醍醐味であり、その試行錯誤が最高なのだそうです。
自転車だけではなく、スケートボードなどの乗り物も大好きです。どれもアドレナリンが出る感じが好きなのですが、トールバイクは、加えて違う何かを感じるのだそうです。上手く言葉で説明は出来ないものの、トールバイクは、また違うのだと言います。
彼らの父親が、80年代には珍しかったビデオカメラを所有していたので、古い映像も残っています。その影響もあり、今は映画製作などの仕事をしています。同時にクリエイターであり、アート集団としても各種の活動をしてきました。そしてトールバイク・ムーブメントを広げたいと考えています。
なぜトールバイク?という疑問もあるでしょう。どうやって乗るのか、どうやって降りるのか、信号ではどうするのか、質問もいろいろ浮かぶかも知れません。それらの答えは、実際にトールバイクに乗ってみれば、自ずとわかってくるに違いありません。
下の動画の後半のほうに、街で普通の人たちに試乗させているシーンが出てきます。支えてもらったり、おっかなびっくりだったりしますが、乗ってみた人たちが、みな笑顔になるのが印象的です。つまり、トールバイクは乗って楽しいのです。( ↓ 動画参照)
彼らにしても、初めて乗った人が、自然と笑顔になるのが好きです。彼らがトールバイクに特別な魅力を感じ、こだわっている理由も乗ればわかるということでしょう。見るからに乗りにくそうで、およそ実用的とは思えないと感じる人は多いと思いますが、それは偏見なのかも知れません。
出てくるトールバイクもいろいろです。上下に乗るタンデムというのもユニークです。下の人が仰向けに乗るタンデムもあります。たしかに自由度が高く、まだまだ決まった形はないようです。果たして世界を救うのかについては、私にはわかりませんが、とても魅力的なものに見えてくる人もあるのではないでしょうか。
今では当たり前のマウンテンバイクも、ビーチクルーザーを手作りで改造して、山を下って遊んでいた人たちが生み出しました。自転車だけでなく、スケートボードもキックスケーターも、みな誰かが創り出しました。トールバイクも、これから進化し、理解され、広く乗られるようになるのかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
西村大臣の飲食店や酒販店を脅す発言が国民の反感を買った頃から、要請に従わない店が更に増え、その2週間後くらいから感染者数の増加率が急になった気がします。彼は抑制どころか感染拡大に貢献したのでしょうか。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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