August 12, 2021

スポーツの楽しさとその原点

東京オリンピックが終わりました。


史上初めて1年延期され、コロナ禍という異例の状況下で行われたオリンピックでした。ほとんどの競技が無観客で行われ、国民の多くが開催に反対し、組織委員会の不祥事が相次ぎ、IOCへの批判が高まるなど、異例づくめの大会だったと言えるでしょう。

選手の中にもコロナの陽性が判明して、棄権せざるを得なかった人もいました。関係者にも陽性が続出し、バブル方式が機能しているのか疑われる状況でしたが、終わってみれば僅かな割合でした。8割以上の人がワクチン接種をし、毎日検査をしていれば感染は広がらないことを示したとも言えるでしょう。

日本選手の活躍が目立ち、メダル獲得数も過去最高になりました。各競技でのドラマチックな展開に感動した人もあったでしょう。開幕前とは打って変わって、開催してよかったという人が6割に上るなど、テレビでのオリンピック観戦を楽しんだ人は多かったようです。

野球やソフトボールも追加された競技ですが、今回は、初めて採用された競技にも注目が集まりました。スポーツクライミングやサーフィン、空手にも複数の日本人メダリストが誕生しました。なかでも注目されたのが、スケートボードだったのではないでしょうか。

自転車競技スケートボード

男子ストリートで金メダルの堀米選手も22歳と若いですが、女子ストリート金の西矢選手は13歳と日本選手史上最年少の金メダリストです。女子パーク金の四十住選手は19歳、銀の関選手は12歳、女子ストリート銅の中山選手も16歳と、10代の選手が続々とメダルを獲得する快挙となりました。

女子パークに出場した岡本選手は世界ランク1位で、予選はトップ通過でしたが、決勝では惜しくもワザが決まらず、涙を流しました。しかし、これを見ていた世界のライバルたちが皆で慰め、担ぎ上げて健闘を称えたシーンは感動的と世界的に話題となりました。

結果ばかりでなく、競技中の選手たちが笑顔で自然体、楽しそうだったのが印象的でした。他の選手のクールなトリックが決まれば、手を叩いて喜び、ハイタッチする。国境も無ければ順位にも囚われない、そんな自由な雰囲気が、他の競技とは明らかに違って新鮮に感じた人は多かったに違いありません。

1/100秒、1/100点、1/100mという極限を競う他の競技では、緊張感や真剣な表情が当たり前ですが、スケートボードでは、みな笑顔で、見ている人にまで楽しさが伝わってきます。10代20代だけではなく、46歳の選手も出場していました。今までの伝統的な種目とは違う、新しいタイプの五輪競技と感じました。

スケートボード岡本碧優

サーフィンやスポーツクライミング、次回大会での採用が検討されるブレイキン(ブレイクダンス)などもそうですが、若い世代のオリンピック離れを懸念して、IOCは若い世代の人気を重視して新種目を採用しているようです。その目論見に、まんまと乗せられた形の人も多かったのではないでしょうか。

スケートボードは、1960年頃に生まれました。ローラースケートの車輪を流用してキックスケーターが生まれ、そのハンドルを取ったのが原型と言われています。サーファーが水を抜いた、すり鉢状のプールで遊び始めたのが流行につながったようです。

その後、1990年代にはストリート・スタイルが発展しましたが、文字通り街角での遊びでした。今でこそ、専用のパークも出来つつありますが、公共の場所の階段や手すりを破損させる非常識な遊びとして、眉をひそめる向きもあったわけです。選手がスポーツとして見てほしいと言うのも頷けます。

多くの選手はコーチもおらず、他の選手の動画を見てトリックの練習をしています。国内で、愛好者はそれなりにいますが、日本の競技人口は、男女あわせて2千人ほどと言われています。いずれにせよ、少し前まで街角の遊びだったのがオリンピック種目になった感があります。

スケートボードスケートボード

そう考えると、今、ごく一部の人が楽しんでいる遊びが、将来オリンピック種目になっても不思議ではありません。もちろん、種目を無限に増やすわけにはいきませんが、廃止された競技、種目は多々あります。人気が無ければ廃止され、入れ替わっていくことになります。

自転車競技は、日本では必ずしも人気があるとは言えませんが、世界的には違います。前回からBMXなどの4種目が増加しています。オリンピックの第1回、アテネの1896年大会から正式競技として採用され、以来途切れることなく実施されている数少ない競技の一つでもあります。

現在行われているロード、トラック、MTB、BMX以外にも種目が増える可能性はあるでしょう。サイクルサッカーや、サイクルフィギュアといった伝統的だけれどもマイナーな種目もありますが、現在は競技として確立していない、単なる自転車を使った遊びが、競技に昇格する可能性だって否定できません。( ↓ 動画参照)



どんな遊びが競技になるかは、わかりませんが、例えば、BMXウェイクボードなんてどうでしょう。ロードでもダートでもトラックでもなく、なんと水上で争う自転車競技です(笑)。これなら真夏の炎天下でも涼しいですし、海かボート競技の会場で出来そうです。

World Skim Bike Championship”と名付けて競技をしている人たちもいます。手作りの自転車ボートで、地上から水上へ飛び出し、転覆せずに最も遠くへ行けた人が勝ちという単純な遊びです。もちろん、可能性は限りなく低いとは思いますが(笑)、楽しそうです。涼を求めて、夏にやりたくなる気持ちもわかります。

World Skim Bike ChampionshipWorld Skim Bike Championship

個人的には、冬季オリンピックに、ファットバイクで雪上を走行する競技が出来てもいいと思っています。雪上で自転車に乗る人はまだ一部ですが、ファットバイク人口は年々増えています。冬季のオリンピックは競技数も少ないですし、可能性は十分にあるのではないでしょうか。

今回のオリンピックは、IOCの商業主義、貴族と皮肉られる待遇、スポンサーの意向で真夏の東京で開催し、選手のことを考えていないことなど、さまざまな批判や不満も続出しました。オリンピック開催の意義に対する疑問や、忌避する声が広がりました。( ↓ 動画参照)



競技の結果を受け、選手に対してSNSで誹謗中傷する人が目立ったことも指摘されています。SNSを使った言葉の暴力は、五輪に限った話ではありませんが、国境を越えて、自国の選手を破った選手に対する攻撃、嫌がらせを行う人が増えたのも事実のようです。

オリンピックと言っても、単なるスポーツでの勝敗に過ぎません。それを国の名誉や民族の優位性を示すかのように思ってしまう民度の低い国があるのは確かでしょう。メダルの獲得数も、わかりやすい目安ではありますが、国家間の対抗意識を煽ってしまう部分があるのは否めません。

誹謗中傷をするような人は一部ですが、SNSでは反響も広がりますし、またそれを報じるメディアもあります。一般の人のナショナリズムを刺激する面もあります。こういうSNSでの選手個人への攻撃を耳にすれば、された側の国民も愉快な気持ちではいられない面もあるでしょう。ヘイトクライムにもつながりかねません。

スケートボードスケートボード

平和の祭典であるオリンピックが、SNSの普及という環境もあって、国民同士の感情的な対立を煽りかねないわけです。もちろん、オリンピックのせいで平和が崩れるとは言いません。しかし、国民感情というのは、国家間の衝突の誘因になりかねないことは、歴史が証明しています。

従来からの種目が悪いと言うわけではありません。真剣な勝負、記録、五輪での勝利を目指してきた選手の努力が感動を生むのも確かです。ただ、その結果、観客があまりに勝敗にこだわってしまい、それがSNSで拡散して人々の感情的な対立を生むような傾向が見られます。

スケートボードでは、従来の競技と違い、個人のワザやパフォーマンスをリスペクトするといった、個人同士の競争という面が前面に出ていました。選手が笑顔で、お互いの仲の良さが見られ、国家間の対抗戦ではなく、スポーツ本来の楽しさを思い出させた面もある気がします。

今回のコロナ禍での五輪、SNS時代の五輪は、いろいろな問題を浮き彫りにしたと言えそうです。改革の必要性も、さらに指摘されるところでしょう。世界中のアスリートが集まるスポーツの祭典として、より純粋に楽しめるイベントへと進化していってほしいと思います。




◇ 日々の雑感 ◇

河村たかし名古屋市長が表敬訪問した選手の金メダルをかじった問題も論外ですが、他にもテレビ番組でボクシング競技への偏見に満ちた発言をした張本勲氏など、オリンピックは人に馬脚を露わさせてしまうのでしょうか。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんにちは.

あの橋本聖子も大菅小百合も成し得なかった梶原悠未選手の銀メダル,本当に見事でした.さらに男子ロードレース,街から村へ山越え谷越え合計244(正味の競技距離は234)km,約1/3の選手がゴールラインまで辿り着くことができなかった事を思えば,日本人2選手の完走はメダルやベスト8入賞にもまして喜ばしい事です.

日本国内であれだけ大掛かりな国際的自転車ロードレースの開催は,今後は極めて困難になるであろうと思われますが,5年から7〜8年に1回でもオリンピック記念レースとして定期的な開催が実現できればと願うのは私だけでしょうか.
Posted by マイロネフ at August 12, 2021 15:11
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
梶原選手以外、自転車競技にはあまり関心が集まらず、結果の評価も低いのは残念ですが、これもいつものことでしょう。
国によって力を入れる競技、人気や関心の集まる競技が違うのは当たり前とは言え、ヨーロッパとは落差が大きいですね。
記念レースを開催するにも、費用面からスポンサーが必須でしょうし、注目を集める人気選手もほしい、そのためには競技の裾野も広がる必要もあるなど、現実にはなかなか簡単ではなさそうです。
ただ、近年は少しずつ日本でもファンを広げつつありますから、今後の展開に期待しましょう。
Posted by cycleroad at August 15, 2021 14:36
 
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