ネット通販の普及に加え、コロナ禍もあって宅配貨物の量は増加の一途です。フリマアプリなども含め、あらゆるものを宅配で取り寄せることが一般的となりました。物流、とくに最終消費者の元へ個別配達する、いわゆるラストワンマイルを担う宅配への負担が増しており、今後の人手不足が懸念されています。
そこで、将来の宅配として、ドローンによる無人配達の開発が進められています。特に山間部や離島などへの配達には、時間、コスト、利便性などの点でも大きな将来性が見込まれています。個人の買い物だけでなく、医療物資を運ぶなど、さまざまなニーズがあります。
日本でも実証実験が進められており、2022年中にはドローン飛行のレベル4が解禁される見通しです。レベル4は、管理者の目視外で、有人地帯の自動飛行が可能になります。しかし、都市部の人口密集地の飛行には安全性の面でリスクがあり、重大事故につながりかねません。
どう安全を担保するのか、上空を飛んで市民の理解を得られるのか、事故の時の責任や補償はどうするのかなど、法律面や社会的な環境整備の点でも、解決すべき問題が山積しています。技術的には可能だとしても、実用化までにはハードルがあるでしょう。

地上を走行するロボットカーという候補もあります。少し前にも取り上げましたが、無人での宅配を実現する小型ロボットカーの、自転車レーンを走行しての実証実験は、すでにアメリカなどでも始まっています。こちらも技術的には可能ですが、やはり法的、社会的な面での課題は残っています。
空にしろ陸にしろ、将来的には無人で配達されることになるのでしょう。しかし、現実問題としては、まだ社会的な課題もあり、すぐに無人、自動運転にはならないだろうと考える人たちがいます。もう少し違ったアプローチが必要なのではないかというスタンスです。
ドイツのスタートアップ企業、
DroidDrive GmbH 社もその一つです。この会社は、ドイツの工業系大学の名門である、
アーヘン工科大学からスピンオフした企業です。同大学は起業のサポートにも力を入れており、この会社は、同大学の2019年のスピンオフ賞にも輝きました。


この会社が開発しているのは、“
Trailerduck”です。下の写真のように、一見すると自転車で牽引するトレーラーですが、単なるトレーラーではありません。トレーラー自体がパワーユニットを搭載しており、ライダーの脚力とは関係なく走行し、荷物を運ぶことが出来ます。
さらに、自動追従機能があります。つまり、牽引しなくても、後ろをついて来るのです。この機能により、トレーラーは一台に限りません。アヒルのように、隊列を組んで走行できるのです。日本風に言うならば、カルガモということになるでしょうか。


一台につき、最大660ポンド、約300キロの最大積載量があります。容量としては、2立方メートルです。今は開発中のため、物理的に連結されていますが、Lidar というセンサーを介して、先行する車両の挙動をAIで解析、自動で追従することになります。
これによって宅配員1人で運べる量が何倍にもなるわけです。これまでカーゴバイクや普通のトレーラーでは、運べる荷物が少ないのが欠点でしたが、これを補うことが出来ます。それでいて、幅は約1メートル、自転車レーンを十分に走行できる幅なので、自転車での配達というメリットを損ないません。( ↓ 動画参照)

自転車による宅配を拡張したことで、トラックによる宅配との中間的な位置付けということになるでしょうか。もちろん電動なので温暖化ガスや有害な排気ガスは出しません。バッテリーは交換方式なので、充電に時間をとられないのも利点です。
速度は最大時速25キロまで出ます。もちろん、追従走行していて前の車両が減速すれば、自動でブレーキがかかります。意外に小回りがききますし、あくまで自転車用トレーラーですから自転車レーンを走行でき、トラック乗り入れ禁止の場所にも入って行けます。目的地の、より近くまでアプローチ出来るでしょう。


人が乗った自転車か、ベロモービル、カーゴバイクなどでも先導出来ます。ドローンやロボットカーのように自動運転ではないわけですが、無人でないぶん、さまざまな社会的な課題もクリアすることになります。人間がその都度判断するので安心感もあり、いろいろなアクシデントにもその場で対応できます。
自動追従の技術は、トラックなどで一部実現していますし、十分実用的です。LiDAR テクノロジーは自動運転でも使われていますが、追従するだけなら今のレベルでも十分です。有人の配送システムとして、すぐにでも使える実用的なシステムです。受け渡しなどにも、臨機応変な対応が可能です。( ↓ 動画参照)
現在のところ、最大で5台が追従します。単純に言えば人件費が1/5ということになります。自転車で先導するだけですから、トレーラーを牽引する脚力に自信がない人でも配送可能です。同社は現在、“Trailerduck”の予約注文を受け付けており、最初のユニットの納品は2022年後半になる予定です。
ドローンやロボットカーによる、完全無人の自動運転も技術的には可能なところまで来ていると思いますが、実際に都市で運用されるには、まだ時間がかかりそうです。将来は無人になるとしても、それまでの現実的な「つなぎ」として、こうしたスタイルが活躍する余地は、まだまだあるのかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
いわゆる野戦病院や抗体カクテルの拡大など緊急の課題が山積しています。法的・予算的な措置も必要なのに国会すら開かない自民党、総選挙の顔を気にして浮足立ち、総裁選を巡って権力争いをしている場合でしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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