側方を通過するクルマ、路地や駐輪場などから出てくるクルマ、右折する対向車、信号や標識、飛び出して来る歩行者、道路上にころがっているゴミとか障害物も気にしなければなりません。さらに前方の路面にも危険が隠れていることがあります。
排水溝などもあるかも知れませんし、工事用の鉄板や路面標示やラインの上、マンホールなど、場合によっては滑りやすい路面もあります。大型車の通行量の多い場所では舗装が凹んでいたり、段差や波打っていることもあるでしょう。無意識に見ていると思いますが、とくに市街地では、注意する対象がたくさんあります。
道路に穴があいていることもあります。経年劣化や何かの道路工事、そのほかさまざまな理由で舗装が痛み、舗装面が剥がれていたり、部分的に非舗装路のようになっていたりすることもあります。理由はいろいろのようですが、なぜかポッコリと穴、いわゆるポットホールがあいていることもあります。
こうした舗装の穴、形状によっては非常に厄介です。うっかり上を走行してしまうと、大きなショックがあったり、タイヤをとられたり落車しかねません。下手に転倒すれば、側方を通過するクルマに轢かれかねないわけで、場合によっては命に関わるリスクということになります。
道路の端の部分、すなわち自転車が通るような場所に限って穴が放置されていたりします。サイクリストの敵と言ってもいいでしょう。日本では比較的道路の管理が行き届いており、穴が危険だと修復される場合が多く、それほど危険な穴は多くないかも知れません。
しかし、海外では必ずしもそうではありません。ヨーロッパの先進国でも、舗装が酷い都市は少なくありません。歴史のある古い城郭都市など、ローマ時代の舗装がそのまま使われていたりして、仕方ない場合もあります。自転車に乗るのには、あまり快適でない街ということになるでしょう。
厄介なのは、穴がそのまま放置されているような、管理の行き届いていない街です。クルマの通行に支障があれば修復されるのでしょうが、自転車が通るような道路の端だと、そのまま放置されていることも少なくありません。おそらく、道路管理者の国や自治体の人手や予算が足りないのでしょう。
そうした街では、もはや諦めている人も多いのでしょうが、なんとかならないものかと考えた人たちがいます。イタリア、ミラノ工科大学のコンセプトデザイン研究所の、Luca Grosso さん、Silvana Migliozzi さん、Alessio Puleo さん、Zoe Schnegg さん、Xueyan Niu さんら、学生のグループです。
この問題の解決のために考え出したのが、“
ROADFIX”、舗装路の路面の穴、ポットホールや、小さな欠陥を修復するためのツールです。路面の舗装をやり直すのではなく、補修するだけですから、人が押して歩く手押し車のようなコンパクトなツールです。グラウンドに石灰で線を引く、ライン引きのようなイメージでしょうか。
このボックスの中で、補修材料がモーターでミキサーのように攪拌されます。ボタンを押して前方に押すと、中から補修材が出てきて穴を埋める仕組みです。補修材はアスファルトではなく、水とセメントを混ぜたモルタルのような材料です。
アスファルト舗装とは色も質感も違ってしまいますが、小さな穴を埋めるのには問題ありません。いちいち、セメントを混ぜるための道具一式やスコップなどを使う必要はありません。機動的に修理が出来ます。ちなみに、彼らは日本の陶磁器などの接着技術、金継ぎを見てインスピレーションを得たそうです。
たしかに、これなら通常のアスファルト舗装の工事をするような建機や資材、人手は必要なくなります。自治体の財政への負担も小さくなります。ただ、それだけなら、特筆すべき道具とは言えないでしょう。どちらかと言えば、ありふれたアイディアです。
彼らの設計した“ROADFIX”の素晴らしいところは、後輪のローラー部分にあります。この部分で、モルタルの補修材を伸ばして平らにするだけではありません。マークやロゴなどをスタンプのようにプリント出来るのです。モルタルが固まれば、長期間にわたって残ります。
滑り止めの役割も果たすかも知れませんが、目的は違います。このスタンプ部分で、企業のマークや社名などをプリントするのです。つまり、広告です。新しいタイプの道路広告として販売しようというアイディアです。スポンサー企業は、自社のロゴを道路に刻印できます。
道路補修のツールというだけでなく、道路補修予算を獲得するアイテムです。企業は宣伝になりますし、道路補修に資金協力する社会的な会社としてイメージアップにもなるでしょう。道路管理者の自治体は、コスト削減になります。もちろん道路の利用者にとっても穴が補修されて、助かります。
3者にとって、Win-Win-Winの関係が見込めます。彼らは、このアイディアを掃除機などの家電メーカーとして有名な、“
JAMES DYSON AWARD”に応募し、今年の国内最優秀賞を受賞しています。そのほか、2019年の“
Targa Rodlfo Bonetto”デザインコンペでも最優秀賞をとりました。
せっかく道路補修用の器具を考案しても、それが実際に使われなくては意味がありません。この“ROADFIX”を道路補修用に採用する自治体が出てくれば、道路補修を推進させる、社会的にも優れたアイディアと言えるでしょう。なかなかユニークな目の付け所です。
自治体、管理主体の採用よりも、スポンサー企業の獲得が焦点かも知れません。この事業に賛同して広告を出稿する企業は、サイクリストやベビーバギーの利用者、車イスの利用者、歩行者全般を含め、この恩恵を被る人たちに広く感謝されるはずです。イメージアップは間違いありません。
今後、彼らはプロトタイプを制作し、工事のオペレーターに試してもらうことを考えているそうです。一方で、メリットがあると思われる業種の企業と、自治体などに売り込む計画です。まだどうなるかはわかりませんが、もしこれが広く使われるようになれば、道路上の悩みが一つ減ることになるかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
菅首相は政権延命に必死のようですが、そもそも党内基盤は弱く、安倍前首相のリリーフでした。コロナ対策でもこれだけ国民の失望を招いて支持率は低迷しています。自ら退いて次の人に譲ってもいいのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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