September 08, 2021

異業種が生むイノベーション

業種の垣根が低くなってきています。


近年、異業種の企業が同じ市場で競合する例が増えていると言われます。AI、5G、クラウド、ブロックチェーン、IoTなど、新しい技術が次々と出てきていることも背景にあるのでしょう。○○テックなどと呼ばれるような、新しい形態を目指すスタートアップ企業も続々と登場しています。

例えば銀行業のような伝統的な産業でも、フィンテックを掲げる異業種の参入が相次いでおり、これまでのように規制に保護された商売にあぐらをかいていたら、いずれ淘汰されると指摘する人もいます。これまでのように、業界の中のことだけを見ているわけにはいかなくなっています。

異業種が参入することで、イノベーションが期待される面もあるでしょう。製品やサーピス、従来の仕事のやり方などに、新しい発想で今までにない価値を生み出すには、異業種とのコラボが有効とされています。長く同じ業界にいると、どうしても見方や考え方が固定化し、新しい切り口を見つけにくくなります。

Photo by btr,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Hanna Zelenko,under the GNU Free License.

ドイツのシュトゥットガルトを拠点にしている、Stephan Henrich さんは建築家です。ただ、興味は専門の建築だけにとどまりません。ロボット工学とかプロダクツデザイン、機械設計、3Dプリンターなどにも興味を持っています。いろいろなフィールドをリンクさせて創造したいという思いがあります。

当たり前ですが、建築物は動くべきではなく、静的でなければなりません。彼は、いつもこの点が残念だと感じていました。建築だけだと物足りない部分があり、動くもの、動くことを許されるものに興味があったのです。その方向にあったのがロボットや機械であり、技術としての3Dプリンターです。

これまでにも動く座席とかテーブルなど、いろいろなものを設計してきました。動くものと言えば、自転車もその一つです。彼は自転車の専門家でもなければ、自転車業界とも全く関係がありません。でも、彼の動くもの、可動部品、機械技術といった興味の延長に自転車もありました。

設計するだけでなく、3Dプリンターを使ってパーツを制作し、いろいろ試してみることも日常です。動くパーツを作って動かしていると、新たなインスピレーションも生まれます。デザインの自由度も広がるような気がしていました。そんな3Dモデリングの中から生まれたのが、“Infinity”です。

Infinity

なんと、自転車の前後輪が一つになっています。“Infinity”は無限という意味ですが、まさに無限軌道を持つ自転車です。自転車に固定観念がある人には、タイヤを大きくしたり、小さくしたり、3輪にしたりという発想は出ても、このアイディアは浮かばないのではないでしょうか。



ときどき、2輪駆動の自転車をつくる人がいますが、これは1輪駆動、というより全輪駆動と言うべきでしょうか。自転車を2輪駆動にする目的は、主として悪路の走破性をアップさせることです。この点では2輪駆動より全輪駆動のほうが強力でしょう。4輪駆動車よりブルドーザーや戦車などの方が強力なのと一緒です。

This image is in the public domain.Photo by JGSDF,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

“Beach and city cruiser”としていますが、たしかにビーチクルーザーとしては、もってこいの構造かも知れません。普通のタイヤでは砂に埋まってしまったり、スリップしてしまって走れないような砂浜に無限軌道、クローラーなら最強と言えそうです。



ちなみに、無限軌道は、キャタピラー、クローラー、トラックベルトとも言いますが、キャタピラーはアメリカ・キャタピラー社の登録商標です。“Infinity”では、ブルドーザーの無限軌道のように長円ではなく、真ん中で絞り、その部分にギヤがあり、ペダルのついたクランクと短いチェーンでつなげて駆動しています。



この一本のモノタイヤは、前後輪があるべき部分を通って一周します。先端や後端では、一時的にリムのような形状が自動的に形成されます。途中まではガイドレールがありますが、その先はリムとタイヤだけです。ごく短いリムが連結されて、ある程度動くようになっているため、部分的に円弧のようになるわけです。( ↓ 動画参照)



まだ実物大の試作品は作られていません。製造するのに特殊な部品が必要になるため、ある程度まとまった資金を調達する必要があるからです。ただ、Stephan Henrich さんは長い期間、検証してきましたが、実際に乗るのに問題ないだろうと結論しています。( ↓ 動画参照)



特殊なリムやそれを支える構造が、多少重くなるのではと思いますが、ビーチクルーザーは、ある程度の重量があったほうがスリップしにくいことから、さほど欠点にならない気もします。極端にはハンドルを切れないと思われますが、普通に曲がるくらいなら、それほど問題にならないのでしょう。

Infinity

自転車はこういうものとか、こういう形が効率的といった常識があると、この発想は出てこないと思います。まさに異業種の人だから出てきたアイディアと言えるでしょう。自転車には常識と考えられている部分が多いですが、見方を変えれば、案外簡単に覆されるものなのかも知れません。

Infinity

自転車業界がコラボするような業種は限られます。素材技術などを除けば、イノベーションと言われるような進化とも無縁でしょう。基本的な部分は長年変わっていない成熟した商品ですが、全く結びつかないような異業種と組んだりすれば、まだまだイノベーションの余地はあるのかも知れません。







◇ 日々の雑感 ◇

日々奮闘している現場の医療従事者には感謝と敬意を表しますが、国からベッドを増やすための補助金をもらっているのにコロナ患者の受け入れを増やさない病院があります。頑張っている他の病院の負担を増やし、結果として自宅療養死亡者を出しています。施設が古いとか弁解にしか聞こえません。病院名公表を考えるべきでは。

このエントリーをはてなブックマークに追加

 デル株式会社


Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。



 楽天トラベル

 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)