September 14, 2021

脱炭素の以前にやるべきこと

脱炭素が大きな流れとなっています。


言うまでもなく、地球温暖化対策の観点からCO2を削減しようという世界的な取り組みです。化石燃料から再生可能エネルギーへというエネルギー分野にとどまらず、クルマのEV化を進めたり、工場の温暖化ガスの排出を減らしたり、建物の断熱で省エネ化をすすめるなど、広い分野にわたります。

ヨーロッパは、いわゆるカーボンニュートラルに向けた取り組みで先進的かつ意欲的です。これまでの価値観や慣習も含め、広く変えていこうという動きも広がります。それは多岐にわたるわけですが、例えば先週までドイツ・ミュンヘンで開かれていた、“IAA MOBILITY 2021”にもその一端が現れています。

これまでは従来型のクルマが中心でしたが、近年はEVがメインとなり、マイクロモビリティ、マイクロカーと呼ばれる電動のクルマなども増えています。さらに今年は、このクルマが中心のショーに、自転車会社が出展するという光景も見られました。

IAA MOBILITY 2021IAA MOBILITY 2021

このイベントにはメルケル首相も訪れ、さっそくその開会の辞で、クルマの展示会への自転車業界の出展について言及しています。自転車メーカー2社のブースへも足を運んでいます。このメーカーの責任者は、自転車がゲームチェンジャーになる可能性に触れています。

これまでは、自転車王国であるドイツでさえ、クルマと自転車の用途は別であり、両者が並列で語られるわけではありませんでした。クルマメーカーが自社ブランドの自転車を一緒に展示することはあっても、クルマと自転車が、同じ電動モビリティとして比較されることはありませんでした。

つまり、クルマでの移動を自転車で代替していく選択肢もありうるという考え方です。これまで自転車メーカーに対して、政治が何か支援するようなことはありませんでした。しかし、自転車を使うことは、決して時代に逆行することではないと明確に表明するなど、変化が見られます。

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さて、同じミュンヘンを拠点とする世界的なクルマメーカー、BMWもそのあたりを意識しています。同社はクルマのほかに1923年からオートバイも生産・販売していますが、最近、電動の自転車のコンセプトモデルを相次いで発表しています。

パーソナル電動モビリティの世界への挑戦という位置付けです。電動のスクーターや電動カーゴトライクも発表しています。ただ、具体的に自社生産する予定はなく、別のメーカーにライセンス生産させて、サードパーティーとして立ち上げることを想定しているようです。

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ヨーロッパでは、いろいろなモビリティが使われています。歴史的な経緯もあるため、自転車に近いものでも、電動スクーターから電動モペット、電動アシスト自転車、電動アシストのベロモービル、フル電動でペダルをこがなくても進む電動自転車まで、いろいろなものが使われています。

でも、国によって分類や規制が違うため、メーカーとしては厄介な部分があります。日本では、フル電動の自転車は電動の原付バイクとして免許やナンバーが必要になりますが、国によっては自転車と同じように乗ることが出来たりします。電動アシストにしても、最大出力や速度の規制が違ったりします。

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そこでBMW社は、新しい考え方を取り入れた最新の電動自転車のコンセプトモデルを発表しました。電動アシスト自転車と電動のオートバイを一つにしたような乗り物です。ペダルをこいで、電動アシスト自転車として移動できる一方で、フル電動の自転車としても使えます。

当然ながら、自転車として乗る時と電動のオートバイとして走る時の速度は違ってきます。問題は、自転車として走るべき場所で、フル電動でスピードを出して乗られてしまうことです。フル電動のほうがラクだからと、そのモードを選べば、スピードが出せてしまうわけです。

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この問題を解決するためにBMW社が採用したのが、ジオフェンシングという考え方です。エリアを決め、そこを仮想の柵、フェンスで分けます。決められたエリアによって、自転車になったり、電動オートバイになったり切り替わります。仮想のフェンスを越えると、使えるモードが変わるわけです。

BMW i Vision AMBY”と名付けられています。スマホのアプリと連動して、位置と道路タイプを自動認識し、モードが変わります。自転車で走るべき場所では最高速25km/h、市内の大通りを走行する時は最高速45km/h、都市部の外の道路を移動する時は最高速60km/h、といった具合です。

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詳しく書かれていませんが、スマホのアプリと連動させGPS機能で自動で切り替わるようです。より低速のモードへは手動で切り替えることも可能です。これで、例えば都心の歩行者が多い街路などでは電動アシスト自転車モードになって、スピードが出せないようになるわけです。

たしかに、これならば一台で低速から高速まで、自転車からフル電動まで対応できます。国によって規制が違う場合にも、ジオフェンスを変えることで柔軟に対応できるでしょう。そのほか、スマホと連動させることで盗難防止のイモビライザー、デジタルキーなども搭載しています。

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電動アシスト自転車だと、郊外へ出た時とか、高速で移動できる道路でも時速25km/hしか出せず、実用的とは言えません。もちろん、脚力があればそれ以上も出せますが、25km/h以上はアシスト力がゼロになってしまうため現実的ではないでしょう。可能な場所では、ラクに速く移動できるわけです。

航続距離などの問題はあるにせよ、これならば実用的なスピードが出せて便利ということになるでしょう。環境負荷を意識して、クルマから乗り換える人が出てくるかも知れません。ヨーロッパでは、今後電動アシスト自転車と電動のオートバイは一体化し、シームレスになっていく可能性があります。

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ただ、個人的な意見を言わせてもらうと、自転車だけではなく、クルマでもやれという話です。EVでなく従来型のクルマであっても、ジオフェンシングでエリアを分けてスピードを制限すべきでしょう。このことにより、スピードの出し過ぎを抑制し、交通事故を減らせるはずです。

自転車でもスピードを出せば歩行者にとって危険ですが、クルマの比ではありません。例えば住宅街の細い道を抜け道としてスピードを出して通るような人は少なくありません。自転車だけでなく、クルマのスピードの出しすぎを防ぐのが、クルマメーカーとしての社会的責任ではないでしょうか。

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個別にリミッターを取り付けると、そのクルマは売れなくなってしまうと言うなら、政府が規制をするべきでしょう。クルマにスピード制限されたくないドライバーは多いと思いますが、うっかり制限速度オーバーすることもなくなり、事故のリスクも減るのはメリットという考えも成り立つと思います。

わざわざ警察官の人件費と機材を使って、スピード違反を取締る必要もなくなります。実は飲酒運転防止についても、アルコール検出器を組み込み、走り出せないクルマも技術的には可能と聞きます。おそらく、クルマメーカーのロビイ活動が強力なのでしょうが、悲惨な事故を防ぐための改善の余地はあるでしょう。

クルマの自動運転だ、電動化だ、コネクトだと言う前に、安全性を高めるため、技術的に可能なことは多いはずです。もちろん、脱炭素に向けた取り組みを否定するわけではないですが、それ以前に、人命を重視するという大きな社会的責任が見逃されている気がするのは私だけでしょうか。




◇ 日々の雑感 ◇

将棋の藤井聡太二冠が豊島将之二冠を破って叡王を獲得、史上最年少3冠を達成しました。大幅な記録更新で驚異的ですが、さらに年度内に6冠まで可能性がありうるそうで、もはやモンスターとしか言いようがありません。

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